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セカイの始まり

新作となります!

最初の数話はすぐに更新します!


 40年前、世界は変わった。

 世界各国で特別な力を持った子供が生まれた。

 1人は腕から植物を生やし、1人は息と同時に炎を吹く。


 そんな子供たちに科学者たちは目を輝かせたが、力の正体はついぞ掴めなかった。

 どんな器官が特別な力を発揮させているのか、なぜ今になって変異が起きているのか。

 総力を挙げて調査する科学者たちに世界は協力したが、彼らの研究に芽が出ることはなかった。

 なぜなら科学者たちの研究結果を待たずして更なる変異が世界に訪れたから。

 

 それは”変異種”の誕生。

 

 変化が起きたのは人類だけでは無かったのだ。

 世界中で子供達と同じような力を持った動植物が発見されたのだ。

 その動植物たちは危険性が高く、研究のために近づいた人間を襲うようなものが多かった。

 

 それらは日本でも確認され、自衛隊や警察が対処を開始したが……変異した動植物には銃火器の効果が薄かった。

 もちろん奴らの体には当たるし傷もついている、それなのに痛みを感じていないのか勢いそのままに攻撃してくる。

 これに各国の軍は相当数の被害を出した。

 そんなときに現れたのが成人している人間の”変異”、ここでは特殊能力としよう。

 いままでは生まれたばかりの子供にしか見られなかった特殊能力、その力を使い軍が苦戦していた変異種たちを見事追い払った男性。

 たった一人のヒーローに人々は歓喜し全世界がその男に聞いたのだ。


「あなたはどうやってその力を得たのですか?」と。


 男の回答はシンプルで、記者たちを驚愕させた。


「知らん。いつの間にか出来ていた。全人類が出来るはずだ」と。


 その男の言った通り、世界中で特殊能力を持った人が出現。

 彼らは己の力を利用し変異種たちを倒していった。


 それから10年。

 アメリカに他人の特殊能力を調べる能力、”鑑定”を持った女性が現れる。

 彼女の力で作られた世界初の特殊能力者鑑定装置、通称UAAA(ユーア)

 UAAAはすぐに量産され世界各国で人類全員の特殊能力が鑑定される。


 そして新しく生まれた職業が狩猟者(ハンター)

 狩猟者には変異種に対抗できるような特殊能力を持つ者達が選ばれる。

 狩猟者になると変異種1体を倒すだけで何十万という高額がもらえることもあり多くの人間が目指した。


 狩猟者の給料はもちろん高額だったが、それに釣られて狩猟者になった者たち全てが一流になれるわけでは無い。

 狩猟者という職業が生まれ規定も無かったころの職業死亡率は50パーセント以上となっていたし、規則や規定が厳しくなった今でも死亡率は20パーセントを切らない。

 それだけ死ぬかもしれないのになぜ狩猟者を目指す人が多いのか……それは偏に、人類の希望だったから。

 幼い頃、夢に描いたヒーローそのもの。人々は自分を救い、他人を救い、世界を救っていく、そんなヒーローに憧れていたのだ。

 

 事実、僕の幼馴染の男も大学卒業と同時に狩猟者になった。

 狩猟者となるには狩猟者組合に所属しなければならないが、条件は成人していることと特殊能力が戦闘に向いていることしかない。

 

 幼馴染の男、久水 雹(ひさみず ひょう)は自身の特殊能力”氷結”を武器に戦った。

 幼馴染が狩猟者になったのだから君も?なんてよく聞かれた話だが僕はそうじゃない。

 僕の特殊能力は戦闘向きでは無く、性格的にも生物を傷つけることが出来ないため狩猟者にはなれなかった。

 ならば僕がなんの職業についたのかといえば、それは花屋である。

 なぜ花屋なのかと聞かれると、幼い頃から植物を育てることが趣味であり中学と高校ではガーデニング部を自ら設立し、大学では植物研究に4年間を費やした。それだけ花や植物を育てることが好きだったから、花屋を選んだ。

 その上で嬉しいのが自分の特殊能力が花を育てるのに向いていたことだろう。

 

 僕、荘華 恵(そうか けい)の能力は”フラワーアレンジ”。

 フラワーアレンジというとフラワーアレンジメントを思い浮かべる人もいるだろうか。フラワーアレンジメントを簡単に説明をすると、花でデザインをする職業である。

 花を選び余計な枝を切って、その花を欲しがっている人のために花器等を選ぶ。

 プレゼントなどのために花を用意しているのがフラワーアレンジメントさんたちなのだ。


 じゃあ僕の特殊能力は適切に花を選ぶことなのか?

 そうではないのだ。

 具体的な特殊能力に関して自分なりに調べたところ、花をアレンジすること。

 そのまんまやないかい!というツッコミはさておき、僕は花の配列を整えたり再構成することが出来るのだ。

 最初は花壇を作って見栄えを良くするために綺麗に並べ直すことぐらいしかできないか……と落胆していたが、徐々に自分の能力を使って理解していくと”フラワーアレンジ”の強力な一面が見えてきた。


 まず花の配列を整える。

 この”花の”というのは花の遺伝子配列すら含まれる。

 例えば寒さに弱いという花の遺伝子を整えることで寒さに強くも出来る、ただこの方法の欠点は何かを改善すると別の何かが弱くなるということ。元々寒さに弱く乾燥に強かった花が寒さに強く乾燥に弱くなってしまう。そんな一長一短の力。

 それに何より一度配列を変えるともう一度変えられないのだ。

 これはおそらく植物自身が何度も遺伝子を組み替えられることに耐えられないということだろう。

 花にもよるが大抵の場合2度の遺伝子組み換えを行うと急速に枯れてしまう。


 そこで役に立つのが再構成の力。

 これはつまり”リセット”をするということだ。

 花の配列を組み替え間違えても再構成をすることで一からやり直すことが出来る。

 

 配列を組み替え、再構成し、やり直す。


 そうして出来る花はおそらく新種と呼べる者達でいっぱいになる。

 一緒に働く幼馴染は凄い凄いと喜んでくれていたが僕はまだ納得が出来ていなかった。

 

 もっと出来ることはあるんじゃないか?

 最初だって花を育てている位置を変えることしか出来なかったのだ。

 それが今は遺伝子の組み換えなんていうことが出来ている。

 もしかしたら”フラワーアレンジ”の本質はもっと高い領域なんじゃないか?と考え続けてしまう。

 

 そんな僕の能力に隠れた力を見つけたのは2年前のこと……。


 カランカラン

 

 おっと、彼女が戻ってきたのでまた今度にしよう。


「けーい!今日の水やり終わったよー!」

「ありがとう!いつも通り?」

「うん!外は多めで小屋は少なめ、ハウスは補充だけね」

「よし、じゃあ雹が帰ってくるまで休んでてー」

「はーい!花茶入れるけど飲むー?」

「飲もうかな。3人分よろしくー」


 今会話していたのは幼馴染であり僕の恋人である詩島 聖菜(しとう せいな)

 聖菜は僕の経営する花畑兼フラワーショップ”KEI”の店員である。


 フラワーショップ”KEI”は僕の祖父が持っていた土地を遺産相続で譲り受けて設立した店舗である。

 実家から遠く離れた田舎の広大な土地と山は気候も安定していて花を育てるのに絶好の場所だった。

 広大な土地で花畑を作るために僕の特殊能力は非常に便利で、わざわざ掘り返さなくとも花を移動できるので花畑を作るのに苦労はしなかった。

 ただ店舗を作るのに大学時代のバイト代とこれまた遺産相続で譲り受けた大金を全て費やすこととなった。

 

 こことは違う場所にある祖父の家は広く裏庭に立派な庭園があったため足繫く通っているうちに祖父母と暮らすようになり、祖父が亡くなったときに遺書で大部分を恵へ相続させると書かれていた。

 もちろん親戚からの反発もあったが、その遺書は弁護士が正式に受理したものだと分かると受け入れるしかなかった。

 

 そんなこんなで作ったフラワーショップでは人手不足のときに前職を辞めてきた聖菜が手伝いに来てくれて、田舎だから売れないだろうな、どうしようかな。と思っていた矢先に雹も狩猟者を引退して花畑の管理兼配送を手伝ってくれることになった。

 つまり今のKEIは幼馴染3人での経営を主軸としているのだ。


 聖菜はメインの花畑と温室の小屋とビニールハウス、雹は冷室の小屋と注文を受けた花の配送、僕が全花畑の管理及びKEIの店長。

 花畑と言えど山1つ分をまるまる花で埋め尽くしていると考えると規模感が分かるかもしれない。

 花畑間を移動するのに車移動が必須になるし、何より初めての人ではどこにどんな花があるのかを覚えるのも大変だろう。

 その点、初期段階から働いてくれている2人は作業量が増えていっても文句を言わず覚えてくれた。これ以上ありがたい仲間はいないだろう。


 そしてKEIは最近フラワーショップだけでなく花畑の見学も行っている。

 花畑を誰にでも見られるように解放するのではなく、あくまでも予約が入ったときに数人のお客さんを連れて周回するといったメニューだが。

 それでも綺麗に咲いた花たちを見に来てくれる人は少なくない。


「おーす。ただいまー」

「お疲れ様、雹。聖菜が花茶入れてくれているから少し休んでて」

「うぃー。昼前には見学が入ってるんだよな?」

「うん。疲れているところ申し訳ないけど運転よろしくね」

「はいよー」


 雹は少し遠くの花屋まで花を出荷して帰ってきたところ、しかし今日はお客さんの希望で花畑を見て回りながら買う花を決めたいと言われていたので急いで帰ってきてもらった。

 僕が運転してもいいのだが雹と聖菜いわく「花の扱いは上手いのに運転は雑すぎる」ということでお客様を乗せての運転はしないこととなっている。

 

「花茶入れたよ。お帰り、雹」

「今日の運転は短い方だったけど、長距離は疲れるわー」

「僕がやろうか?」

「「(恵は)オマエは駄目」」

「はいはい。じゃあ今日の仕事を整理しよう」

「予約が入っているのは誰だ?」

「川田さん、70歳。奥さんと喧嘩して仲直りのために花束を用意したいらしい」

「奥さんとの喧嘩かー。じゃあ、グレードは?」

「2で頼まれている。事前に奥さんの好みを聞くことにはなっているから花の種類はそこで決めよう」

「持ち帰りなんだよな?」

「うん。だから雹には決めた花の回収を頼むよ」

「りょーかい」

「聖菜はいつも通りの接客と花束の作成をお願い」

「わかった!」

「じゃあ今日の営業も頑張ろう!」

「「おおー!」」


 各々が開店に向かって準備を進めていくうちに時計が10時を指す。

 しばらくすると店舗前に1台の車が止まる。

 車から降りてくるのは妙齢の男性。

 彼はちらりと店舗の外観を眺め扉をくぐる、備え付けのベルがカランカランとなり店内へ知らせる。


「「「フラワーショップ”KEI”へようこそ!」」」


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