表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/83

第77話 決戦

 娯楽都市へと降り立った一同は、双頭の竜と対峙する。

 死の冷たさにも似た、月光の冷たさを肌で感じる。


「おやおや、あきらめの悪い奴らだ。世界はもう終わったようなものだというのに、なんのために戦うというのだ」


 狂王の嘲笑う声が響き渡る。

 しかし、それに負けない声で友達のためだと陽子は答える。

 囚われのメリーの表情は見えないが、かすかに指が動いた気がした。


「お前に素性を隠してだまし続けていた奴を友達だと? 無碍の者たちを大崩壊で大量に殺したこいつを友達だと? 笑わせるな! この怨嗟でその意志ごと踏みつぶしてくれるわ!」


 結晶でできた前足を叩きつける。地面が揺れる。


「そもそも、あなたが魔術師に嫉妬して暗殺なんか企まなければ、大崩壊も起きなかったのよ!」


「ほう、俺のせいか? お前たち、人間も魔族も皆、俺のせいにして……それが俺の怨嗟を高めるのだ……!」


 竜の咆哮とともに降り注ぐ流星。

 虹の障壁で防ぐが、先ほどの戦いを考えてあまり使えないことを知っている。


「それでしか防げないのなら、やるしかないよな……そしてまたお前は同じように負けるのだ」


「試してみないと……わからない!」


 竜は前足を叩きつけ薙ぎ払う、衝撃波が巻き起こり陽子達を押し返す。


「諦めろ! お前たちでは勝てない! そして、真の王、いや神に頭を垂れるのだ!」


「結晶に攻撃は殆ど通らないわ! だから黒いところを狙うのよ!」


 双頭の竜は黒い怨嗟と赤い結晶で構成されている。結晶に攻撃は殆ど通らないことを陽子達は知っている。それならば怨嗟の部分に攻撃を重ねていくしかない。

 荒れ狂う攻撃を躱し、または受け止めながら、少しずつ攻撃を加えていく。


「黒よ、傷を削れ! 皆大丈夫?」


「マスター、気を付けてクダサイ! 直撃は死を意味します!」


 双頭の片方が炎のブレスを吐き出す。

 アカリが盾を地面に突き刺すようにして壁となって受け止める。


「出力を上げて……! これでもギリギリ……!」


 何とかしのいだものの、アカリはかなり消耗して膝をつく。

 そこを傷を削ってもらい、何とか立ち上がる。

 しかし、攻撃はどんどん激しくなっていく。


「所詮この程度か。そろそろ終わりにしようじゃないか」


 陽子達を潰さんとばかりに天高く前足を振り上げ、四人に振り下ろす。

 中心に駆け込んだローゼスがカランコエに念を込め、結界を生成する。

 結界が前足を阻み、その隙に一同は散開する。その後バリンと結界が割れ、大地が揺れる。


「小癪な」


 双頭の片方が、孤立したタロめがけて赫といわんばかりの炎を吐き出す。

 タロが喰魔壁を構えて身を守るが、勢いを殺しきれず、膝をつく。

 そしてそれを見越したかのようにもう一方の頭が光線を放とうと照準を定める。


「光ったら……今っ! 黒よ、空間を削れ!」


 黒の力で引き寄せて、寸でのところで回避させる。

 狙いを外れた光線は地面をえぐり大きく凹ませた。


「ありがとう、ヨーコ。だけど、このままだと……」


 タロは再び武器を構える。

 攻撃を捌くので手一杯で、有効打を与えられていない。皆の決死の攻撃も効いているようには見えなかった。

 防戦一方の状況は変わらないまま相手の攻撃は熾烈さを増していく。


「黒よ、勢いを削れ!」


「効かぬ! そのちっぽけな『諦め』でこの膨大な怨嗟は削れぬ!」


「そんな!?」


 黒の力は想いを断ち切る力。強い想いの前には無力であった……たとえそれが怨嗟であったとしても。

 くろの中で何かが鼓動する。諦めと無関心でおおわれていたが、陽子のためになりたいという強い想いだ。感情を持つこと自体が矛盾のような自らに心を与えた陽子。そんな陽子に、喋って想いを伝えることもできなかった。根幹である諦めと無関心を超えて感情を解き放てば消えてしまうかもしれない。

 それでも、強く想う。陽子の事を。もっと、陽子の力になりたいと。


――黒が脈打つ。


(ぼくは……きみのために、つよくなりたい……!)


 星降る夜が起こした奇跡だろうか。否、これは強い想いが引き起こした必然だ。

 くろは黒い獣へと姿を変え、驚く陽子に乗るように促す。


「いこう。ともだちのために」


「くろ……!? うん、わかったよ!」

挿絵(By みてみん)

「ぼくときみのおもいはつながっている。ようこ。まほうにしゅうちゅうして」


 陽子が跨り、詠唱を始めると同時に一気に走り出す。

竜の攻撃を掻い潜りながら竜の足元へと迫る。ブレス、突風、衝撃波。すべてを喰らうようにして削り取り、駆け抜ける。そして竜の左足で踏みつぶそうとするのを正面から受け止める。


「この王に想いで正面勝負とはな。よかろう、このまま踏みつぶしてやろう」


「くろ……私もいるからね」


「だから、まけない」


 その言葉とともに、逆に竜の前足を押し返してかちあげる。

 そしてすれ違いざまに、陽子の放った特大の月の円刃が竜の胴体と左足を繋ぐ部分を切り裂いた。


「何っ!? 負けるだと……! この俺が、想いの力で……!」


 地面に落ち、土煙を上げる左足。結晶の爪がバラバラと破片となって地面に散らばる。

 片足を切られ、バランスを崩して双頭の片方が倒れこむ。


「ありがとう、ヨーコ、くろ! 今なら行けるわ!」


 ローゼスとタロは動かなくなった隙に集中攻撃を行う。大量の矢を放ち、鉄球による繰り返しの殴打。

 あと一歩というところまで追いつめたが、散らばった結晶が刃となって襲い掛かってきたため、アカリに守られながら、撤退を余儀なくされた。


***


一同は竜から距離を取り、体勢を立て直す。


「貴様ら……王をこけにするとは……許しがたい罪だ」


「イーリスをめちゃくちゃにした奴には言われたくないな!」


 タロは武器を突き付けてそう言い返す。激昂する狂王。


「ふざけるな! イーリスは俺の国だ! 決して奴の物ではない!」


 怒りに任せて竜は双方の頭からブレスを解き放つ。アカリとタロが力を合わせて受け止めるが、周囲が燃え上がり、火の海と化す。

 しかし、陽子が獣になった黒に皆を載せて火の海から脱出する。


「おのれ……! それならいいだろう。地獄を見せてやる。お前には防ぐことしかできまい!」


 竜の咆哮で無数の流星が呼び寄せられる。それも、ハディンの流星群の比ではない量を。

 降り注ぐ脅威に対して、虹の障壁を展開して守らざるを得なかった。

 そして障壁で受け止めるたびに、陽子の体力を消耗する。

 流星が降り終わるころには、いつかのように体力の限界が訪れていた。


「ヨーコ! しっかりして! すぐに薬を……!」


「ははは! やはり思った通りだ! お前は優しいからな! そんなもの、何の役にも立たないというのに!」


「そんなこと、ない」


 陽子を馬鹿にされて、唸り声をあげて威嚇するくろ。


「これを見ても同じことが言えるか?」


 再びの咆哮。今度は巨大な隕石が呼び寄せられる。

 数は一つ。しかしそれは大きく、地面に落ちれば死を意味していた。

それでも、虹の障壁なしでも守って見せると、それぞれの防御手段を構える。


「いつか見たことある光景だな。ああ、そうだ闘技大会の決勝戦。あのときもこういう感じだったよなあ……?」


 その時の展開を思い出してくつくつと笑う。


「あの時とは違って、お前の守るべき少女は体力の限界のようだぞ! つまり俺の勝ちというわけだ!

 さあ……死ね――――」


 隕石が唸りをあげて、陽子達に迫る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ