夏祭りが延期になった夜
今日、八月六日はこの町の夏祭りの日。そう、一ヶ月前から告知されていた。
テレビで報道されるような大それた祭りではないけど、普通にみんなで「夏祭りといえばこれだよね」と言うものが概ね網羅される、そんな夏祭り。
私はそれを、公知された一ヶ月前から楽しみにしていた。
実はこの街に引っ越してきてから初めての夏祭りだ。
何故なら引っ越して数ヶ月後に例の感染症が…… だから初めての夏祭り、楽しみにしていた。
息子は夏期講習とその補講で大変だが、この日は一緒に遊べる予定を組んだ。
私の仕事面では、年に一度の大イベントの最終決戦とも言うべきイベントが前日にあるが、この夏祭りを楽しみに生き抜こう、頑張ろうと思った。
行動制限のない夏。近所の一番大きい公園で何店の屋台が出ます、みたいな役所の通知。
浴衣でもきよーかなー。わーいわーい……
感染拡大により延期、延期後の日程は未定。
そんな通知がきた……
うん、そうだよね……
いや、仕方ないよ……
身を、守るためだ……
……行きたかった!!!
行きたかった! 塾帰りの息子と焼きそばやら焼き鳥やらきゅうりやら食べて、ぬるいビールとラムネで乾杯したかった!!!
だから、今日、私は…… 我が家の食卓にはこんなものを並べた。
焼きそば、いつもはお気に入りのがあるけど、あえてジャンクっぽいのにして、具ももやしだけ。
焼き鳥、これは普通に作った。けど、いつもよりは小さく作った。
きゅうり、前日から仕込んで、いい感じのあのしょっぱさを再現。
ビーマン、福岡のお通しのあれ、って言ってわかる人がどれだけいるかわかりませんが、これも前日から仕込んだ。
枝豆、これは普通だね。
かき氷、シロップの準備も万全。
ラムネ、ワイン用のクーラーに入れてキンキンです。
ビール、これは、せっかく家でやるのだからとスパークリングワインにしました。
いつもは息子も準備手伝ってくれるけど、今日はギリギリまで内緒にして
「ご飯できたよー」ではなく「いらっしゃいませ」
彼の席には付箋で「ラムネ 百円」「焼きそば 百円」 「焼き鳥 百円」以下略
私の席には他に「カヴァ ボトル 百円」
これは食券? 引換券? 現金の代わり? まぁ、そんな感じです。
席に着いた息子に告げる私。
「いらっしゃい、何にします」
「ラムネください」
すぐにのってくれる息子。
「百円です、おかわり自由です」
「次焼き鳥」
「百円です、これで品切れ」
「焼きそばもちょうだい」
「百円です、これも品切れ」
「枝豆は……」
「このボウルから好きなだけとってください」
そして席を代わってもらって
私から「スパークリングワインください」
息子「はい、カヴァがボトルで百円です」
と、ロールプレイを楽しんでから乾杯!
「かき氷欲しいんですけど」
「はい、喜んで!」
息子を目一杯おもてなしできた!
花火は見えなかったけど、楽しんでもらえた。嬉しかった。
もちろん、お皿は屋台っぽく使い捨て容器っぽいのにして雰囲気出しました。
とっても楽しかった。
A「そーいやお前、楽しみにしてたよな。 かける言葉もないけど、レモンくらいならかけるぞ」
B「ありがとう、でも俺は唐揚げにはレモンかけない派だ」
A「エッセイ投稿って初めてだよな? どうしたの?」
B「エッセイって、なんかを批判するようなのばっかりってイメージがあったんだ」
A「あぁ、ちょい前まで祭りになってたような?」
B「そう。で、俺は、殴られる覚悟がないから人を殴らない、って奴だから、書く縁は無いなって思ってた」
A「うん、わかる」
B「でも、ほんとさっき読んだ人のエッセイ、その人はエッセイ読みを以って自らを任じている人とお見受けしたけど、その人は、エッセイは自分の思いを自由に書いた文章、自分の体験でもなんでも、という趣旨のことを書いてたの。だから書いてみた」
A「その人の論旨は、エッセイに、例えば異世界恋愛をぶち込むな、みたいなのだったけどね」
B「わかってる。だけど、エッセイの定義のハードルを下げてくれた感謝をしても、礼を失してはいないと思う」
A「貴意了承、でも、その人読んでくれるかな?」
B「ん? そんなの期待してないよ、エッセイの新規投稿は全部読んでくれるらしいけど、日曜日のこの時間に投稿したの読んでくれるわけないでしょう?」
A「まぁ、さすがに…… では何で投稿したの?」
B「エッセイの多様性の一助になれば……それが回り回って礼になるかと」