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「へ……?」
「だから、お泊まりしますって言えばって。婚約者なんでしょ。そういう関係になっては駄目ってことないんでしょう?」
「そ、それはそうだけど……」
考えもしなかったことを言われ、動揺した。
泊まり? つまりはアステール様と男女の関係になれと言われ、私は真っ赤になって首を横に振った。
「無理、無理よ、そんなの! 大体、そんなものがプレゼントになるわけないでしょう!」
「え、処女を貰って下さいって十分プレゼントになると思うけど。乙女ゲーとかでも鉄板よ」
「そんな鉄板知らないわよ。え……もしかして、このゲームってそういう展開があったりするの?」
R18展開がある乙女ゲーはそれなりにあった。
だからこのゲームにもそんな展開があるのではと不安に思ったのだが、それはソラリスが否定した。
「安心して。R18ゲームではなかったから、そんな展開はなかったわ。ただ、そうね……そういう雰囲気になって、暗転。つまりは朝チュンくらいはあったかしら」
「朝チュン……」
つまり、事細かに描かれてはいないが、そういう行為があったと匂わせていたと知り、ショックを受けた。
だってゲームでは『次の日――』で飛ばせるかもしれないが、ここは現実なのだ。
そういう展開になれば、がっつり行為はあるものと思った方が良い。
「嘘でしょ……」
「何、ショック受けてるのよ。別に良いじゃない。好き合っているんだし。んー、でもようやく告白できたってだけのスピカにはまだ早いかな」
「早すぎると思うわ!!」
無理、という気持ちを込めて食い気味に言うと、ソラリスは笑った。
「はいはい。じゃあ、この案はナシということで。でも実際の話、アステール殿下は、スピカがくれたものならなんでも喜ぶと思うけど? それこそ、いつも贈っているとかいうハンカチ? でも笑顔でありがとうって言ってくれるんじゃない?」
「だから、嫌なのよ……」
その姿が目に浮かぶようだと思いながら私は言った。
「いつもと一緒じゃ嫌なの。私がアステール様を特別だと思っているって分かることをしてあげたい。だって、今年は恋人として参加するのよ? そんな風に考えては駄目かしら」
「駄目ではないし、良いと思う。でも、そうなると難しいよね」
「ええ……」
「第一王子のアステール殿下なら、欲しいものは全部持っているだろうし……」
ふたりで考え込む。
やがて、ソラリスが何か思いついたように言った。
「そうだ。買い物にでも誘えば?」
「買い物?」
「そう。アステール殿下の欲しいものを一緒に買いにいくの。一緒にってそれだけで思い出になるものじゃない? 恋人同士ならね」
「……一緒に買い物……」
それは確かにいいかもしれない。
ふたりで町を歩き、一緒にプレゼントを見て回る。一緒にいるのなら選んでいる時間も楽しめるし、悪くない……というか。
「つまり、デートに誘えば良いのかしら」
「スピカ?」
なるほどと頷いた私に、ソラリスが説明を求めるような顔をしてくる。そんな彼女に言った。
「考えてみれば、私って今までまともなデートをしたことがないの。もちろんそれは私が馬鹿な勘違いをしていたから、なんだけど……」
今までにアステール様としたことを思い出す。
リュカ関連で色々出掛けたことはあるが、きちんとデートとなると覚えがなかった。
昔、アステール様に何度かデートに誘われた記憶はあるが……うん、あの時の私はどうしてアステール様がデートに誘ってくれるのか分からず、それを素直に伝えたところ、結局話は流れたのだった。
今思うと、よくアステール様に見捨てられなかったなと思う酷さである。
「だから今度は私から誘ってみようと思って」
「ふうん? どんな風に?」
「誕生日プレゼントを一緒に買いに行きたいので、デートに行きませんかって言おうと思うんだけど、どうかしら?」
「うん、良いんじゃない。でも、それならハンカチも持っていったらどう? その日に手ぶらというのも格好がつかないでしょう?」
「そうね……!」
そこまで考えていなかったが確かにソラリスの言う通りだ。
誕生日パーティーに手ぶらで行くとか、考えられない。
的確なソラリスの助言に感謝していると、彼女が嫌そうな顔をした。
「ソラリス?」
「え、あ、ううん。ちょっとね。誕生日パーティーと聞いて嫌なことを思い出しただけ」
「嫌なこと? 何?」
軽い気持ちで尋ねる。彼女はリュカと遊びながら面倒そうに言った。
「私も、そのパーティーには呼ばれてるの。今の私は貴族なんだもの。それは当然よね」
「え、ええ。貴族には全員招待状が送られると聞いているわ」
「そのパーティーの招待状が来た時に、何故かグウェインがエスコートするって言い出して……」
「え、ソラリス。ティーダ先生と一緒に来るの?」
「そうなのよ!!」




