勇者召喚したら逃げられた
無性に書きたくなって書きなぐった。
私は塔の賢者マーリン、世界最高の魔法使いである。
私は今大変困っている
それと言うのも今から3年前に魔王が復活したからだ。
正しくは魔王が復活したので国王の頼みで勇者を召喚したら召喚した勇者に逃げられたことがだ。
召喚した勇者は正義感に溢れた少年で私達の願いを聞き届けてくれた、4日後に逃亡した。
原因はわが国の国王が勇者に金貨10枚を与えて言って来いと放り出したのが原因だ。
金貨十枚は勇者の故郷の価値で50万円ぐらいらしい、それで魔王を倒せとか言われてもな。
更に酷いことに国の連中は勇者に一切のサポートもしていなかったらしい、魔王を倒す手段や武術、魔法の鍛錬についてもだ。
つまり一般人の勇者は異世界に召喚されは50万円を渡されて魔王を倒して来いと言われたのだ、私でも逃げる。
国王の使いが文句を言ってきたので賢者の力を理解させたうえで24時間正座をさせた上で説教してやった。
翌日彼らは死んだゴブリンのような目をして帰っていた。
勇者の国の正座とは大変良いセルフ拷問姿勢だ、今後弟子の育成に取り入れよう。
1週間後、再び国王の使いが勇者召喚を頼みに来た、使者は先日説教をくれてやった者達だ。
泣いて頼むので仕方なく新しい勇者を召喚する。
次にきたのは青年格闘家だった、私の話を聞いて快く頼みを聞いてくれた。
何でも彼の流派の最終修行に奥義を会得するまで旅を続けると言うものがあるらしい。
彼にとってこの召喚は願ったりかなったりのチャンスだったらしい、少し良いことをした気分になった。
2週間後再び使者がやってきた。
2代目勇者が旅をやめてしまったらしい。
スライムとの戦闘で奥義に開眼し旅をする必要がなくなったのが理由だそうだ。
今では城下町に道場を開いて弟子を育成している。
国としてはさっさと旅立って欲しいのだが流派の掟で最低1人弟子が奥義を習得するまで道場を離れることが出来ないらしい(ただし半径10キロ以内ならノーカンだそうだ)
しかも育てた弟子が城下街周辺の魔物を退治して治安が良くなったのでなおさら強く出れないとのこと。
つまり3人目を呼べと言うことだ。
追い返した。
3日後部隊を引き連れて軍の司令官がやってきてこう言った。
「勇者を召喚せねば国家反逆罪で貴様を処刑する」
この男は馬鹿だ、私を殺せば勇者召喚をできる魔法使いはいなくなるのだぞ。
なによりもこの男の「どやがお」(勇者の世界の言葉で殴りたくなる表情らしい)と言う表情が癇に障った。
死なない程度に全員を水没させて水中正座説教を行った。
最後に全員に聞こえるように私を殺したら勇者を召喚できなくなるがどうやって世界を救うつもりなのだと聞いてやった。
部下達の反応から私への暴言は司令官の独断だったようだ。
国に帰ったら即座に政敵に引き摺り落されるな。
2週間後再び使者がやってきた。
貴族が付属している、嫌な予感しかしない。
貴族は語りだした、要約すると国の為に働けだ。
断ったら悪評を流して世界中から白い目で見られるぞとのたまってきた。
後ろで使者達が青い顔をしている、安心したまえ君達に危害は加えない。
雲の上の住人には実際に雲の上に行ってもらった、吹き飛ぶという意味で。
白目を剥いていた、うん白い目だな。
5日後美しい貴族の少女が来た、どうやらウチの国の王女らしい。
子供のときに見たきりだが美しく成長したものだ。
流石に昔娘のように可愛がっていた姫に頼まれては嫌とはいえない。
私は3人目の勇者を召喚した。
それは運命だった。
3代目勇者と姫はお互いに一目ぼれをした。
現在は駆け落ち中だ、もちろん私も全力でバックアップした。
すごく良い事をした、ここ数百年で最高に良い気分だ。
スライムのような目をした使者達がかわいそうだったので4代目を召喚してやった、スライムに目はないが。
4代目はいわゆる不良と言うやつだ。
髪を染め前かがみで変な表情とポーズで睨みつけてくる、いちいちうるさい。
さっさとお取引願った。
7日後山賊になったと報告があった。
5代目を召喚して返した、もはや流れ作業だ。
5代目勇者は少女でアイドルと言う職業になりたいらしい、もはや答えを想像する必要も無い。
望みどおりアイドルという歌姫となった5代目勇者は世界中の人々を歌で癒している、夢がかなって何よりだ。
歌姫となった5代目勇者を戦わせるなどとんでもないといつの間にか出来上がった親衛隊が彼女に近づく魔物を退治しているらしい、親衛隊には2代目勇者の弟子も複数いるらしい。
3週間後使者が菓子折りを持ってやってきたのでそこそこ良いお茶を出して出迎えてやる。
いつものように6代目勇者を召喚する。
老衰寸前の老人が召喚されてしまった、これは申し訳ない。
家族も無く孤独に死を待つのみだった老人は自分を必要としてくれたことにいたく感激し勇者として死の瞬間まで戦うことを約束してくれた、興奮してはいけない安静に。
6代目勇者は2週間後にご臨終となった。
だが彼は多くの若者達に自らの経験にもとづいたアドバイスをして深く慕われていたそうだ。
6代目勇者の死に顔はとても満足げだった、目頭が熱くなってきた。
使者が来たので7代目勇者を召喚する。
7代目勇者は旅に出ることも無く私の妻となった。
今では二人の子供に囲まれ満ち足りた生活を送っている。
魔王は2代目勇者の弟子と5代目勇者の親衛隊の集団が退治したそうだ。
数十万の死を恐れない狂信者の軍団の前にはさしもの魔王も勝てなかったらしい。
妻と子が呼んでいる、3代目勇者と王女が子供を連れて遊びに来たみたいだ。
息子のほうは三代目勇者の娘が気になるようだ、さて向うはどう思っているやら。
私の日記を読んでくれた諸君、物語はこれで終わりだ、読んでくれてありがとう。