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黒の聖女の冒険譚~思い出をアルバムに収めて~  作者: ぬけ助
第7章 百花繚乱、闘技大会
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第46話 初心夢魔と全武器網羅者

 割り当てられた控室で準備をする一同だったが、あれからサンゼンの様子がおかしい。

 心配げに声をかける陽子に気付き、ため息をつく。


「俺の昔話で、命がけでヒーラー背負って撤退した話はしただろう?」


 頷く一同。ある砦を攻略していたサンゼン達は敵将と対峙して、たった一人相手に手も足も出ずに命がけでヒーラーを背負って逃げ帰ったというのだ。


「それが今回の対戦相手だよ。五十年の間修行をしていたとはいえ、アレを超えられるのか……?」


「なるほどね。あなたがそこまで言うなんて、相当強い相手なのね……」


「絶対零度のエリク……魔王国の大将でさ、竜人っていうめちゃくちゃ強い種族なんだ」


 竜ってドラゴンとかの事だろうかと陽子が利けばサンゼンは頷いて話を続ける。

 竜の力強さと人の器用さを兼ね備えており、強力な冷気と卓越した剣技を使いこなし、時には剣に自らのブレスを纏わせる。

 この世界では冷気はすなわち死の属性。生物は氷漬けになれば死に至る。それを使いこなすといえばいかに恐ろしいかわかるだろうとサンゼンは答えた。


「死は、生命の流れだからどうしよう、帳を広げてもほとんど防げないよ……」


「ワタシならば、凍えても死にはしません。何としてでも皆様をお守り致しマス」


「つってもなあ…メリーんときとはわけが違うぜ? 盾ごと氷漬けにされたらたまったもんじゃないぞ」


 一同、どうしようかと悩んでいたが、陽子はちょっと考えるのに疲れて、離れて休憩をとる。すると、そこに別のチームらしき魔族がのそのそとこちらにやってきた。

 陽子はかつて、サンゼンを見たあの時のような衝撃を受ける。……言葉にできない形容をしている。しいて言うならば、ぱっちりした目をした太ったウサギのような不思議生物が、これまた同じぐらい珍妙な武器を担いで、話しかけてきたからだ。

選手入場のときに知っていた。彼はチーム野ばらのリーダーだ。


「やあ、アイリスリーダーのピュアリリスのヨーコってキミだろ?」


 サキュバスは知っていたが今度は聞きなれない種族に余計に首をかしげる。

 昨日の号外だといって見せられたそこにはあの時の変態記者が撮った赤面した表情の陽子が新聞の一面に収まっていた。その時の事を思い出しまた、顔を紅くする。


「噂通りなんだな。もう夢魔では御伽噺でもみないような、清廉潔白の清楚の化身だなんて書いてるから嘘くさいなと思ったんだけどな」


 余計に何がいいたいのかわからなかった。清廉潔白?清楚?一体どういうことなのか。

 もう一度、新聞を見てみるとこう書いてあった。


『ヒト率いる美少女サキュバスは清廉潔白、花も恥じらう清楚の化身! 初心夢魔(ピュアリリス)ここにあり!』


 軽い頭痛が陽子を襲った。サキュバスだということにしていたのが逆に大ごとにしてしまっていたようだ。


「……とまあ、オイラがしに来たのは君をからかいに来たんじゃない。オイラ悔しいんだ。本当ならオイラがスイッチを押して、この紙面を飾るのはオイラだったはずなのに……」


「こんなことになるなら譲りたかったなあ……」 


 そんな陽子の言葉をやんわり断る謎の魔物。そして、真の英雄は自分の手で栄光をもぎ取ってこそだからねと胸を張って答える。

 そういえば自己紹介をしていなかった事に気づいた陽子は、軽く自己紹介をする。もちろん人間であることは隠して。

それを聞いて彼の様子が急変する。


「ク、クックック…右手に封じられた悪魔が疼く……オイラの名は、タロ・デ・リシャス……名を知ってしまったな? これでわが手の悪魔の支配下だ……」


 反応に困って硬直する。

 それを見て次第に焦り始めたのか、タロは訂正をする。


「まった、ちょっとまった! ジョークだよジョーク! ちょっとした……ほら、悪魔を飼いならしているってかっこいいじゃん? だからさ……ちょっとやってみたんだよ!」


 そういえば、学校の自分のクラスにそんな男の子もいたなあって苦笑いをする。


「でもオイラに力があるのは本当なんだ! 神様から『異能』を与えられたからね!」


 異能……そう、ローゼスの植物を操るような能力のような才能がないと扱えない不思議な力の事だ。私のところにもいるんだ、異能持ってる人っていうとびっくりしたような顔をする。


「な、なんてことだ! 選ばれしものが二人もいるなんて! これでは終末戦争(ラグナロク)が起きてしまう……わかったよ。その優しい目、逆に辛いから普通に話すよ……」


 そう言ってはあ、とため息をついて俺以外にもいるなんてなあとぼやく。


「そういえば、どんな異能なの?」


「ふふ、よく聞いてくれた! オイラは全武器網羅者(ウェポンマスター)と名付けているけど、これは『どんな武具でも使いこなすことができる異能』なんだ」


「わあ……! どんな武器も使えるってかっこいいと思うな……その担いでいるのも?」


 そういって指さしたのは、彼が担いでいる珍妙な武器だ。鉄アレイ状とでもいえばいいのだろうか、棒の両端に鉄球がついた長物だ。


「これはオイラの自信作、双陽棍(ドーンハルバード)だ。そうだ、どうやって使うかはオイラたちの試合を見ててくれよ、きっと面白いからさ!」


 ゴングが鳴る音。丁度戦いが終わったようだ。


「野ばらチーム、赤門前で待機をお願いします」


「おっと、時間みたいだな。いってくる」


 ぼてぼてと立ち去るタロに続いて控室を出る彼の仲間らしき魔族たち。


「ヨーコ。誰と話をしてたんだ?」


「チーム野ばらのひと……せっかくだから気分転換に試合を見学しに見に行かない? 私たちの試合は休憩を挟んだ後だから、結構時間はあるから……」


 ここでどうするか考え続けても、答えが出ない気がしていたから刺激を受けるために見に行くのもいいかと一同は提案に乗った。

 試合はすでに始まっており、両者にらみ合っているところだった


「さてと……参加者は観戦無料らしいわね。ここからならよく見えるかしら」



 タロ率いるチーム野ばらはチームスズランに対して、苦戦していた。

 チャームを受けて半壊している隙に高火力の魔法を浴びて、一人ダウンしてしまっていた。


「くっそ、だから女には気を付けろといったのに! まあ、オイラはこの盾のおかげで事なきを得たんだけど……やれやれ」


 蘇生は任せてと、植物系の魔物の少女に言われて頼んたぜとサムズアップするタロ。

 その瞬間に火炎球が襲い掛かるが、彼の手に持った盾に近づくと障壁にかき消されるようにしてかき消された。


「相手も俺には魔法が効かないと焦っているようだな。おいそろそろ、蘇生できたか?」


 しかし蘇生に集中しているようで返事は無い。妨害しようと剣を構えて迫る女魔族を相手に

 タロは少女を庇うようにの前に立ち、双陽棍で受け止める傍ら、片方の鉄球が棍から外れ、繋がっている鎖を握って相手の魔族に横から鉄球をぶつける。

 その不意の衝撃に転がされた相手に間髪入れずもう片方の鉄球のついた方をハンマーの如く振り下ろし、相手をダウンさせた。


「よっし、いっちょあがり! 蘇生終わったのか! チャーム飛ばしたのは、オイラがダウンさせたからもう大丈夫だ!」


 彼の活躍によりチームの勢いは逆転し、そのままの勢いでチームスズランを倒してしまった。

 試合終了のゴングが鳴り響き、あたりに歓声が響き渡る。


「試合終了! 一時はチームスズランが押していましたが、リーダー同士のつばぜり合いからの流れ、見事な逆転劇でしたね!」


 試合を見終わった一同は再び控室に戻り、昼食をとる。

 今日の昼食はいろんな屋台で買った異文化あふれる様々な食事だった。


「案外いけるわね……ほらヨーコ。貴女にも分けてあげるわ」


「あ、ありがとうー」


「魔族領の飯は味が濃くてうめえな…! 腹持ちもいいみてえだし!」


 そんなこんなで昼食を堪能して、一息つく一同。そこにタロがお茶を飲みながら意気揚々とやってくる。


「こんにちは、タロ。何を飲んでいるの?」


「ヌポ茶だよ。故郷の名産でね。 オイラの活躍みたか?」


 その言葉に頷く陽子。周りの三人はいつの間に仲良くなっていたんだろうと思いながらタロの行動を注視していた。


「この調子で勝ち進んで……そうだな。ヨーコ! お前も勝ち上がれ! そして、決勝で会おう! その時に勝つのはオイラだ!」


「……うん、そうだね。 実はね……」


「ちょっと、仮にもライバルよ。事情を話してもいいの?」


「ああいわなくてもわかってる。エリクの事だろう? オイラの初戦の相手じゃなくてよかったよ。でも、この魔喰壁(スペルブレイカー)のテストができなくて残念だ……」


 それを聞いて興味を抱く一同。特にサンゼンはがっつくような反応を見せた。


「ま、まあね。ブレスってのは瞬間的な破壊力というよりは持続した攻撃だから、観客席を守っている障壁を貼れば、受けきることができるはずなんだ」


「そうなんだ……ねえ、アカリさんの盾ってどういう仕組みで攻撃を防いでいるの?」


「はい、マスター。エネルギー展開型といって内蔵エネルギーで盾を障壁を展開し……」


「それは本当か!? ふ、ふふ……この天才のオイラなら古代イーリスと同じ発想だって思い浮かぶんだ……」


 そう言って一人恍惚とするタロだったが、はっと我に返る。


「それだったらちょっと弄れば出力強化できるんじゃないかな? ちょっと見せてくれよこう見えてもオイラ、鍛冶屋の息子で異能抜きでも武具には詳しいんだ」


 アカリはこれがその盾ですといってタロに手渡す。

 興味深そうにその盾を見ていたが、何かに気づいたのか分解改造をいきなり始める。


「お、おい……それ大丈夫なのか……? 壊すつもりじゃねえだろうな?」


「壊すわけないじゃないか。ヨーコに勝ち上がってもらわなきゃ、決勝で打倒せないからな。……よしできた。オートマトンの回路に干渉するようにしてみた。」


「干渉する……怪力モジュールとかもその類よね? どうなるのかしら?」


「障壁のエネルギーが切れても、オートマトン自身のエネルギーを使って障壁を維持できるようになる。 グリップのところに仕掛けを付けたからそこを動かせば回路干渉されてエネルギーがシールドに回るはずはずだよ」


「わあ、すごいなあ……ねえ、アカリさんちょっと試してみようよ!」


「ハイ、ではサンゼン様。シールドのエネルギーが切れるまで殴ってもらっていいですか?」


そう言って、構えるアカリの盾をサンゼンは殴打する。

限界が来てシールドが弱まったところに仕掛けを動かすと再び、シールドが展開される


「おお、こいつはすげえや。ありがとな小僧」


「小僧とはなんだ小僧とは! オイラは全武器網羅者のタロだぞ!」


「……へへっ、じゃあ決勝で会おうじゃねえか。お前も負けるなよ」


「負けるものか! そっちも決勝まで上がって来いよ!」


 そういって自分のチームの元へと帰っていくタロを見送ってしばらくすると大会運営が訪れて陽子達を呼びに来た。


「まもなく第三試合が始まります。チームアイリスは準備を始めて、赤門の前までおこしください」


 ついに戦いが始まるのだ。一同は緊張した面持ちで赤門へと向かうのであった。

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