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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
6章 別離のプロポーズ

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91.列車上の決闘 -開通式典-


「久しぶりに全員纏まった任務じゃない?」

「遊びじゃないんだからはしゃぐのも程々にね。」

「「「はーい。」」」



 オリヴィアの言葉に後部座席に座ったルイホァとケイ、エルナが声を揃える。オリヴィアと同じ列に座るヒロタダとシュウゴがおり、運転席にはハーマン、助手席にはリーンハルトが座っていた。

 今、8人はターミナル:カイロに入り、そこから自動車でメルサマトルーへ向かっていた。今回の任務はヤンから呼び出されたが故の応援だった。

 ハーマンとヒロタダ、リーンハルトの交代で観光地であるそこに向かうのには理由があった。



「でもエルナがそう言うのも少しだけ理解はできるな。ラバービーチとか綺麗どころが揃ってるらしいもんな。」

「そもそもエリア:エジプトは観光所も多いですからね。歴史的建ぞ「分かってるじゃない、ヒロタダ、シュウゴ。」


 後ろから急に手がニュッと出てきてシュウゴの肩を叩く。エルナがちょうど遮った言葉は恐らくエルナの全く興味のないところであったであろう、彼は少しばかり不満そうな顔をした。


「ま、ユーマニティ戦争の影響もあって復興までは時間が掛かったが、今回やっとワープホールステーションの開設、エリア:エジプトに渡るリニアモーターカーの開通がされた。これからは気軽に行けるさ。」

「そうね! 今回はリゾート地に泊まれるし、あたしは満足だわ!」


 年相応に喜ぶ彼女の反応にリーンハルトは笑う。

 ルイホァは窓側に座るケイの上に寄りかかりながら2人は相変わらず外を見ている。



「お前らそろそろ着くからな。」

「「「はーい。」」」


 ハーマンの言葉に皆返事を返す。











「待ってたわよ〜、リーンハルト!」

「ああ、遅くなって悪かったな。」

「大丈夫よん。ウチの班が出れないからって無理してきてもらったんだから。みんなもありがとね、あとでサービスしちゃうわよ。」


「高級ファンデで。」

「あたしは化粧水!」

「バイキング!」

「がめついわねアンタら。」


 容赦のない女性陣の要求にヤンは呆れたように笑った。

 ヤンの案内の元、リーンハルト達は今回の任務の概要を聞く流れとなり、8人は彼について歩く。



「すげぇ!」

「……凄いね。」



 駅構内に停まる最新のリニアモーターカーにケイとシュウゴが目を輝かせる。


「やっぱり男の子ねぇ?」

「好きなものとかは真逆なのにな。」


 ハーマンもヤンも2人を見て口元を緩めた。


「じゃあ2人にさらにテンションの上がるものを見せてあげるわ。これにはリーンハルトやヒロタダ、ハーマンもでしょう?」

「お、なんだなんだ?」


 男性陣はヤンが指した車庫の方に顔を出す。

 するとそこには旧式の蒸気機関車フォルムのリニアモーターカーが並んでいた。

 これには3人もおおっ、と声をあげた。



「今回のあなた達への任務はこの蒸気機関車型リニアモーターカーに乗る元カイロ支部長の護衛よ。」



 ヤンは説明を始めた。

 今回はエリア全域を繋げる大仕事だ。最新のリニアモーターカーにエリア長とカイロ支部長が乗り、メルサマトルーからアスワンまで相乗りする。そこを警備するのはカイロ支部に属する特務隊員達、周辺大陸の特務隊員が務めるそうだ。

 そして、リーンハルト班が担当するのは政治的重役と元支部長が乗り込む蒸気機関車型リニアモーターカーの警備だ。


 速さはないものの、昔の雰囲気を楽しめるという短距離向きの観光用車両として今後は運用されるらしい。それを平和的象徴としてその面々が相して乗車しアピールするそうだ。

 区間はメルサマトルーからアレクサンドリアまでの2時間ほど。自動車であれば5時間近くかかるそうだ。

 他の支部の隊員も各区間を分担して乗車するらしい。



「そうだ、リーンハルトとケイ、ルイホァ。一応3人は能力が派手だから重々伝えておくけど間違ってもリニアモーターカーを傷つけちゃダメよ。アレクサンドリアに着いたら乗る面々を変えるんだから。」

「さすがにわかってるよー。」

「りょーかい。」

「気をつけます……。」

「よろしい。あと一応非常口の場所も伝えておくわね。」

「はい、車両間の連結器は外すと安全装置は起動しますか?」

「賢いが故にヤバいのがいるの忘れてたわー。」


 オリヴィアの質問にヤンが頭を抱える。しかし、ヒロタダの横でシュウゴが肩を震わせたあたり、彼も同じことを考えていたのだろう。ヒロタダは苦笑した。

 リニモに配備される人員、装置、機能、すべてを確認する。また、緊急時の避難経路や現地特務隊員との連携についても作戦を聞く。後ほど全体会議があるそうだが、もちろん事前に予習はしてきたが1日で叩き込まねばなるまい。


「シュウゴ、オリヴィア、オレはお前らの働きに期待している。」

「何ですか、藪から棒に。」

「任せなさいな。みんなも頑張って覚えてね。」


「ケイとエルナは避難経路だけとりあえず叩き込めばいいと思うよ。」

「ルイホァよ、さすがにオレももう少し頑張るわ。」

「あたしも……。」

「混乱するなよ。」



 ヤンの説明で重要な点に限り、ハーマンが噛み砕いて2人に説明していた。

 それから場所を移動して全体会議に参加する。

 全体会議では、セレモニーの一連の流れ、緊急時の作戦内容、施設設備など重々確認を行なった。

 そして、明日護衛する要人達への挨拶をしていく。

 リーンハルトやオリヴィアは一部顔見知りがいるようであったが他の面々は淡々と挨拶をしていくばかりだ。

 途中、法曹界の権威や研究者がおり、一部の者の目が輝くこともあったが。



「へぇ、俳優さんとか有名歌手も別の車両に乗るのね。」

「ああ、エルナはそっちの方が良かったよなぁ。」

「そりゃそうだけど今回は特務隊の仕事でしょ。あまり誘惑が多くても困るからいいのよ。リゾート地に泊まれるし十分。」


 エルナの言葉にリーンハルトは微笑むと柔らかく笑う。


「……それに歌手なら別にいつでも。」

「ん?」

「何でもないわよ。」


 決して怒っているわけではないがどこか不貞腐れたような様子のエルナにリーンハルトは首を傾げた。そこへ一通り挨拶を終えたらしいヤンとハーマン、ルイホァが合流した。



「あれ、他の奴らは?」

「各界の権威と話している。」

「本当有能な面々ね。」

「でも、アンタも社長と色々話してたじゃないか。オレからすれば大差ないがな。」

「そうかしら?」


 ヤンはふふ、と愉快そうに笑う。

 ルイホァはふとした疑問を口にする。


「ヤンは特務隊に入る前から会社にいたの?」

「そうよ。戦争の時は一時的に辞めてたけど、終戦後また働かないかって声をかけてくれてね。それからは兼務でやってるわ。」

「そうなんだ。」



 元ウルツ班の班員で兼務はヤンだけであるため、ルイホァは珍しいものを見るような関心を見せる。

 ヤンはその様子を見て、目元を和らげるとルイホァを優しく撫でた。


「……アンタらには言ってもいいかもしれないわね。」

「どうした?」


 ハーマンとルイホァ、エルナは視線を交えると不思議そうな表情を浮かべた。リーンハルトは彼が話そうとしている内容に想像がついたのか、僅かに目を伏せた。



「独り言と思ってくれていいんだけど。アタシが特務隊に入った理由はユーマニティ戦争の時に妻も子どもも亡くした、いわば復讐なのよ。」

「……アンタにも子どもがいたんだな。」

「ええ、生きていれば……ヴィリとかと同じ世代かしら?」


 彼は眩しそうに目を細めた。


「【加工】、なんて力普通に生きていれば戦争なんかにロクに使えない能力よ。でも、なんてことのない普通の人生を送っていたのに不条理に幸せを奪う、そんな存在である『Dirty』を許せなかったわ。

 だからアタシは命を賭して奴らを滅する。それだけが生きる理由だったのよ。」

「……だった?」

「ええ。」


 エルナの疑問にヤンは微笑んだ。

 彼女が抱いた違和感が正解だと言わんばかりに。



「アタシの教え子、まぁヴィリなんだけど。あの子が幸せに生きている様子を見て、まだ守りたいものが残されてることを実感したのよ。

 ……だからこそ、セイのことも引っかかるんだけどね。彼も一応アタシが育てた子だからね。」

「……この前の、」

「もうっ、アンタが謝ることじゃないわ!」



 体格の良いヤンから放たれた平手はしょげるリーンハルトの背に見事に当たり、彼は小さく呻いた。



「アタシは、もちろん奴らの殲滅が目標であることに変わりはないけど、若いアンタらが楽しく生活しているのを見守るのも楽しみなのよ。」


 だから結婚式の化粧は任せてね、とエルナとルイホァの頭を優しく撫でる。


「私は全然想像つかないよ。」

「あたしもよ。」



 皮肉めいた視線をリーンハルトに送るが彼は全く気づかないようだ。ハーマンは苦笑しながら続ける。


「……オレも『Dirty』殲滅には賛成だがな。」

「ハーマン?」


 リーンハルトの瞳が不安げに揺れる。

 ハーマンはそれを察したのか、彼の肩を叩く。


「お前らのせいでとてもじゃないが死ぬ覚悟なんてできなかったよ。昔のままだったら、ヤンと同じようになれたかもしれないがな。」

「……そうね、生きる覚悟っていうのは下手したら死ぬ覚悟よりも辛い選択なのかもしれないわ。ウルツさんのことをどうとか言うわけじゃないけど、それがリーンハルト班の繋がりなのね。」


 本当に良い班長じゃない、と小さく呟いた。


 時代のことや個人の背景もあるであろうが、ハーマンも家族に並ぶ親友を『Dirty』の人間に奪われたと聞いた。自分たちと同じになる要素は十分に揃っていた。しかし、彼は戦い抜き生きることを選択した。

 そんな風に導き合える仲間を集めたこと、それをヤンは評価せざるを得なかった。なぜなら、自身の班員が同じ立場であったら、命を賭して戦うことを勧めてしまうだろう、止めることはできなかったであろうことは容易に想像できるからだ。


 ハーマンの言葉を聞いたリーンハルトは、彼の言葉に頷くと嬉しそうに口元を緩めた。

 ハーマンもそれに満足したのか目元を和らげた。



「おっし、じゃあ込み入った話はこの辺にしましょ! 明日のためにいっぱい食べてゆっくり休んでバリバリ働くわよ!」

「自分から振っといて切り替え早いな。」

「ケチケチ言うんじゃないの! ほら班長、班員を集めてきなさい!」


 リーンハルトはちぇ、と唇を尖らせるとハーマンをぐいぐい引っ張りながら未だ話に夢中な班員達の回収に向かった。


「ヤン。」

「どしたのよ?」


 唐突にルイホァに話しかけられて首を傾げる。エルナとルイホァは含むようににまにまと笑うと彼を見上げた。


「少なくとも、あたし達が結婚するまでは生きてなきゃね?」

「残念だけど、結婚はだいぶ先になりそーだよ?」


「……面倒くさい子たち!」



 2人の言わんとすることに気づいた察しのいいヤンはぶは、と噴き出すと笑いながら2人の肩を抱いた。

 その言葉が彼にとって残酷であるも、間違いなく温かな感情を含むことに目頭が熱くなったのを誤魔化すように彼は顔を伏せた。

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