表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/84

20.コールスの決意

 コールスとアナスタシアはミードクたちの案内で、ディークソン伯爵家の城館を訪れていた。



 どうしても礼をしたい、というミードクとクレアの願いを断り切れず、夕食をご馳走になることが決まったのだ。



 正直、あまり気乗りはしなかった。



 さっき、ミードクがアナスタシアの前に立った時、アナスタシアが怯えた表情をしていたからだ。



 だから、コールスも咄嗟に彼女を庇ったのだが……


 

「ナーシャ、大丈夫?」



 馬に揺られながら、コールスは後ろのアナスタシアに声をかけた。



「え?う、うん。どうしたの、コールス?」



「いや、その……ミードクさまを怖がっているみたいだったから」



 コールスは先行する馬車を見つめた。



 ミードクはアナスタシアに、一緒に馬車に乗っていかないか、と誘ってもいた。



 コールスが「いつも護衛対象の傍にいないといけない契約なので」と嘘を言って断ったことと、クレアが「あまりしつこくお誘いしてはいけない」と諫めてくれたので、ミードクも引き下がったのだが。



「大丈夫!心配しないで。確かに、最初は怖く見えたし、失礼な人だと思ったけど。でも、もうすぐ伯爵さまになられる方なんだから、そんな変なことはなさらないんじゃない?」



「まぁ、そうだけど……」



 とコールスはため息をついた。



 ミードク・セイジュはこの辺りでは有力な金融業者で、商人たちの外に、貴族たちにも金を貸している。

 


 ディークソン伯爵家の領地が彼のものになったのも、借金のカタとしてそれを取り上げたという話だ。



 しかもそれに飽き足らず、多額の資金援助と引き換えに、ディークソン伯爵の一人娘である、クレア=ディークソンと結婚し、伯爵とも養子縁組をすることで、正真正銘の貴族になろうというのだ。



 確かにそうした大事な時期に、(いち平民とはいえ)コールスたち相手に何かトラブルを起こす真似はしないだろうが……



「本当に平気だから。そもそも、食事のお誘いに乗ったのは私なんだし」



 それは、アナスタシアの生みの親・アルクマールにつながる手がかりがあるかもしれないから。



 アナスタシアが目覚めた「ディークソン軍事研究所跡」は、元はディークソン伯爵家のものである。



 もしアルクマールがアナスタシアをあの場所に残していったとすれば、伯爵家とアルクマールとの間にどんなつながりがあったのか?



 それがわかるかもしれない、という思いから、アナスタシアはディークソン家にお邪魔しようという気になったようだった。



「それに、私嬉しかったの、コールスが私を庇ってくれて。……フフッ、なんだか物語の中の騎士に出会ったみたいで」



「そ、そうかな?そんな大したことじゃないよ」



とコールスは赤面しながら頭を掻いた。




 けれど、少年の心には火がついていた。



――ここまで言ってもらえたなら、しっかりしなきゃ男じゃない!



 絶対に、アナスタシアを守っていこうと決意を新たにするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ナーシャが色々とヒロインとして輝いている! ざまぁ展開も終わり、どうなのかなと思ってましたが、 ナーシャとの二人旅はそれはそれでいい! やはり献身的なヒロインは良いですね。 自分もこういう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ