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2.襲来

 コールスがスキルを使えなくなったことで、一行は一度、ダンジョンを脱出することにした。



「あー、ったく!せっかくこの階層まで来れたってのによぉ!あのクソガキのせいで台なしじゃねぇか!」


 

(あかつき)(たか)”の剣士ギリアムは、歩きながらわざとらしくため息をついてそう言った。



「仕方がないだろう。探索師が使い物にならないんじゃ、これ以上の冒険はできんよ」



 とリュートが応じる。



「そうよ。それに、ミリアが呪いにかからなくて良かったじゃない!魔術師が役立たずになったら目も当てられないもの」



 そう言ったのは弓手のマーサだ。



「ハッ!ミリアを守るのは当然だろ。そもそも獣人のガキなんぞ、俺たち人間さまの身代わりになるくらい当たり前だろうが!」



「言いたいことは分かるけど。ギリアム、そういうことは表で言わないでくれよ?人権派の奴らがうるさいから」



 大声のギリアムを、リュートがやんわりとたしなめる。



「それより、ねぇ見てよぉ。泥が全然落ちないのぉ。おろしたてだったのにぃ~」



「はいはい、また買えばいいじゃないの」



 相変わらずスカートの汚れを気にしているミリアを、マーサがなだめる。



「お前たち、少し静かにしろ。まだこの階層のボスを確認できてないんだ。奴がどこから来るかわからん」



 ウォレスは槍を構えながら、周囲に油断なく気を配っている。



 そして、彼らから少し離れたところ、列の一番後方をコールスは後ずさりで歩いていた。



「いてて……」



 自分の頬に手を当てる。



 先ほど、殴られた所がズキッと痛んだ。



 頬だけではない、いまや全身あざだらけだった。



 地上に引き返すことが決まったあと、ギリアムからタコ殴りにされたのだ。



 剣士の気が済むまで、仲間たちは黙って見ていた。



 だが、コールスは今、そのことは忘れようと努めていた。



(とにかく、今はダンジョンを出ることが最優先だ)



 パーティの雑談も今は聞こえていなかった。



 頭の上の耳をそばだてて、わずかな音も聞き漏らさないように集中する。



 確かに探知スキルは使えない。



(けど、ボクにはこれまでの探索で培った勘と経験がある)



(それをフルに活用するんだ。探索師としての誇りをかけて、無事にパーティを脱出させなくちゃ!)



 しかし、そんなコールスの決意に水を差すように、



 ガランガランガラン!!



 割れ鐘の音が道いっぱいに鳴り響いた。



「ちょっと何やってるのよ、ミリア!」



「だってぇ、あの奥で何か光ってて、気になったんだもん!」



 どうやら、ミリアが勝手にダンジョンの脇道に入って、仕掛けられていた鳴子に引っかかったらしい。



「おい、グズガキ!こんなトラップくらい解除しとけよ!」



 ギリアムから罵声を浴びせられて、さすがのコールスも顔をしかめた。



(無茶言わないでよ……)



 脇道なんて無数にあるのだ。


 

 入りもしない場所のトラップまでいちいち解いている暇はない。


 

 だからこそ、『探索師が確かめた道以外は、絶対に入らない』というのがダンジョン攻略の鉄則なのだが。



 何度もこのダンジョンに出入りするうちに、悪い意味で慣れてしまったのだろうか。



 警戒心が薄れた魔術師はとんでもない事態を引き起こしてしまった。



 ズズズズ、と低い地響きが伝わってくる。



 何か巨大なもの……モンスターの足音だ!



「来るぞ!」



 ウォレスの声に皆が一斉に武器を構える。

 


 ボゴォ!

 


 突如、洞窟の壁の一部が崩れた。



 ぽっかりと開いた穴から伸びてきたのは、巨大な斧を持った太い腕。



「こいつは!」



 現れたのは、アーマーミノタウロス。

 


 この階層における最強種だ。だがー―



「おい、嘘だろ!」



 出てきたのは1体だけではなかった。

 


 2、3……全部で5体。



 1体だけでも、このパーティで倒せるかどうかの強敵だ。



(とても太刀打ちできない!)



 コールスは唇を噛んだ。



「くそっ、逃げるぞ!」



 ウォレスの声が響いた。


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