第15話 束の間の休息
関所が解放されるまでの間、しばしの間暇ができた二人は陽子の提案で、街の観光をすることに決めた。掃除の手伝いのような簡単な依頼を受けてそのお金で食事をしたり、街の散策をしたりして、その過程でアルバムに収められた写真も増えた。
しかし、そんな時間もずっと続くわけではなく……ある日、ローゼスは依頼帰りのギルドでの騒いでいるのを目にした。
「姉御! ようやく関所が解放されたってんでみんなでお祝いしてんですよ! 姉御とあの黒髪の子が解決に貢献したんだってな! あれ、姉御あまり嬉しくなさそうですね……」
「いいえ、いいのよこれで。あの子にも伝えてこなきゃね……」
そういってそそくさと報酬と共にお祝いムードのギルドを一人後にする。また過酷な旅の続きをしなければならないことをいうのは酷だと思うが、あの子は勇者だから……と神様に小さく恨み言を漏らす。
拠点では中庭で陽子がアルバムを見ていた。
「ヨーコ……関所、開いたんだって」
そっかと、少し残念そうにしながら。アルバムを閉じる。明日からまた冒険の続きに備えて寝ようとする陽子を引き留めて言葉を続ける。
「ねえ、ヨーコは本当にそれでいいの? 勇者なんてやめて故郷に帰ったほうがきっと幸せだと思うの……使命を背負って旅をするなんてあなたには向いていないわ……だって街の観光するあなた、とても楽しそうだったもの」
そうかもしれないと、言葉を返す陽子。しかし同時にこう返す
「でも私ね、あの『怖さ』を知ってしまったから。あの怖さで苦しむ人がいるなんて思うと、今は日常に戻れないかなって。きっとこれが勇者になることなんだと思う……おやすみなさい、ローゼスさん」
そんな陽子の『強さ』に、優しいのねとしか言えない自分が恥ずかしかった。
次の日、メリーの元に向かう二人。メリーたちは二人が観光している間も次にするべきことを調べてくれていたようだ。
「旅の再開。次に向かうべきは世界樹。あそこで何かが起ころうとしている。それを阻止するのが貴女の役目。」
「世界樹って言ったら、サフランシの先にあるんだよね? 関所が閉じている間に先回りされたのかな……? 急がないと! いこう、ローゼスさん!」
あまり先走っちゃだめよとたしなめながらついていくローゼス。
共に鏡にふれて喫茶店へと向かう。
「関所が開かれたということは、ついに旅の再開なんですね。応援してますよ」
「また、しばらく会えなくなるかもしれないわね姉様……体には気を付けて」
大丈夫ですよ!いつでも帰ってきていいですからねとシルファは微笑んで見送る。