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終幕 名刀・天晴 その三 決着

 霧島天晴(きりしまてんせい)(はがね)が投げてよこした新たな刀……名刀・天晴を両手で構えた。

 その瞬間、空気が変わる。

 周囲の黒曜(こくよう)すら息を呑み、動きを止めるほどの覇気が、刃から溢れ出していた。


「……ほう」


 黒曜幹部はわずかに口角を上げた。

 その覇気が、これが最後の攻撃であることを告げていた。

 自らも深く息を吸い込み、漆黒の長槍を真っ直ぐに構える。


 枯葉が舞い上がり、風が二人の間を裂く。

 互いの足元から、戦場の音が遠のいていく。

 残るのは、自分と相手の呼吸音、そして刃と刃の間に走る緊張だけ。


「……行くぞッ!」


 幹部が踏み込み、槍の穂先が稲妻のように迫る。

 同時に、天晴も大地を蹴り、低く構えたまま前へ。

 疾走する二つの影が、一点で交差した。


 金属が肉を裂く生々しい音が響く。

 天晴の腹部に、長槍の穂先が深く食い込み、幹部の胸には天晴の刃が突き立っていた。


 血の匂いが濃く、熱気を帯びた息が互いの頬をかすめる。

 押し合い、引き合い、どちらも一歩も引かぬまま、全ての力を刃の先端へと注ぎ込む。

 周囲は固唾を飲み、風さえも止まったかのようだった。


(……このままでは、互いに倒れる……)


 天晴の思考の奥で、冷静な判断が警鐘を鳴らす。

 だが、退く気はなかった。幹部の瞳もまた、同じ色をしていた。


 そのとき……

 背後から鋭い金属音が響いた。


「……っ!」


 幹部の動きが一瞬だけ硬直する。

 振り返る余裕もなく、胸の奥に別の衝撃が走った。

 鋼の刀が、幹部の背へと深く突き立っていたのだ。


 鋼は歯を食いしばり、両腕に力を込めて刃を押し込む。


「霧島さんっ!」


 さらに別方向から駆け込む影……(こと)だった。

 彼女は拾い上げた一本の刀を逆手に握り、幹部の脇腹へと渾身の力で突き立てる。

 震える腕を必死に押し込み、刃先が骨を貫く感触に顔を歪めながらも、決して手を離さない。


「……ぐ、あ……っ!」


 幹部の口から、低く濁った声が漏れた。


 だが、幹部はまだ倒れない。


 意識を必死に保ち続け、決して倒れはしまいとしている。

 全身の筋肉を硬直させ、刃がこれ以上体を貫かないように、血が流れないようにする。


 天晴たちも、幹部にとどめを刺そうと粘る。

 鋼と琴は、少しでも幹部に致命傷を与えようと、つかむ刀に力を込める。


 そのとき、一瞬だけ幹部の力が緩くなった。

 その隙を逃さず、鋼と琴は刀を一気に押し込む。


 刀がぐさりと奥まで刺さり、幹部の口から大量の血が吐き出される。

 そして、幹部の体がわなわなと震えだした。


 すると、その目から戦意の光がゆっくりと消えていく。

 握っていた槍が、力なく地面へと落ち、土を抉って止まった。


 天晴は深く息を吸い、腹の痛みに耐えながら刃を引き抜く。

 その瞬間、砕鬼の巨躯が後ろへと崩れ落ち、土煙を巻き上げて動かなくなった。


 残ったのは、静寂と、荒く響く三人の呼吸だけだった。


 天晴は鋼と琴を一瞥し、わずかに口角を上げた。


「……助かった」


 天晴たちの勝ちだ。



終幕その四に続く

後日談 美乃

天晴が去った後、もう大名が暴れることはなくなった。美乃は安心して生活を送れるようになり、天晴が遊びに来るのを楽しみに待っている。


……美乃は、もし自分の立場が天晴くらい上だったら結婚したかったと考えている。

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