第21話 荒波の予感
今までの経緯を話をする三人。ランピィがうーむとうなりながら返事をする。
「お客人方、お疲れ様ですぞ。そんな巨大なターマイト、一度目にしてみたかったですな」
大変だったからもう一度会うのは勘弁ねとローゼスは苦笑いをする。
「私からもお疲れ様。ヨーコ、あなたがそのティアラに気づいてくれてよかった」
「『怖さ』をなんとなく感じ取ったのかな……?次はどこにいくの?」
それを聞いて思慮にふけるメリーに心配そうに陽子は声をかける。
「それがわからない。対象がぼやけていてはっきりとした場所がつかめない」
その言葉に、どうやって先に進めばいいのと陽子は悩む。
すると、それを見たサンゼンがフタバの事について言及する。
「嬢ちゃんの行く先で二回も出会ったわけだろう? まだ偶然かもしれないが、あの魔族を追いかける価値はあると思う。フタバの行く先は覚えているか?」
確か、海を見たいっていってたよねという陽子に頷く二人。
「海にまつわる場所で大きな場所はサンモニカ港ね。……エタンセル大聖堂もあるから陽子も気に入るんじゃないかしら」
あることを思い出してサンゼンは止める。
「ちょっと待った。じっちゃんは馬を休ませるって言っていたはずだから、すぐに出発となると歩きになるぞ。旅慣れしてそうなローゼスはともかく、嬢ちゃんは大丈夫か?」
「うん……平気。栄華都市まで二人で歩いてきたから」
「結構足腰強いんだな……そういや嬢ちゃん……いくつだ?」
「私? 今年で14歳……どうしたの二人とも?」
陽子の発言に驚いたような二人に陽子は首をかしげる。
なんだか少し負けた気分……と俯くローゼスに対して、想像以上に嬢ちゃんだったなと感想を述べるサンゼン。さらにサンゼンは続けていやあ、最近のヒトってと続けようとしたところにぺしっとローゼスに蔓ではたかれる。
「いてっ、なにすんでい!」
「はしたないわよサンゼン。何を言おうとしたかお見通しなんだから」
うぉっほんと、ランピィのわざとらしい咳払いで三人ともハッとする。
三人を見てメリーは言葉を紡ぐ。
「とりあえず、今日は休んで明日からまた旅立ち。こちらも後方支援にはなるけど、続けて協力する」
「とまあ、つまりは『お疲れ様。今日はもうお休み』ということですな」
それじゃあ、おやすみなさいと部屋に戻る陽子。陽子が部屋に入ってもさらに進まないといけないほど広い館をローゼスとサンゼン、二人で歩く。
わずかに気まずい空気が流れていたが、ローゼスが口を開く。
「……さっきはごめん」
いいって、気にすんなとからからと笑うサンゼンに言葉を続ける。
「私ったら馬鹿ね……子供だと知らずにいろいろ無茶をさせたり頼ったりして……」
「おいおいそんなに落ち込むなって。まあ子供だったのには驚いたけどよ……」
「カミサマとやらは、そんな子供に危険な旅をさせているのよ。そんな理不尽許せるの?」
あなたもそう思うよねとローゼスは詰め寄る。
「おいおい落ち着けって。確かにあのメリーっていう代理、何か隠しているのは確かだけどさ。俺は信じてもいいんじゃないかと思っているぞ。そのカミサマとやらを」
ローゼスは少々納得いかないように再び歩を進める。
「それに、決めてるんだろ。嬢ちゃんに何かあったら守るって」
「……ええ。サンゼン、あなたも協力してくれる?」
当然、とニッと笑って自身の部屋に入っていく。
「ありがとう、サンゼン。おやすみなさい」
彼女もまた、眠りにつくために部屋に入った。
そんな彼女をメリーは見届け、音もなく陽子の部屋に忍び込む。すうすうと寝息を立てている陽子を起こさないように懐中時計を手に取って窓から部屋を出る。
「……あともう少し」
そう言って、メリーは夜の闇へと消えた。