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第三話 君の名は、貴方の名は

「起きるのじゃー。朝じゃぞー。ご飯出来てるぞーい。ヒデオー。おーい」


ああ、うるせえよ姉ちゃんか妹よ!あんた達はいつもそう!


俺に平穏という幸せだけはくれないんだから、って。


予想とは違い、俺の目の前にいるのは白い髪で赤い瞳の少し勝ち気そうなばっちりおめめの可愛い幼女。


肌は透き通るように白くて、うっすらと光輝いている。白毛赤目のうさぎのようだ。


その幼女が、裸体で、生まれたままの姿で、一片の布さえつけず、何から何まで俺に晒していた。


しかも何故か自信げな表情で。なんだこの裸族。歩く児童ポルノ。実在系ロリータ。


「おお、起きたのか我が御子ヒデオよ。全く、もう少し遅れたらヒデオが死んでしまう所じゃったわ。んー、これがヒデオのかほり、善きかな善きかな。」


ぴょん、といきなり裸のまま俺の腰の辺りに飛び付き、何だか妖しい部位の臭いをくんかくんかしている。


いきなりの事態に俺は困惑していた。


つーか、ここは何処なんだ?


目に入る景色は雪景色に似ている。しかし寒さはなく、降ってくるのも雪ではなく。


「光……?」


光の玉が降りつもっているのだ。それが一切を覆い隠していて一面は白く染められている。


「そうじゃ。ここは妾の神界。光神ヌーザの神界であるからのぅ。光と光の眷族のみが住まう世界よ」


神?この無い胸を張って胸の先の桃色のさくらんぼを見せつけているこの幼女が?


「むー、信じておらぬな!信じてないのじゃ!ヒデオ!妾を敬うのじゃ!そうしないと永久にここに閉じ込めてヒデオを猫可愛がりするのじゃ!妾はそれでも一向に構わないのじゃぞ!?」


そんな一歩間違えば猟奇的な匂いのするバッドエンドを迎えたくない俺は自称神様のご機嫌を取ることにする。


「よっ!さすが光の神のヌーザ様!何と美しい身体なのか!わたくしヒデオ、神々し過ぎて目が潰れるかと思いましたぞ!」


「そうじゃろう、そうじゃろう。どうじゃ、ヒデオよ。もしそなたが頼むのであれば妾が生まれてから億年、誰にも触らせなかった身体を触らせてやっても良いぞ?ん?どうなのじゃ?」


え?何この子怖いわぁ。顔を上気させてふんふんと発情なさってるわぁ。


うちの馬鹿変態姉妹と同じ匂いするわぁ。


これが美女ならルパンダイブなんだが残念!相手が幼女では警察のお世話になってしまう。


何とかごまかさないとなー。


「いいえ、ヌーザ様の神々しい身体に触れるなどまことに畏れ多い事。しかし、もし、万が一、たまたま、ひょっとしたら、どうにかして、私がヌーザ様の神々しい身体に触れるに相応しい男になった時に、その時が来たならば!触らせていただきたい」


無理にキリッとしたキメ顔を作りながら、大切な事を告白するかのように言う。


それに感動したようで、幼女は目を潤ませながらうんうんと頷く。


「わかったのじゃ、我が御子よ。そなたが立派な男になった時には、身体を触る所か自由にさせてやるのじゃ。それまでには誰にも触れさせはしないと光神ヌーザの名にかけて誓うのじゃ!」


小さい子に結婚とか申し込まれる保育士さんとかこんなほんわかした気持ちなんだろうなぁー。


ほっこりした俺は白髪の綺麗な頭をなでりこなでりこ可愛がる。


「むむっ、まぁいいじゃろう。それぐらいの戯れは許すのじゃ。ただしえっちなのは立派な男になってからじゃぞ」


嬉しげな、天国状態!とでも言うような溶けた笑顔をしながら俺のなでなでを受け入れる幼女。


裸の幼女が恍惚とした顔をしながら男に頭を撫でられている、この図、犯罪的だわぁ。


お巡りさんに捕まるといけないので撫でるのをやめると残念そうな顔をヌーザちゃんはするが、スルーする。


「んでさ、ヌーザ様。何で俺はこんなとこにいるの?」


「お主が友から見捨てられて殺されかけておったから色々な説明のために妾の神界に避難させたのじゃ。傷はあらかた塞いだし、痛くはなかろう。まあ右腕はそのままじゃがな」


どくん、と心臓がはねる。嫌な汗が噴き出す。


「俺は生きているのか……。というか何故俺はこんなに平常通りなんだ?」


「生きてるのじゃ!妾が助けたからじゃぞ~。平常通りなのは感情にロックをかけたからじゃ!妾との会話のときに怨念ばかりの思考では会話にならんしのぅ。何じゃその顔は。もう生きてたくないのか。怖い目や痛い目にあったから当然なのじゃ!ならずっとここにいるといいのじゃ。ここではお腹も減らず、年も取らない楽園じゃぞ。学校も仕事も運動会もないんじゃぞ。さらには光を自在に操る《狂光》の異名を持つ美しき女神様であるヌーザ様までついてくるのじゃ!」


中二病患者過ぎるだろ、この娘。狂光って夜露死苦みたいなノリなのか?


暴走族のチームの名前かラノベのキャラの二つ名か。しかも他称じゃなく自称とか。


あらやだイタイわぁ、こんなに可愛いのに裸族で中二病なんてイタ過ぎるわぁ。


この子の将来が心配過ぎる。というか凄すぎて呆れる。


俺の呆れた視線に気付いたのか、上機嫌だった顔はむくれ顔に早変わりする。


「むう!むうむう!そんな人を疑うような目をするとは!ならば見るが良いぞ!我が力!」


ヌーザちゃんが指をぱっちん!と鳴らすと、雪景色に似た風景に超巨大な城が一瞬にして出現する。


すげえ!姫路城よりデケェ!


つーかこの風景から人ならざる何かだとは思ってたけど、こんな事が出来るならば神様って名乗るのも頷ける。


「的はあんなもんでいいじゃろう。古来より人は理路整然とした言葉よりもわかりやすい一枚絵を求めるからのう。妾の威光をとくと見るがいいのじゃ!」


幼女が城へと向けてかざす掌の中心に光の球が発生する。


球体が放つ圧力によって周囲の空間は歪み、陽炎のような幻めいたものへと姿を変える。


ぴしり、ぴしりと何かがひび割れるような音を発しながら球体は大きさを増していき、ついには幼女の掌と同じくらいに至る。


それが轟音と共に射出される。


残像を軌跡に残しながら、光は稲光のような荒ぶる音を立てて城へと激突する。


引き起こされるのは破壊。


崩壊は、がらがら、ばきばきと建築物の痛みに叫ぶ音を背景にしながらも広がっていく。


やがて爆砕が鳴り響く。


目を焼くような閃光が走り、衝撃が空間を駆け巡る。


地は揺れて、爆風が荒れ狂い、まともに立つのが辛いほどだ。


光が収まり、目を見開くと先程まであった城は無惨な姿になっていた。


原型を止めず焼け焦げた材木や砕け散った瓦が、幾人にも暴行された女体のように哀れである。


城があった大地は雪のような光も散らされ、剥き出しの土には抉り取られた様な痕がある。


とてつもなく大きな巨人が大暴れでもしたかのような馬鹿馬鹿しい風景が広がっていた。


そんな唖然とする俺を勝ち誇ったヌーザちゃん、いや、ヌーザ様がにやりと笑いかける。


「昔から妾を姿で侮る者にはこうよ。そりゃ妾は幼子の姿で他の神のように獣面であったり複数の顔や複数の手足があったりしないからはっきりいって地味じゃ。妾も翼とか鱗とか仮面とか宝石とか虹色の髪とか欲しかったのじゃ!じゃが光神ヌーザの力は神でも最上位じゃぞ!?時神カロールや次元神イルティマイザと同列じゃぞ!妾の身体から凄いのがどくどくだくだく溢れとるじゃろ!オーラとか空気とか神気とか。威厳とか威光とか!それなのに、侮る奴等の多いこと!ふふん、こうして力を示してやると皆が皆、妾を舐め腐っていた顔が真っ青になるのじゃ!さらに妾は言ってやるのじゃ。妾はあの光の一撃を一瞬にして万の数だけ用意出来る、となぁ。くふふ」


サディスティックににやにやしているこの幼女は核兵器以上に危険なようです。


故郷の花音姉ちゃんに麻里、ここは怖いとこだよ。帰りてーよ。

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