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26.世界を変革する力

 ギギィン!!

 


 ルミナが振るうナイフを再び弾きながら、



「ナーシャ!」


 と、アナスタシアに声をかける。



「うん!」


 アナスタシアはコールスに“斬撃力強化”のスキルを移す。



 コールスはすぐさま剣を振って、ルミナへと剣気を飛ばす。



 だが、ルミナは剣の軌道を予測していたらしく、素早くかわした。



「フン、どこを狙っている!」


 盗賊の少女はそう言って嘲笑ったが、



「ぐわぁ!」


「ぎゃあ!」


と彼女の背後から悲鳴が上がった。



 薄まっていく煙幕の中、城から逃げようとしていた数人の盗賊が真っ二つに胴を斬られて倒れ伏していた。



「あ……!」


 ルミナは驚いた様子だった。



 コールスは、ルミナの回避行動を見越して剣を振るい、後ろの盗賊たちを倒したのだ。



 煙に紛れて逃走しようとする盗賊を一人でも多く倒す、というコールスの狙いに気づいたらしく、



「貴様ぁ!」


 ルミナは目に怒りの炎を宿しながら、飛び掛かろうとした。



 しかしその瞬間、彼女の横腹へと剣が突き出された。



「ぐっ!」


 繰り出された剣をナイフで受け止めるも、強い衝撃でルミナは吹き飛ばされた。



「ぐぁ!」


 柱へと叩きつけられたルミナは、気を失って床に倒れた。



「コールス殿、大丈夫か!?」


 コールスに助け船をだしたのは、タクトスだった。



「ありがとうございます!」


 そう言いながら、コールスとアナスタシアは城の入口へと走った。



 しかし、既に遅かった。



 煙と混乱に乗じて逃げようとした盗賊について、大半は殺すか捕まえることができた。



 だが、肝心かなめの頭領は、はるか先へと逃走していた。



「ナーシャ、“走力強化”を!」


 lv.99の走力なら追いつける!と考えたコールスだが、



「そこまでだ!」


 と、屋敷の中から声が飛んできた。



 コールスたちが振り返ると、広間の2階に一人の老紳士が姿を見せていた。



「伯爵さま!」


 と、タクトスが目を見開いた。



――ディークソン伯爵!?


 

 人嫌いで、他人の前にめったに顔を見せないはずの伯爵の登場に、人々は驚いた。


 

 コールスとアナスタシアも慌ててその場に膝をついた。



「もうやめよ、賊どもは去った。今はそれで十分だ」


 伯爵は静かな、しかしよく通る声でそう言った。



「はっ」とタクトスは頭を下げた。



 伯爵は一同を見渡すと、コールスに目を止めた。


「そこの少年よ、そなただな?我々を賊から救ってくれたのは」



 コールスが顔を上げると、伯爵は微笑んだ。


「感謝するぞ、小さな勇者殿」



「い、いえ!……力及ばず申し訳ありません」



 コールスの謙遜に、老紳士は苦笑した。


「いや、至らなかったのは私のほうだ。こんな事態になるまで放っておいた私のせいだ」



 そう言いながら、伯爵は階段を降りてきた。



「ともかく、賊は去った。ミードクどもの企みは破れ、私もクレアも無事だ。……今はそれで良い」


 やがてコールスたちの前に来ると、伯爵は二人に目線を合わせた。



「改めて、歓迎しよう。コールス殿、アナスタシア殿」



「お言葉、ありがとうございます」

「お気遣い感謝いたします!」


 二人は頭を下げた。



「今はゆっくり休んでくれ。明日、お礼として、君たちに良いものをみせてあげよう」




「良いもの、ですか?」


 首を傾げる二人に、



「あぁ。君たちのその力、おそらくディークソン軍事研究所で得たものだろう?」



「!」


 驚くコールスたちに、伯爵は悪戯っぽく笑いかけた。



「実は私も、あの研究所について調べているのだよ。

 

 かつて、私の先祖は何を求めて、あのような施設を作ったのかについてね。


 そして今、私はある確信を抱きつつある。


 彼らは、最上の力を、この世界を変えるほどの力を手にしようとしていたのだと!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶり読みましたが、相変わらず面白いです。 熱い抱擁を交わすタクトスとクレア。 コールスとアナスタシアからすれば少し気まずいですよね^-^; それと盗賊も追い払えて一件落着ですね。
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