表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァルプルギスの夜の夢  作者: 朽尾 明核
◆◇人生ゲーム ~おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました~◇◆
12/59

幕間 『時空かくれんぼ』


 小学生の頃、よく、かくれんぼをした。

 ジャンケンで何故か良く負ける俺は、いつも大抵鬼役をやらされていた。

 そのうち、ジャンケンをしなくても、俺が鬼をやるのが恒例化した。

 いつも探す役なので、「たまには隠れてみたい」と訴え、鬼役を交換してもらった事がある。

 いつもとは違う役割を与えられた俺は、興奮し、気合を入れて隠れた。

 意外なところに隠れて、鬼に見つからないよう、息を潜めていた。

 日が暮れて、あたりが暗くなっても、隠れていた。

 星が出てくる頃になって、様子を伺いに外に、出た。

 俺以外の友達は、全員、帰っていた。



 多分、殺人の動機なんてそんなものなんだろうな、と思う。

 足元に転がる女の死体を眺めながら、漠然とそんな事を感じた。

 そうすると、あの時俺を置いて帰った友人達は、間接的に彼女を殺した事になるのだろうか。



 ――夜の街。帰宅している俺の前を、この女が歩いていた事がきっかけだった。

 ふと、振り返って俺を視界に入れた彼女は、少し、歩く速度を上げた。

 まぁ、夜遅いし、独りで帰宅する女性なら、当然の用心といえない事も無いが。

 しかしその時、俺は無能な上司の小言やら、職場の煩わしい人間関係やらにうんざりして、とても疲れていたので――、


 なんとなく、その行為が癇に障り、

 気付いたら、追いかけていた。



 ――なんで逃げるんだよ。俺は鬼か。

 かくれんぼでもしようか。なんなら鬼ごっこでもいい。



 俺が速度を上げたのに気付き、驚く彼女。

 慌てて再び速度を上昇させる。

 ちょっと、面白くなった。


 俺に追跡されたまま、自宅に戻るのは不味いと判断したのか、彼女は狭い道を走るように逃げていった。

 しかし、その判断は間違っている。

 本来逃げるべきは、広い人通りの多い道だ。

 人が少なく、カモフラージュ出来ない状況では、相当な体力差が無い場合、まず撒かれない。

 




 で、今に至る。



 倒れた女性。

 俺。

 煙を銃口から吐き出す"拳銃"。


 

 ゴミ捨て場まで追い詰めたから、試しに銃で撃ってみた。

 まさか初弾で頭に当たるとは思わなかったけど。

 俺には銃の才能があるのかもしれない。


 まぁ、そんなものがあったとしても、大して役に立つとは思えないが。

 ふと思い立って、彼女を観察してみる。

 華奢な身体。

 派手な服装。

 顔の左半分が吹っ飛んで、脳漿がはみ出している事を除けば、それなりに綺麗な、化粧の厚い顔。

 人形みたいだな、と思った。


 ちょっと、壊したくなって、もう一発、銃弾を撃つ。

 乾いた銃声と同時に、彼女の右顔面が吹き飛ぶ。


 さらにもう一発。


 響く銃声。

 飛び散る血肉。


 もう一発。


 銃声。

 肉。


 もう一発。

 銃声。

 肉。


 もう一発。

 銃声。

 肉。


 段々興奮してきた。これは、楽しい。

 綺麗な人形を壊す、快感。それが元々は生きた人間だったのだという事実からの、背徳感により更に高まる。


 もう一発、撃とうとした所で、腑抜けた音を銃が出し、弾丸切れを俺に知らせる。


 ――しまった。予備の弾丸は家にしか、無い。


 それにこれだけ銃声を響かせたんだ。

 そろそろ人が集まるかもしれない。


 俺は後ろ髪引かれる思いをしながらも、もっと壊したいという願望を押さえ込み、帰路へとついた。


 だけど、うん、そうだな。





 次はもっと人形で遊びたいな。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ