表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/84

9.懸念

 それからしばらくして。



 宿に戻った“暁の鷹”は、貸し切ったフロアに集まっていた。



「周りには誰もいないな?盗聴はされてないか?」



 ウォレスがたずねると、杖を使って辺りを探っていたリュートとミリアが振り返った。



 二人は、のぞき見や盗聴の魔術が行われていないか、探っていたのである。



「問題ない」



「ばっちりよぉ~」



 リュートとミリアが頷くと、



「っはぁああ~~~!しんどかったぜぇ~!」



 ギリアムはソファに仰向けになってもたれた。



 コールスが転落したのは“事故”である、と周囲に思い込ませるための芝居は、案外うまくいった。



「なかなかの名演技だったぞ」



 とリュートが笑う。



「へっ、そっちこそ、素人役者とは思えなかったぜ?」



「ミリア、あんたも頑張ったよねぇ」



「あれくらい、なんてことないわよぉ~」



 マーサのねぎらいに、ミリアはけろっとした顔をしている。



 くつろいだ雰囲気の中、ウォレスだけは険しい顔のままだ。



「酒場の連中はあの芝居でごまかせるとして、後はギルド上層か。今後、直にギルド長たちが話を聞きに来る可能性がある。しっかり口裏合わせをしておくぞ」



「そうだな。それに、恐らく現場の様子も確認するだろう。つり橋の縄はあれで大丈夫だろうか?」



 リュートの呟きに、ギリアムが答える。



「問題ねぇよ。両方ともナイフでしっかりと切りほぐしておいたからな。ちゃあぁんと自然に切れた風に見えるようによ」



 剣士はへへっと笑って酒瓶に口をつける。



「全く……アンタがつり橋の縄を最初に切ったときは、何をするのかと思ってビックリしたけどね!」



 マーサがにらみつけると、ギリアムは片眉を上げる。



「仕方ねぇだろ。急に思いついちまったんだよ。今なら、あいつを厄介払いできるってな。だいたい、リーダーだって後から切っただろうが」



 仲間の抗議に、ウォレスはため息をついた。



「そうするより他にない、と思ったからだ。全面的に賛同したわけじゃない!」



 ウォレスはあの時を思い出していた。


 

 つり橋を落とした自分を、信じられないという目で見ていたコールスの顔。



 魂を振り絞るような奴の絶叫は、今も耳の奥に残って離れない。



(オレとしては、地上まで連れ帰ってから解雇したかった。

 当然だ、故意に仲間を落としたなんてこと、バレれば一巻の終わりだ!)



(だが、あいつの呪いを解こうとすれば、かなりの金がかかったことは事実だ。その分の経費が浮いた、とは言えるか……)



「いずれにせよ、起こったことは仕方がない。一度決めた道は貫き通すぞ、いいな!」



「おう!」

「あぁ!」

「えぇ!」

「はぁ~い」



 4人の返事を聞きながら、ウォレスはどこかで胸騒ぎを感じていた。

 


(大丈夫、俺たちがコールスを落としたという証拠は残っていない、ギルドの信頼も厚いし疑われる余地はない……計画に穴はない)



 なのに。



 どうしても、全てが崩れてしまうのではという懸念を拭えないのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり演技だったか! 暁の鷹の連中、ろくでもないですね~。 でもこの方が後の「もう遅い!」や「ざまぁ」展開が盛り上がるから 全然おkです。 しかしここまでセコい奴等だとなんか笑えます。 で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ