第一話 日常の崩壊、物語の始まり、英雄譚の開幕
高校二年生である俺、神野秀雄には腐れ縁の親友と可愛らしい女友達の二人の幼馴染みがいる。
現在、三人で下校中なのだが。
「美樹ちゃんったら、おかしいなぁ」
「えへへ、恭介君は私のギャグセンスに溺れるがいいわ~」
自称親友の只野恭介と佐部美樹。二人は成績優秀容姿端麗性格美人の完璧超人で最強無敵のバカップルである。
お人好しの恭介はハーレムリア王なんて呼ばれてる奴で万年フラグ構築体質。
昨日も下級生の女の子を助けたか何だかでニコッとしてポッポッポ~♪とかよろしくやってた奴だ。
俺の事を親友呼ばわりしてなんかなついてきやがる。
俺も何だかんだで恭介に付き合って正義のヒーローごっこで不良と戦ったりしちまった。
あれは俺の黒歴史ってやつだ。
お優しい美樹は逆ハーレムリア王女で総愛され体質。動物だろうが老人だろうが好かれやがる!
職場見学で中学の時に一緒に行った老人ホームが美樹のハーレム&逆ハーレムになった時は目ん玉飛び出したね。
この二人に囲まれた生活はファンから睨まれたり大変だった。
調理実習では俺だけタバスコ大盛りだったり、運動会では俺だけ打ち上げ呼ばれなかったり。
だが何だかんだいって三人でつるんでる。
こいつらは良い奴等だし、一緒にいて楽しい。
もうすぐ受験だし、大学に入ったら疎遠になるだろう。
二人は同じ東○大学志望で、俺は早○田だからなあ。
俺と離れても、こいつらは二人で喧嘩したり引っ付いたり忙しいんだろうなぁ。
ガキの頃からラブラブだったこいつらを見てたから、何か感慨深い。
喧嘩したこいつらを仲直りさせんのはいつも俺の役目だったなぁ。
まあそんな大切な時間をいつも通りに過ごすために、俺はいつものように皮肉めいた言葉をかける。
「ったくてめえらはお暑いこって。あー、俺もてめぇらみてぇにもててぇよ。くそー」
「秀雄はもてるだろ」
「そうだよそうだよー秀雄君はもてるじゃん、それもとびっきりの美少女達にさー」
まぁ、確かに俺はもててると言えるかも知れない。
だがそれはごく一部でマニアックな変態な方々からなのだ!
そんな狭い偏屈なモテ方は断じてもててるとは言わねぇ!
それに俺は生まれてこのかた童貞よ!
「兄さーん」
「秀ちゃーん」
ああ、来たよ。残念な人達が。スペックは某未来の携帯ゲームより遥かに高いのに残念な人達が。
「兄さんったら、勝手に帰っちゃうなんて酷いじゃないですか」
「秀ちゃん、お姉ちゃんが迎えに来てあげたよー?嬉しいー?」
二人して別々に話すから聞こえやしねぇ。
二人は俺の姉と妹。美形ながらも残念な近親相姦希望のど変態達である。
恭介と美樹が高校生として百点満点ならば、二人は人間として限界突破の二百点満点している。
戸籍上は純日本人のはずなのに、二人は金髪で目がパッチリ大きく、鼻も高く、二次元美少女を違和感なくリアルに召喚したらこんな感じな容姿だろう。
近所ではハーフで通っており、姉は株で億万長者、妹は有名ファッション紙のモデルである。
姉は業界では魔術師と呼ばれており、まるで未来の情報を見てきたかのようにじゃんじゃかと金稼ぎをする。
一度、俺も儲けたくてコツを聞いたら「秀ちゃんは時神系の素養はないから無理よー」などと電波な事を言っていた。
姉妹は姉は垂れ目、妹は吊り目だが顔もそっくり、スタイルも背が高くておっぱいぶるん、の凄まじいものである。
「あ、花音さんに麻里ちゃんこんにちは。いやあ秀雄はこんなお姉さんや妹さんがいて幸福だぜ」
「二人とも今日も美人だねぇ!化粧もあまりしてないのにそれって反則だよ~」
俺の友人たちの言葉にえへへ、あはは、なんて返すが俺は知っている。
この二人は俺以外の事になんかこれっぽっちも興味は無いんだ。
例外は血の繋がった姉妹だけ。
この二人はもし家族でなければ警察につきだしているくらいの重度のストーカーなのだ。
おかしいと思ったのは五歳くらいの時だ。
年齢不詳の姉さんだが、中学生ぐらいの年頃の時だろうか。
ハサミを手に持って一言。
「いつも肌身離さず持ってる秀ちゃんの髪が古くなってぼろぼろになっちゃったから新しいの頂戴?古くなったのは保存処理してコレクトしとくわー」
まだ無邪気だった俺だがさすがに変質者の臭いを感じた。
さらに変質者である確定をしたのはまだ幼い俺が夜眠れずにぼーっとしていると
「んー、秀ちゃん寝たかしら。さーてやってきたわよ秀ちゃんタイム。これからはキスし放題の特売バーゲンセールの開催よー」
舌を入れてぐっちょりぬっちょりのディープキスをたんまりガキの俺にしやがって起きてる事に気付いてもそのままにやにやしながら続けやがった。
そしてまだ四歳くらいだった妹も。
「大きくなったらではなく今すぐ結婚でしゅ!にぃやんはあたちとねぇちゃんをめとりなさいっ!」
等と訳のわからない言葉を言いながらこちらの服を剥きつつ迫ってくる妹。
さすがに色んな意味で危険を感じた俺は逃げ出したが、今思えば
「痛いのは私だけでしゅ!にぃやんは天国極楽快楽三拍子でしゅ!するでしゅ!やるでしゅ!」
等と鼻息荒くしていたが今思えばやばすぎる。キモちわる過ぎるぞ妹よ。
それから常識を知るにつれて肉親とは結婚出来ないとか重婚とか出来ないとわかり、姉妹の凄まじい洗脳の恐ろしさを知った。
ちやほやしてくれる可愛い女の子のせいで脳がとろけていたに違いない。
美樹という可愛い幼馴染みが恭介と付き合ってもネトラレたー、等と言わないのは初恋が姉と妹だからだ。
大きくなるにつれてそれが禁断な恋の味と知っちまってからは恋はなくなりはしないがすっかり冷めた。
その冷めで出来た溝を感じ取ったのか、姉妹は俺が思春期になると様々な事をした。
夜這い、裸エプロン、風呂乱入、コスプレ、イメクラ、水商売風接待、裸の写真、キス、おっぱい押し付け、裸で布団温めておきました殿、秀ちゃんの下着と私の下着で投下交換錬金術だよ。はう~、兄さんの服って何だか温かい、私の色んなものが入ったチョコだよ食べてー、え!?偶然だよ秀ちゃん。お姉ちゃんが尾行なんてするはずないよ、寝ている間に乳首を口に含まされていたでござるよ姉上!、俺のエロ本を姉妹モノばかりにするのやめてくれるか姉上と妹よ!、いやだ兄さんったら私が兄さんの下着を履いて兄さんが私の下着を履く。それは幸せな事件ですよ……etc。
とにかく俺を男として物にしたいらしく、二人とも昔から男の影も形もない。
二人が血が繋がってなかったらご褒美なんだが、実姉妹ならキモいもんである。
まあ例え義理でも小さい頃から一緒にいるからキモがったかもしれないけど。
まあ感謝してる事も多い。何だかんだいって優しいし、やけに突っかかってくる幼馴染みのファン(しかも何故か女が多い)を千切っては投げ、俺を守ってくれたし。
でも大学に入ったら幼馴染みや姉妹とも別れて、何だが歪んだ生活ともおさらばして新たなる恋でも探したい。
目の前でがやがや騒いでいる四人を見ながら、物思いに耽っている時だ。
空中に、黒い穴が開いた。
それは凄まじい吸引力で俺と恭介を飲み込もうとする。
「恭介君っ!」
切羽詰まった美樹の声が響く。
俺は予期していた姉妹の声が聞こえない事に不審を感じ、吸引に耐えながら二人の方を何とか首を回して見た。
すると、二人は笑っていた。そうして俺にいつものように手を振った。
出掛ける時や学校に行くときに、見送るように。
驚きながら俺と恭介は黒い穴の中へと落ちていった。




