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黒の聖女の冒険譚~思い出をアルバムに収めて~  作者: ぬけ助
第3章 過ぎ去りし時から愛を込めて
19/83

第18話 突入、ラサイト金山

 道具屋から出てきた三人は早速金山へと向かう


「どこまで効くかわからないけど、解毒薬もできるだけ買ったわ……足りるといいんだけど」


「それは二人で使うといい。俺は唾つけときゃなおる」


 そう言って、サンゼンは金山へと向かう。

 急いでついていく二人だったが異様な臭いがし始める。のどがピリピリと焼ける感覚……大分薄まっているが、毒ガスのようだ。


「ここやっぱくせえな……嬢ちゃん、今度は頼むよ。表層でもこれだから中層だともっときついと思うからよ」


 今度こそはと意気込んで、黒に命じた。黒よ、ガスを削れと。

 粒子となってくろに吸い込まれていくが終わる気配がしない。それだけガスが充満していたということだろう。

 表層では何事もなく閉鎖された中層手前に来たが、見た目から毒々しい煙が漏れ出ているのが見える。


「普段どうやって採掘してるのよ……」


臭くないと強く自己暗示しながらやっているんだと当然のように言うサンゼンに呆れてしまうローゼス。


「精神論みたいな理屈ね……本当に大丈夫なの?」


 それが結構大丈夫なんだよといいながら、鍵のかかった扉を開ける。

 解放された煙が悉くくろへと吸い込まれていく。


「ここからが本番ね……ヨーコ、大丈夫?」


 私の集中、そんなに長く持たないかもと聞いて心配そうにするローゼス。

 駆け抜けて、深層までたどり着けばいいだけだと安心させるように発言してサンゼンは先導する。

 それをローゼスとヨーコが並んでついていく形で中層へと踏み入れた。


「暗いわね……とりあえずランタンで照らしながら進むわよ……ッ!」


 ランタンの光と共にキー、キーと何かの鳴き声がする。

 そしてその音がだんだん近づいてくる。


「ターマイトよ! サンゼン! 前衛を頼んだわよ!」


 任せろと前方に駆け出し。このブレイクを食らえと叫びながら、拳でターマイトを蹴散らしていく。

 殴る。蹴る。踏みつぶす。その鋼の肉体から繰り出されるそれは装甲をたやすく貫き、押し寄せる群れに次々と風穴を開けていく。


「どうだ見たか! 急いで、深層まで降りるぞ」


 そう言って駆け出すサンゼンの死角からターマイトが飛び掛かる。

 しかし、飛び掛かったときにはすでにローゼスの矢で貫かれて息絶えていた。

 サンゼンはありがとうと背を向けたまま手を上げて礼を言う。


***


 深層までくるとガスは届いておらず、澄んだ空気が広がっていた。ちょっと休憩も必要だろうとその場に座る。

 陽子はこれも後で見返すと綺麗だろうなと思い、水晶に照らされた洞窟を一枚の写真に収めて、気になっていたことをサンゼンに話す。


「えっとね、気になったんだけど、一挙一動に技名がついてるとやりにくくないかな……? それともそれは魔法だったりするの?」


 その言葉を聞いてどう答えたものかとサンゼンは水晶が輝く天井を見上げる。


「俺の経験からなんだけどな、名前を付けて気合を込めたほうが強いんだよ。これは精神論とかじゃなくて、本当にそうなんだ。俺には使えないけど、魔法の名前も気合を込める意味があるんじゃないかって思うんだ」


 そういえば、音紡ぎもイメージを膨らませるほど強くなるから、私もちょっとだけ真似してみようかな……と陽子は音紡ぎの名前を考え始める。

 風の刃がたくさん出るあの音紡ぎは音紡ぎ「風牙」かなとか思っていたら、突如声が響き渡る。

 それを聞いて飛び上がったローゼスは陽子に抱き着く。


「大丈夫だよローゼス……私たちがいるから……」


 少し弱弱しく声を漏らしてしばらくの間抱き着いたままでいる彼女を優しく撫でて落ち着かせる。


「さて……休憩もそろそろ終えてそろそろダイナマイトを探しに行かないとな。ローゼス、立てるか?」


 頷いてよろめきながら立ち上がる。いつも以上に周囲に警戒しながら皆で奥へと進んでいく。

 あたりは静かで今は水の音と三人の足音しかしない。ランタンの明かりを受けて輝く水晶が、いく先を照らしていた。

 視界が広がり、水晶があたりを照らす広場に出た。ここが岩盤ある場所だろう。その証拠に広場にはダイナマイトが散乱している。

 そして、箱の前でごそごそやっている人魂が見える。

 それを見て震える手で指さして、震える声でローゼスはこういう。


「こ……この調子だとあの『何か』を何とかしないとダイナマイト取れなさそうにないね……」


 それはダイナマイトを取り出して岩盤にめがけて投げ続ける。しかし火がついてないそれはどれもむなしく地面に転がる。


「ありゃ面倒な奴だ……術精じゅつせいがこんなところにいるなんて、聞いてないぞ。しかも火だ。もしあのダイナマイトに火がついたりして大爆発でも起こされたら金山が崩れちまうかもしれないな。何とかしたいが、出来るだけ相手したくないなアレとは」


 術精。図鑑で見ただけだが陽子も知っている。スペルスピリットとも呼ばれるそれは魔法が具現化した、精霊に近い存在で、魔法を使いこなす強敵だ。


「もし爆発したら大変だよ! どうにかできないかな……」


 そう言って足元に転がってきたダイナマイトを拾って帰るように促すローゼスをよそに、

陽子は考える。炎なら……


「そうだ……火の勢いを弱くしたら倒しやすくなるかな? 魔法を使われて爆発もしなくなりそうだし」


「なるほどな……! ぶったおすのは俺に任せろ! 多少熱くても何とかなるさ!」


 ありがとうとサンゼンに礼をして、ダイナマイトを投げている術精めがけてくろに命じる。黒よ、勢いを削れと。

粒子が舞い、くろへと吸い込まれていく。その後、サンゼンが前に飛び出す。


「ガスのときもそうだが、ほんとすごいな嬢ちゃんのその力。さて、俺の仕事をするかな!おらっ、『ノーザンライト』!」


 右ストレートでスペルスピリットを一撃で霧散させる。


「……種が明かされたら、怖くもなんともない奴だったわね……戻りましょうか」


「さてと、ダイナマイトも見つかったことだしちょっとここら辺を片付けてから帰るか」

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