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33.決着

 ダンフォーはそう言うと、縄で縛られたままの右腕に口をやった。



 巻かれている包帯を歯で破ると、黒々と刺青の入った皮膚がみえた。



「ぐっ!」



 男はその皮膚に歯を立てた。



 途端にその刺青が赤く光り、全身の筋肉が盛り上がり始めた。



「ぬぅあああぁああ!!」



 絶叫と共に、ボコボコと音を立てながら、男の身体は膨れ上がり、腕や体を縛っていたロープはちぎれていく。



「な、なんだこれは!?」



 驚き、悲鳴を上げる一同。



「全員、避難してくださいっ!」



 とコールスは指示を飛ばしながら、剣を抜いた。



「え、また筋力強化スキル?」



 アナスタシアはコールスの後ろで驚いている。



「わからない……」



 とコールスは首を振った。



 洞窟のときは魔術師のミルティースが、ダンフォーのスキルレベルを上げていた。



 だが今、その魔術師がいないのに、なぜ一人でスキルレベルを上げられたのだろう?




――いや、そんなことを考えるのはあとだ!




 この開けた場所では、洞窟のときのように、延髄に岩を降らせるわけにはいかない。



 だが、対応の仕方はある。



 強化が終わっていない部分、例えば手足などを先に攻撃して切り落とせば、戦力を下げられる。



「ハッ!」



 斬撃力強化スキルで鋭く剣を振り抜く。



 三日月形の剣気は、相手の左腕を切り落とした。



「ぎゃあああ!!」



 ダンフォーは左腕を押さえてうずくまる。しかし――



「……なんてなぁ!」



 巨人となった男は、口いっぱいに笑った。



 すると、腕の切断面がボコボコと膨れ上がり、飛び出してきた筋肉が再び腕を形作った。



「な……!」



「フッ、驚いたか?こいつはなぁ、筋力強化じゃねぇ、再生力強化だ。


 もちろん、レベル99だからな。例え斬られても細胞があっという間に増殖して治してくれるってわけさ!」



 そう言いながら、地面に落ちた「元」の腕を拾うと、コールス目掛けて投げつけた。



「くっ!」



 慌てて刀の腹で肉塊を弾き飛ばすと、その後ろからダンフォー自身が飛んできた。



「ハァ!!」


 

 巨大な拳が地面を抉り、岩塊がはじけ飛んだ。



「うわっ!」



 コールスはアナスタシアを庇いながら、岩をガードした。



「まだ行くぞ、オラァ!」



 ダンフォーは矢継ぎ早に拳を繰り出してくる。



 コールスはそれを捌きながら、反撃として剣気を飛ばして応戦していく。



 今は相手が武器をもっていないこともあって、剣気が弾かれることはない。


 

 確実に相手の身体にヒットして、血肉を切り裂いていくのだが、その度に身体の内から肉が湧き上がり、傷を塞いでしまうのだった。



――どうすれば……!」



 コールスの額に汗が流れる。



――いや、何か弱点があるはず!



「ナーシャ、鑑定スキルを!」



「うん!」



 アナスタシアから鑑定スキルをもらうと発動させた。



 すると、ダンフォーの上腕に目が留まった。



 そこには、例の“蟲”が入り込んでいた。



――あれは、いつの間に?



 と、さっきのルミナのナイフが思い浮かんだ。



――そうか、あのナイフの先にルミナの蟲が付いていたんだ!ならば……!



 コールスは蟲がついている個所からわずかに外れた所を狙って剣気を飛ばした。



 剣気は骨に近いところまで抉りながらも、すぐに回復する。



 だが、筋肉が湧き上がると同時に、蟲の群体(コロニー)も新しい筋肉の中に広がっていくのが分かった。



――やっぱり!



 蟲もまた生物、つまり細胞の集まりなのだ。ならばスキルの影響を共に受けて繁殖を加速させていく。


 スキルによって筋肉が再生するたびに、通常の何百倍のものスピードで蟲もまた増えていくわけだ!



 コールスは蟲の群体が広がるように、徐々に傷つける場所をずらしていく。



 それに従って、回復した箇所から蟲も共に増えて拡がっていく。



「ハッ、そんなチマチマした攻撃じゃ倒せんぞ!」



 ダンフォーはコールスの意図に気づくことなく、平気な顔で剣気を受けている。



 だが、それこそがコールスの思うつぼだ。



 やがて、蟲たちは全身へと広がっていった。



「クク、どうだ?だいぶ息が上がってきたようだなぁ!?」

 自分に勝敗の流れが来ている、と思っているのか、ダンフォーはニヤニヤと笑っている。



「そうだな、もう終わり、みたいだね」



 コールスがそういうと、大男は「は?」と怪訝な顔をしたが、すぐに



「ふふ、ふはははははは!!観念したか、ボウズ!」



 と、銅鑼のような声を響かせた。



「なら、これで終いだぁ!!」



 と拳を振り上げた瞬間、



「うぐぁ!!」


 

 雷に打たれたように、ダンフォーの身体が震え、



「い、いでぇででででで!!ぐあああ!!」



 叫びながら、地面へと転がった。



「ぐあ、なんだこの痛みは!?」



「それは、蟲が暴れるからだよ」


 とコールスは言った。



「蟲、だと?」


 そう言って、ダンフォーは身体のあちこちを見た。



 じわぁ、っと黒い斑点が中からしみだしてきているのを見て、



「うぁ、はあああああ、なんじゃこりゃあああああ!!」



 男はパニックになりながら、黒い斑点を払い落とそうとするが、当然そんなことで落ちるわけもない。



「ぐあああ、いでででででで!助けて、助けてくれぇ!」



 痛みに叫びながら、ダンフォーの身体はみるみるうちにしぼんでいった。



 コールスは鋭い目で、その様子を見つめながら、



「ルミナの受けた苦しみ、その百分の一でも味わうがいい!」



 と言葉を吐き捨てた。



「ロープを持ってこい、早く!」



 様子を見守っていたタクトスたちは、再びダンフォーに群がり、その体を拘束していく。


 

 それを見ながら、コールスはアナスタシアとともに城へ向かって歩き出した。


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