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72.メイレールの真意

「メイレールと何を話したの?というか、念話なら僕にも同じように聞こえてきたはずだけど……」


 スキルレベルが高ければ、他人同士の念話であっても傍受することが可能なはずだ。


「普通はそうなんだけどね。でも、あの石板を使えば、私のような“王の器”と秘密の念話ができるらしいの。念話は他の人に聞かれる可能性があるけど、石板を介した会話は通話者しか聞こえない、ってメイレールが言ってたわ」


 そして、アナスタシアはメイレールとの会話について話した。


「最初に、自分は敵の様子を知るために、ベイゲンたちのところに潜んでいるって。例の魔草がどう流通しているかとか、公爵家の動静とか」


「つまり、敵のスパイをしているってこと?本当かな?」

 コールスは辺りを見回した。


 負傷者は出ているものの、命に関わるケガをしている者はいないようだが……


 それでも、巨人を使役して、街に被害を出したのは紛れもなくメイレールだ。

 彼女の言葉をそのまま信用はできない。


 アナスタシアは眉をひそめて首を振った。

「銀の鹿通りを壊したのは申し訳ないって本人も言ってたわ。どうやら敵の幹部がベイゲンたちを使ってメイレールを見張ってるらしくて。

 そいつらを信用させるために、ある程度は上の命令に従わないといけないらしいの」


「じゃあ、あの場にはベイゲンやガドゥもいたってことか」

「うん、そうみたい」


 確かに彼らの気配をコールス自身も感知していた。奴らがこのあたりに身を潜めていたなら、メイレールの言葉もあながち嘘とはいえない。


「敵はメイレールが他の勢力と内通していないか監視している。メイレールはその監視をかいくぐって私たちに連絡を取りたかったのよ」


「それで、奴らの作戦に同行しながら、僕たちと接触を図ってたってことか」

 コールスの言葉に、アナスタシアは頷く。

「うん。町で騒ぎがあれば、私たちがここに来ることは予想していた、って」

 

「そして、彼女を監視しているベイゲンの眼をごまかすために破壊活動をしたり、僕と戦ったりしながら、石板を使って君に連絡を取った、というわけか」


 石板を使うことで、ベイゲンたちからは『アナスタシアの意識を停止させて、コールス側の戦力を削った』ように見える。


――いや、事実そうだったけど。


 しかしその裏では、メイレールは本来の仲間であるアナスタシアと話をしていた、というわけだ。

「皆さん、ご無事ですか!?」

 そこに、ジンクがやってきた。


 彼は戦いの後、住民の安否確認などの作業をやっていて、それがひと段落したようだ。


「はい」とコールスが頷く。

「皆さんはすぐにここを離れてください」

 とジンクは言った。


「おそらくスゲイルの連中は、あなた方がウチのファミリーに匿われていることを教会や公爵家に知らせるでしょう。そうなれば、捜査の手が入るのは確実です」


「本当にすみません」

コールスたちは頭を下げるが、ジンクは首を振った。


「いえ、感謝します。あなた方がいなければ私たちは危なかったのですから。結果的にですけど、間違った行動ではなかったですよ」


 とジンクは自分たちのアジトの方を振り返る。


「ただ、今のままでは危険です。一度アジトに戻ってアイレーネさんに報告し、今後どうするか決めましょう」


「分かりました、お願いします」

 コールスたちはその言葉に従うことにした。

 きっと自分たちは追い出されるだろう、とコールスは思った。


お尋ね者の自分たちを匿っていたと発覚すれば、アイレーネたちも捜査を受けることになる。彼女とすれば、これ以上の迷惑はこうむりたくないはずだ。

 

――また流浪の身かな……


 そう覚悟を決めていたコールス達だったが。



 アジトに戻り、ジンクとともにコールスたちはアイレーネの元に参じた。


 獣人の姿で現れたコールスに、一瞬アイレーネも驚いた様子だった。

 しかし、正体を隠していたことをコールスが詫びると、鷹揚に手を振り微笑んだ。


「気にすることはないよ。それより報告を聞こうか」


 ジンク、コールス達から経緯を聞いたアイレーネは、しばらく腕を組んで黙考した後に、

「分かった、では別の隠れ場所に案内しよう」


 と言ってきた!


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