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黄昏幻想詩

作者: なと

恋し夢見し宿場町の、児童文学的ホラー詩。

お地蔵様は、見ているよ。

怖い詩のあとは、サイダーでも飲んでください。

忘れていた影法師、落としていった片腕。路地裏にほうき星が落ちたころ、虫取り網を持って、コロッケ屋の少年がほうき星の欠片を取りに向かうよ。街角では福助のお面を被った人たちが舞っている。昏くて冷たい風が吹いて、郵便ポストに真っ黒な手紙が投函される。


黄昏街道、夕べの夢は、宵の闇路。路地の向こうで黒電話がジリリリ…と鳴り、あちこちで訃報の電報。棺桶の中の母に首を絞められる夢を見ました。不吉なことがあったあとは、陽だまりの中でサイダーを飲む。宿場町の、夏。


宵闇、祭りの夜。山から鬼がやってきて、人をかどかわす。三千世界の鴉を殺し、主と朝寝がしてみたい。鬼の悲しい、運命。所詮、人にはなれぬ。お前の影法師だというのに、りんご飴、金魚すくい、ねえ、君は帰れるの?この泡沫の世界から。鬼が人を攫ったあとには、しゃれこうべ


鬼一口。後にはしゃれこうべ。桜が舞ってます。アメフラシのおいでおいで。桜が舞ってます。影法師のさとり。くだんの予言。家は不気味に繁栄して、目の赤い座敷童が、枕返し。たたりもっけの顔覗き。歯を磨きましょう。顔を洗いましょう。不浄なものには、櫻の花びら。


うだるような夏。坂道の上の入道雲。風に飛んで行く麦わら帽子、道に転がっている靴。悔恨逡巡後悔不気味———ー、夏の気配。いつでも、いつまでも、夏の懐古。昔の世界は、私たちを惹きつけて、止まない。祭りの夜。海鳴り、朝鮮朝顔、座頭虫、潮の香り、涙の匂い……


柿の木に、たんころりんが、ぶら下がっている。柿食えば、鐘が鳴るなり、法隆寺。人面相が膝にできた。賽を振ると、凶の文字が出た。戸棚を開けると、犬歯が転がっている。まったく、可笑しなことの起こる今日。じりりり…訃報の電話。一寸先は闇って言葉、知っていた?


宿場町で、聞こえる声。遠き悲しいさだめの鬼の子の泣き声。おいで、もう寂しくない。でも影法師に気を付けたほうがいい。彼らは、さも正しいようで間違った讒言をしてくるから。線香の匂い、懐かしい祖母の背中。干柿、荒れ野の秋風、鈴虫、舞います舞います。おのれの運命を乗り越えるために。




こういう詩が愛しいです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 愉しく読みました。ホラーなんですか?僕には法螺話か御伽噺、でなければ詩に見えるのですが。 [気になる点] 『家は不気味に繁栄して、』ここだけ気になりました。詩に作るなら「不気味」と済ませず…
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