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黒の聖女の冒険譚~思い出をアルバムに収めて~  作者: ぬけ助
第6章 奏でられるレクイエム
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第43話 戦いの予感

 そう決めてから露店通りの店を見て回る一同。

 サンゼンがいうにはやっぱり四人揃ってる……というより誤認されている陽子がいるときの方が周囲の気が落ち着いている気がすると話す。

 人に近い魔族もいるのに、本当に人にも扱えそうな道具が少ないねと言いながらも、薬品などは人の街で使っているようなものに近いようで闘技大会に向けてそう言った道具をそろえていった。

 二人ずつに分かれて、サンゼンと見て回っていた時、ガラクタ屋と思われる男に声を掛けられる。


「そこの綺麗な夢魔のお嬢さん、イーリス文明ってのには興味はねえか? ここにいっぱいあるぜ」


 そう言ってみてみれば、何に使うかわからないものばかり。かつてスザンナがイーリスセラミックと名付けた白いレンガの欠片のようなものもあった。


「おーすげえじゃねえか。なんかよくわからんがいろいろあるな」


「へへ、凄いだろ。まあ研究機関に価値がありそうなものは大抵売り払った後だから在庫処分のようなものなんだけどな」


 自分には有用なものかどうかわからずどうしようかと考えていたが、そこに袋を提げたアカリたちがやってくる


「マスター? 何を見ているのですカ……? イーリスの遺物ですか?」


 そう言って考え込んだ後センサーを稼働させて並べられたがらくたを調べ始める。


「こりゃ……おったまげた。嬢さん、フタバ嬢の知り合いだったりするのかい? オートマトン持っているなんてな」


 それを聞いて、サーチを続けながらも私と同じオートマトンがいるんですかと問いかける。

陽子の方はフタバさんを知ってるのと驚く。


「まあまあ嬢さん落ち着け。質問が二つあっても俺の口は一つだ。まずはオートマトンの方からだなああ、いるぜ……まあほとんどが機能停止したもんだし、動いている奴の大半も研究所で解析中で自由に動けているやつはほぼいないと思うがな」


「フム、ワタシのルーツを探るのに有意義と判断。是非とも見てみたいものデスが……」


「あんたらじゃ無理だ。イーリスの調査は魔王国機密でもあるしな。ヒトと通じているようなのは入れてもらえないな。もっとも、魔王様が認めるなら構わないと思うがな。丁度闘技大会の予選やってるし行ってみたらどうだ?」


「まあさすがにそうよね……それで、フタバっていうのは何者なのかしら?」


 そうだなといって、話を続ける。

 今まで幾度となく出会ったフタバは、クアトラーダムの中の街『パスト・イーリス』を治める貴族の令嬢らしい。

 少々変わり者だが、あいつの描く絵は素晴らしくてなと懐かしむように目を閉じる。

 その時、ピピピとセンサーが反応する。アカリはがらくたの山から白いリングを見つけ出した


「これは……おそらく、再生モジュールデスね。エネルギーを用いて自己修復を促すといった機能だと思われます」


 それを聞いておお、そんな使い方だったのかと驚く店主。

 いやあ、こうやって店に出してみるものだなと心なしか嬉しそうだ。


「タンクの自己修復か……ヨーコの負担がだいぶ減るから欲しいところだが……いくらだ?」


 それを聞いて、店主は陽子をじっと見て考え始める。

 フタバの知り合いなら安くするか、それともせっかくだからぼったくろうか。

 そう考えているうちに男は無意識に胸元へと視線を吸い寄せられていた。

 露出の全くない胸元なのにその大きさだけで色気を放っている。そんな視線に気づいてか、胸元を隠す陽子を見て他の三人の視線が冷たくなる。

 正直この空気でぼったくろうとは思わなかった。そんなことされたらボコボコにされそうだ。

 男は保身のためにこういった。


「……わりい。詫びにタダで持っていけ」


 それを聞いてありがとうと微笑む陽子を見て、また眼福だと思いながら見送った。

 それにしてもあんな『御清楚な夢魔』がまだいたとはなと男は独り言を呟いた。


「いいものが買えたな。いやもらったというべきか? ともかくだ。あのおっさんもああいってたし、闘技場に向かおうと思うんだ」


 干し肉を買い食いしながら、街を歩く一同。

 陽子はこうやって歩いていると勇者になる前の事を思い出して、ちょっと懐かしいなと言葉にする。

 それを聞いて、サンゼンはそういえば勇者になる前の話って聞いたことなかったな。どんな暮らしをしていたんだ?と話を切り出す。


「うーん、聞いてもあまり面白くないと思うよ? 変わったことはないと思うし……でも写真はいっぱい撮ってもらった……だからかな。私も写真を撮りたくなったのは」


 そういって、夜に照らし出された魔王城を写真に収める。


「なるほどね……家族とは仲が良かったの?」


「うん、仲良し。このつる薔薇の刺繍もお母さんにしてもらったんだ。お父さんにはカメラのフィルムをもらったよ」


 つい反射的にローゼスさんはといおうとして急いで口をふさぐ。

 ローゼスの過去は何度か聞いた限り、ルインメーカーに両親を、故郷を壊された。

 心の傷を抉るようなことはしたくなかった。


「……気を使わなくてもいいのに。……フラウディアの虐殺って知っている?」


 その言葉を聞いて表情を曇らせた。

 歴史の授業で知った、凄惨な殺害事件。数百人規模の村で、連絡が途絶えたことに違和感を持った調査隊が見たのは壊滅したフラウディア。生存者無しと言われ、世界最大規模の殺害事件として知られていると、学んだ。


「……知っているようね。私はその唯一の生き残り。廃墟で呆然とした小さな私を姉様が拾ってくれてね……」


 それからの話は陽子の心の曇りを払うのに十分だった。

 妖精の里で育てられ、大きくなったらシルファと共に街であの喫茶店を切り盛りしたのだという。


「妖精さんに育てられたって……なんだかとても神秘的だね」


「子供ながらに大変だったわよ? 皆気まぐれだから姉様がいないとどうなってたやら……姉様も病気で飛べないからその分勉強を頑張ったって言ってたわ……」


「大変なのはお互い様ってことだな。お、着いたぞ。ここが闘技場だ。でけえな……」


 一同はワクワクしながら闘技場へと足を踏み入れた。



 闘技場の中は熱気に満ちていた。多種多様な種族が皆、闘技大会が始まるのを心待ちにしていた

 受付には人だかりができておりそれらすべてがおそらく闘技大会の参加者であった。


「わぁ……凄い熱気……!」


「はぐれないようにね。ヨーコ」


 しばらくして陽子達の番が訪れる。

 三つ目の女性がその目でじっと陽子達を見つめていた。


「ヒト・スティックメン・ゴーレム。……サキュバス。受領しましたリーダーは前へ」


 誰がいく?と目配せしていたら、人だかりに押されて陽子が前に出てしまう。


「受領しました。名前は? ユメミヤ・ヨーコ。了解。」


「ではユメミヤ様、撮影室へ。持参の写真がある場合もそこで受け取ります。あなたのチーム名はアイリスです」


 そうやって、簡素に案内されてそそくさと人混みから離れる。


(あのデカ乳……本当はヒトだけど、サキュバスってことにしておかないと、他のサキュバスから嫌がらせとか受けそうだしこれでよし!)


(にしても……実入りいいからってやるんじゃなかった。人が多いってレベルじゃないわよ!)


 そんな本音を押し殺しつつも受付は次のチームの受付を行った。

 一方の陽子達はというと


「チームアイリスのリーダー、写真の用意はある?」


「えっと……そういえば、こっちに来てから自分を撮ってなかったです……」


「それなら取ってあげる。はいはいこっち向いてー!」


 何回か撮影されて、三枚撮られたがどれがいいといわれた

 唯一ちゃんと撮れていた困り気味の笑顔を選ぶといい出来よと言われて、今度は予選控室に向かうように言われた。

 外で仲間と合流して共に控室へと向かう


「写真はドウデシタか?」


「うん……大丈夫だった。それにしてもあっち行ったりこっちいったりで大変だね…」


「まあ、次でそれも終わりよ。さてとここだな」


 そう言って扉を開くと十人十色といわんばかりの様々なライバルたちがひしめいていた。


「うわ、凄い数ね……軽く百人ぐらいはいるんじゃない?」


「空いている空間を発見シマシタ。こっちデス」


 アカリに先導されて角の方に集まって、ようやく腰を落ち着け、自分達も予選に備える。

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