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二色の螺旋  作者: シュウマイの皮
白色の光
2/14

プロローグ

 雨がザーザーと叩きつけるように降っていた日があった。その日は何か大事なことがあったのを覚えている。あてもなく彷徨っていた日々に終わりが見えた時もその日だった。


 雨が痛い。そんなことを考えながら地面に座りこんだ。からだはとっくのとうに冷え切ってしまって満足に動かない。・・・単に三日も、物を食べていないだけかもしれないけど。本当に何やってんだろうなーって、自分で自分を馬鹿にする毎日。ひょっとしたら毎日同じ日を過ごしているのかもしれない。


 くだらない、つまらない、自分。こうして歩き回って疲れて動けなくなって・・・


            助けが欲しかったのかな、ボクは。


 だとしたらとんだお門違いだ。・・・嗤えてくる。いつしか大声で嗤っていた。


 悲しげにわらったつもりなのに、なんだか楽しそうに聞こえる。ずーっとずーっとわらっていて、声さえもでなくなって、地面に倒れた。


 視界の先に見える服の絡みついた自分の細い腕。その近くに靴が現われた。


 「よっ。あんたも雨に濡れに来たのか?」


 そんな訳ないじゃないか、馬鹿。そもそも誰だよお前は。

 そいつは倒れているボクの隣に来て座った。同じようにびしょ濡れだった。


 「・・・なんで傘もささずに歩いてるの?」

 「いい質問だ。ただ濡れたくなっただけさ!」


 ただの馬鹿か。・・・思えばボクもびしょ濡れでそれに傘もさしていない。人のことを言えない、っていうかボク自身も濡れたかったのかもしれない。


 「ボクも」


 気がつけばそんなことをいっていた。


 「そうか。じゃ、俺達は仲間だな」


 

         *    *    *    *    *    *    *




 「起きろーーっ条花ー、起きろーーっ条花ー おbsっ」


 いいところだったというのに。いらついたから起き上った瞬間に腹パンした。

 くぐもった声を出してそいつは派手にぶっ倒れた。


 「朝からうるさいな、加賀美。いい夢を見てたのに」 

 「俺は空を飛んだ夢をみたぜ(キラッ」

 「きもい」


 そいつーーー加賀美 誠そりゃあないだろといった顔で立ちあがった。


 ボクの名前は彩城条花(さいじょうじょうか)と言う。変わった名前だと思う。気に入っているワケでもないし、嫌いというワケでもない。それで、目の前にいるのがボクの同居人である加賀美だ。


 こいつは数字的な意味ではとても頭がいいが、行動がばかだ。例をあげると自分で理系の大学を選んでおいて、シュレディンガー方程式がわかんないとかほざいてwikiから答えを丸パクリして、あげくの果てに教授に、 ウィキ(アイテム)なんぞつかってんじゃねえ!とボコされたという伝説がある。


 加賀美と住んでいるのは一般的なマンション。ご飯も加賀美が作ってくれてありがたい毎日だ。

 ボクが加賀美と同居することになったのは二年前に遡る。さっきまで見ていた夢が確かその出来事だったはずだ。本当は続きがあったんだけど、二年も経っていると少し思い出せないな。だからいい夢だったんだ。


 「今日学校だったっけ条花?今は七時十二分だからもう少し寝てもいいぞ」

 「いいわけない!」

 朝からこいつと漫才やってるとつかれる。ボクは加賀美を自分の部屋から押し出した。


 「着替えるから、先に朝ご飯でもつくっといてよ。ボクはいろいろ準備するからさ」

 「りょーかい」

 

 パジャマを脱いで、クローゼットから出した青い長そでのブラウスに白いケーブルニットを着て、下には黒い革製のロングスカートをはく。ボクの通う学校は私立B中学校で、私服での登校が認められているのが特徴だ。加賀美は大学に加え、ボクの学費まで支払っている。バイトしかしてないはずなのにそのお金は一体どこから出てくるのか?この間、問い詰めたところ、一月ごとに宝くじに当たったみたいなもんだ、と答えをはぐらかした。借金はしてないみたいだから安心した。

 歯磨き、洗顔その他モロモロをすませ、バッグとリュックサックをもってリビングに入る。


 「もうちょい待ってくれ」

 「おーけー」


 その間にボクはもう一度洗面台に向かう。髪を整えていなかったのを忘れていた。鏡を見ながらくしけずる。自分でいうのもなんだけど結構、美少女なんだよねボクは。

 鏡に映るボクの髪は雪のように白い。脱色したりとか染めたワケでもない。生まれつき、この髪色なのだ。加賀美に言わせると先天性色素欠乏症、つまるところのアルビノというわけだ。それもかなり重症のようで瞳の色は血管の色が透けて淡紅色であり、肌の色も乳白色に近い。メラニン色素が極端に足りないのが原因らしい。一番苦労するのが外出するときだ。からだを紫外線などの有害光線から守るためのメラニン色素がたりないために、短時間太陽に当てられるだけでたちまち重度の日焼けを起こし最悪の場合皮膚ガンすら起こす。そのためには強力な日焼け止めを塗る必要があり、さらに長袖の服を着たり帽子を着けたりと、かなり苦労するのだ。その他モロモロの行動のなかには日焼け止めを塗る行動も含まれる。


 「加賀美流、special breakfastの完成DA☆ZE!」


 ・・・その割にはフレンチトーストとサラダという貧相極まりないメニューだが。

 でも、とてつもなくおいしい!こればっかりは本当だ。そのままでも三ツ星レストランに出せる味だと思う。ボクの味覚にかけて保障しよう。


 サラダは新鮮なキャベツの千切りと紫キャベツ、ニンジン、玉ねぎに加え、シーチキンまで入っている。その上から加賀美作の酸味のきいたドレッシングがかかっていて箸が止まらない。

 チーンという音がした。電子レジで温めていた牛乳ができたようだ。

 ボクは朝昼晩に必ず一本牛乳を飲む。学校でも飲んでいるが、一回教室でガラス瓶に入った牛乳をのんだら、数名の男子が鼻血を吹きだしたという事件があって以来学校で飲むのは控えている。

 牛乳を飲む理由としては背を伸ばしたいことがそれに当たる。・・・ボクは背が小さいのが悩みだ。身長たったの152センチちょっとしかないんだよ・・・。牛乳を飲むことで背が伸びるらしいから今、必死に頑張っています。ちなみに加賀美は身長180を超えている。むかつく。


 「テレビでもつけるか。条花、何がみたい?」

 「じゃあ、ニュースで」

 「おかあさんといっしょとか見ようぜ?」

 「加賀美だけみてれば? このロリコンが」

 「違うから!全力否定するぞ!」


 その慌てぶりがとても面白い。慌て方に定評のある加賀美。

 

 【今日は全国的に晴れになりますが午後三時を回ったあたりで曇りになります。つぎは今日の気温です。時美沢では最高気温が22度。最低気温が・・・】


 ボク達が住んでいるところはS県時美沢市である。名前の通り、時間に関する逸話が数多く残されている。


 「じゃあ、ボクはもう行こうかな。朝食おいしかったよ」

 「おう。そう言ってくれると嬉しいもんだぜ。弁当にゃ、期待しといてくれよ」


 玄関先に立つと、加賀美がコーヒーカップを片手に見送りにきた。


 「いってきまーす」

 「いってらっしゃい!」


 いつもと変わらない朝がそこにあった。


ほのぼの

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