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黒の聖女の冒険譚~思い出をアルバムに収めて~  作者: ぬけ助
第8章 輝きの塔と狂王の槍
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第59話 集光塔第三層・生贄の間

 第三層に上った一同を出迎えたのは、やはりモノリスであった。

サンゼンががれきを投げて危険確認する。どうやら屈んで下を通ればよいようだ。


「這うより楽そうだが……」


「あーここ結構難しいところだよ。みんな『生贄の間』って呼んでいるところだよ」


「おいおい、タロ。それじゃあ、まるで誰かがモノリスの犠牲にならないといけないみたいじゃないか! 俺は認めないぞ!」


「皆はスフィアボムって知ってるかい?」


 戦争のときにさんざん苦しめられた経験がよみがえって苦笑いするサンゼン。


「サンゼンさん? どんなものなの?」


「魔王軍の作った自走式地雷だよ。岩を球状に研磨して、ゴーレム化させたもので、埋まっているところに近づくと現れて転がってくるんだ。」


このぐらいの大きさでな、とスイカぐらいの大きさの物を抱えるようなしぐさをする。


「まあ転がってきた後はもちろんドカンだ。爆発で岩が散らばって傷を負いやすかったんだ」


「そういえば、なんでそんな物騒なものの話をしたのよ? ……っていかにも出てきそうなベルね」


 ベルが設置されており、そばには円状の穴に蓋された壁がある。

そして、奥にはモノリスが先ほどよりも低い位置に佇んでいた。


「とりあえず避けて通ろうぜ……っておい! この先進めないぞ!」


這っても通れなさそうな高さのモノリスに阻まれている。念のためがれきを地面に滑らせてもモノリスが阻んで通れない。

しばらく前後を見て考えていたが、ローゼスがそういうことね、とベルのそばまで歩いていく。


「ローゼスさん? どうするの?」


「とりあえず、試してみたいことがあって。タロ? 私のやろうとしてることはあってるのかしら?」


「うん。正しい。とりあえずベルを鳴らしてみてよ。そこの足場に乗ればスフィアに察知されないから」


「ええ、わかったわ。みんな足場に乗ったわね? いくわよ?」


 リンとならせばごとんと壁からスフィアボムが現れてこちらに転がってくる。

 一同を無視してモノリスの方へと向かい……モノリスから放たれる光線がそれを破壊する。

 爆発して四散した岩片に手当たり次第に光線を放つモノリス。


「そういうコトですか。モノリスがスフィアボムに気を取られているウチに先に進メと」


「そうだよ。とりあえずスフィアボムを出さないことには進めないよ」


「それなら、私がここからベルを鳴らすから、足場を通り過ぎたらみんなでついていきましょう」


「わかった……転ばないように気を付けないとね」


 ローゼスが弓でベルを射って、スフィアボムを出して足場の下を通過させる。


「つかず離れずの距離を……」


 先行していたスフィアがモノリスの餌食になったのを見計らって、一斉に駆け出す一同。

 轟く音に耳を抑えながらもなんとか、突破できた。

 一同は小部屋にたどり着く。奥には橋が架かっており、昇降機が見られた。

 タロにスイッチを動かしてみればわかるよと、促されてスイッチを押してみる。昇降機が入れ替わりでせりあがってきてモノリスが顔を出す。


「わっ! ちょっと! 危ないじゃない!」


「ソレダケではないデス。奥にもさらに二対の昇降機を確認。これら三対の昇降機の動きは連動しているようデス」


「ここに誰か残ってスイッチ制御するんだ。それに、ほら。詠唱器が起動するスイッチでもあるんだ」


 小部屋の壁から詠唱器が顔を出す。


「先に言えよ!」


急いでサンゼンが蹴っ飛ばして壁に引っ込こませる。その話を聞いて、安全に移動できないか考えて、陽子はさっきのように弓矢で遠くからスイッチを押せないか提案する。


「うーん……片方に通れなくなるぐらいのモノリスがあるなら二対目まではそれで行けても最後のところを突破できないんじゃないかしら? だってほら、二回動かす必要があるから手前のここのモノリスが邪魔になるわ」


「そういえば、詠唱器……うまく誘導できないかな?」


「やってみる価値はあるカモしれませんネ」


 どうやってとかしげるアカリと陽子だったが、ローゼスが何かをひらめく。


「詠唱器もゴーレムなんだから生き物を狙うと考えていいんじゃないかしら? それなら……」


 少しかわいそうだけど、といいながら花束を取り出してスイッチのそばに置くローゼス。


「……ちょっとでも時間を稼いでね。 サンゼン、私を背負ってくれない?」


「お、おう……あとで文句言ったりするなよ」


「言わないわよ……よし、皆行きましょう! ヨーコ、スイッチ押すのをお願い。できれば飛び道具で」


「わかったよ! ルナボルトッ!」


 スイッチを入れて1対目のモノリスを引っ込めて、急いで駆け抜ける。ローゼスがサンゼンの背に乗った状態で、素早く後ろに矢を放ち、二対目のモノリスもひっこめる。そして、三対目の昇降機を前にして勝手にモノリスがある昇降機が下がる。花束の誘導がうまくいったようだ。


「いやあ。ここまでサクサクだね。オイラのアドバイス、多少は役に立ってるかな?」


 頷く陽子。それを見てタロはにっと笑って照れる。


「やれやれ。人を背負って走ったのってあの時以来か。で、上の階だが……」


 と、言ったタイミングで再び揺れる。塔に穴が開き、がれきが階段や陽子達の上に降り注ぐ。


「皆さん、ワタシの後ろに! シールド展開!」


「私も手伝うよ! 黒よ、勢いを削れ!」


「うおおお! がれき程度まとめて殴り飛ばしてやる!」


 三人の奮戦のおかげで何とか下敷きにならずに済んだ。


「さて、タロ。このがれき除けるのを手伝ってくれるかしら?」


「わかった! オイラに任せな!」


「そう肩に力をいれないで。全部取っ払ってたら時間が無くなるわ」


タロががれきを押しのけた後、ローゼスが押しのけたがれきに蔦を張り巡らせて、耐久を補強する。


「ちょっと細いけど、通れるようになったわ」


隙間を通っていく一同だったが、不運なことに陽子がつっかえてしまった。


「う……なんかつっかえちゃって動けない……」


「ローゼス、アカリ、引っ張ってやってくれ」


「マスター、大丈夫デスカ?」


 ぎゅっと引っ張る。何とか抜け出すことができたが、ぷちんという嫌な音。がれきに服が引っかかって、彼女の胸を吊ってた紐の片方が切れてしまったのだ。


「あっ……服が……」


幸い、インナーウェアを着ているからポロリなんてことはなかったが、途中着替えたり洗ったりしながらずっと着てきた衣装なのでとても残念だった。


「……しょうがないわね。ヨーコ。ちょっと来て」


 そういって、ローゼスは蔓薔薇を取り出し、切れてしまった紐部分を接ぎ直す。

切れた紐を蔦で結び付けて、再び服としての役割を果たせるようになった。


「ありがとう、ローゼスさん……大事にするね」


 ぱぁっと満開の笑顔を咲かせる。タロがなるほどなあ、と何かを納得していた。


「さて次がモノリス層の最後だ、大変なところだから頑張ろう」


 頷く一同。さらに上へ。

ルインメーカーの塔への攻撃は激しくなっている。何としてでもあれよりも先に最上層にたどり着きたいところだが。

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