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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
5章 友との約束

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83.選択は君の中に -無能力サバイバル-

「どういうことですか!」

「……今回は私の油断が招いたことだ。しかしなぜお前らもいる? ヴィリが漏らしたのか?」

「僕は知りませんよ。」


 つーん、とヴィリは知らないふりをする。

 副支部長室に詰めかけているのはモニカとともに買い物に行ったエルナとドロシー、オリヴィアだ。

 そしてケイやカジェタノに話を聞いたリーンハルト、パウル、ヤン、目撃した2人だ。



「しかし、話に聞く限りだとモニカの相手はスギハラ家。特務隊の指導員間ではあまり良くない噂を聞きますよ。ヴィリ監査局長はご存知でしょう?」

「……あくまでも噂ですが。」

「ちょっと、アンタ知ってたの?」


 ヤンの糾弾に気まずそうにヴィリは目を逸らした。

 ゴーシが報告しろ、とカジェタノに促すと彼は話し始める。



「珍しい能力者を家に抱き込み、子をなす。その妻と子を売り、資金を手に入れエリアごとに存在する所謂政府に金を納める。そうして、現在の指導員への着任を有利に進めているとか。

 ただ事実として、身体能力は旧人類家系にしては高く、黒い噂もあくまでもやっかみや羨望ではないかとも言われていますが。」

「なるほどな。……噂の信憑性についてはどうだ?」

「グレーです。物的証拠がありません。」


 ゴーシは、少しばかり悩むと彼は愉快そうに笑う。


「なら、物的証拠は手に入りそうか?」

「……彼らのテリトリーならば。」

「いいだろう。」



 パチン、と彼は指を鳴らす。

 その言葉にヴィリは険しい顔をした。



「ヴィリ監査局長を隊長とし、任務を告げる。

 その元に、リーンハルト、パウル、ヤン、エルナ、ドロシー、オリヴィアをつけ、スギハラ家に迎え。そして、この任務が不当なものにならないよう証拠をつかめ。」

「……承知しました。」

「その間の任務はカジェタノを班長とし、ケイ、他3名をつけ行え。」

「承知しました。」


 今返事した2人を除いては、よしと悪い笑みを浮かべた。ケイは状況が掴めず呆然としていたが、リーンハルトとオリヴィアに笑顔でよろしく、と告げられれば頷くしかなかった。















 案の定、モニカが時間通りに帰ってくることはなく、7人は出動になった。

 ケイとカジェタノに見送られ、パウルはいきいきと車を飛ばしてスギハラ家に向かった。彼の運転に慣れないエルナ、ドロシー、ヴィリは悲鳴をあげたり白目を剥いていたりしていたが、荒々しい一方、彼は的確で速い。

 リーンハルトは先日乗ったエルナの運転とよく似てるなぁと遠い目をしながら乗っていた。


 30分ほど我慢すればスギハラ家に辿り着く。

 血気盛んなメンバーを抑え、先んじてヤンとヴィリ、オリヴィアが向かうことになった。



『どなたでしょうか?』

「特務隊のヤン・バーデと申します。約束通り、モニカ・クルーズの迎えにあがりましたわ。」

『モニカ様はこのまま我が家に嫁ぎたいと申しております。どうぞお引き取りください。』

「どういった心変わりかしら? 本人と話させていただけます?」

『お引き取りください。』


 後方でヴィリが通信機に触れている。

 そしてドロシーに一言尋ねるが彼女はゆっくりと首を横に振った。


「監査局長です。

 こちらからモニカさんの通信機の反応が得られません。本人が外したにしろ、あなた方が外させたにしろ、いずれも規定違反となります。

 私たちの立ち入りを許可いただけない場合、監査局長権限で強制開門させていただきます。」


「かっこいいな。」

「ね。」


 交渉の場面では仕事のないリーンハルトとエルナはぼそぼそと話す。

 インターホンの向こう側でも何やら話しているようだが、間もなく門が開いた。それを認めたヴィリが行きます、と言うと体格の良いパウルとヤンが彼を挟んで向かう。

 その後ろを感知能力の高いエルナが続く。



「わざわざご足労いただきありがとうございます。現当主のエタロウ・スギハラと申します。」

「お迎えいただきありがとうございます。用件は先ほどの女中殿にお伝えした通りです。モニカをここに連れてきてもらえますか?」

「今は花嫁修行のため、奥間におりそれは叶いません。」

「規定違反、とお伝えしたのをお忘れですか? スギハラ家は不可侵を謳っていますが、果たしてそれが監査局に通じるとでも?」


 エルナはその妖艶な笑みにゾッと寒気が走った。

 様々な経験を経て、身につけた武器を確実に余すことなく計算高く使う。自分と対して年齢の変わらない男の言葉に恐ろしさを抱く。


 それはエタロウも同様らしい。

 そして確実に権力も正当性もヴィリの方が上だ。


「……わかりました。ならば少しばかり催し事を行いましょう。監査局長殿ならご存知でしょう。郷に入っては郷に従えという言葉を。」

「ええ。で、どのような内容で?」


 エタロウは乗ってきた、と言わんばかりに機嫌よさそうに口角を吊り上げた。



「貴方達も演習で良く行なっているでしょう? インクボール潰しです。」

「つまりスギハラ家陣営と挑戦者陣営でボールを潰した数が多い方が勝ち、ってことか?」

「まぁざっくり言えばそうです。が、幾らかハウスルール、というやつがあります。」


 リーンハルトの質問にエタロウが説明していく。


「形式は7vs7、訓練場はこの別宅敷地内全てです。基本的には制限時間内で潰したボール数が多い方が勝ちとなりますが、キャプテンを設けてその人が負ければ問答無用で敗北となります。制限時間は1時間です。

 そしてハウスルールとして能力、身体強化の使用は禁止とします。能力については、使用すればボールが自然とつぶれます。身体能力については……貴方達の善意に任せることになりますがね。」


「武器は?」

「ありです。何なら準備時間に能力で作り出しておいていただいても結構です。」


 リーンハルトはふぅん、と考えるような様子を見せる。その横からエルナが顔を出す。


「勝てばモニカは返してもらえるんですよね?」

「そのことですが。」



 エタロウはわざとらしくため息をついた。

 その仕草が気に食わなかったらしいエルナとドロシーの視線は鋭くなった。


「モニカさんはあくまでも自分の意志で我が家に嫁ごうとしています。本人の意思表示なく決定はできませんので……。」

「そんなわけ!」


 つっかかりそうになるエルナを制してオリヴィアが立つ。


「なら、私たちは勝利した場合何を得られるのかしら?」

「……勝利した時点でボールが残っている人間のみ、モニカさんの接見を許可しましょう。」

「……そうですか。」


 オリヴィアは笑顔であるが確実に怒っていた。

 長年の親友の言葉を聞かずして信じられないのと同時に自身らの関係を軽んじられているのが気に食わないのだろう。


「通信機はこの敷地内では使用しないように。

 また準備時間は30分とします。こちらの地図に記された客間にて準備、開始10分前から敷地内好きな場所を移動していただいて結構です。よろしいですか?」

「いいですね?」


 ヴィリが6人に聞くと頷いた。













「本当腹立つ……。アイツが言った言葉を本当にモニカが言ってるなんて信じられない。

「まぁまぁ。どこで聞いてるか分からないから。」


 エルナとドロシーは憤慨していたが、オリヴィアは額に血管を浮かべながらも辛うじて笑顔を保っていた。

 7人は客間に通されたため、そこで待つより他なかった。


「キャプテンどうする? ヴィリやるか?」

「僕はモニカさんと関係薄いし、万一説得が必要なら僕以外の誰かが行くべきです。」

「そうだよなぁ。」


 諜報活動をするにはボールは確実に邪魔である。

 リーンハルトは頭をがしがし掻きながら、ヴィリに普通のボールを渡した。



「それなら私もよ。」

「エルナの能力って【共感(エンパシー)】だろ? 洗脳とかされてたらどうにかできるんじゃねぇの?」


 パウルが首を傾げたが、エルナは首を横に振った。


「ハーマンの件があってから、その解除を試みてみたけど完全な洗脳は無理よ。」

「そうなのか?」

「ああ、前歴者で、該当者ぽい奴のとこにエルナとヒロタダを連れて行ったんだ。そしたら、エルナはダメだったがヒロタダの能力で1発だった。」

「できたとしても、もともと仲良かった、とか性格が変わってないとかそういう条件も要りそうな気がするのよね。」


 ということで、とエルナも普通のボールをとる。

 ならばと残りの普通のボールをとったのは元ウルツ班の3人とオリヴィアだ。

 え、とドロシーが目を見開く。


「なら、説得は今の仲間がすべきだろーなァ。」

「そうねぇ、同じ女の子同士だし。」

「私もその方がいいと思います。」

「それにオレ達は、」


 4人は不敵に微笑んだ。




「暴れる方が性に合ってる。」




 明らかな殺意だ。

 元々戦争に参加していたメンバーの覇気に押され、エルナは息を飲む。



「珍しいものが見られると思って気楽にいけばいいと思うよ。」

「……そうね、それくらいに思っておくわ。」

『頑張ろう。』


 ドロシーが持ち込み許可を貰った小さな端末で音声を出す。いつもより音質は悪いが、能力はいずれにせよ使えないのだから支障はないのだろう。

 自然と彼女にも気合が入るらしく、強く頷いた。



「おし、じゃあ決まったところでオレは手洗いに行ってくるぜ!」

「呑気ですね……。僕も行きます。」

「オメーもかよ。」

「別にトイレに用はありませんよ。」


 2人がパタパタと移動し始める。


「オレもテキトーに行くわ。」

「ちょっと、1人で行くんじゃないわよ!」

「とりあえず私がついていくわね。」


 気まぐれに席を外してしまう彼をたまたま近くに座っていたオリヴィアが追いかける。恐らく彼は無意識のうちに水場に向かうのだろう。

 能力を使わないといえど、彼にとっては有利な場所だ。



『……元ウルツ班の人は自由すぎない? モニカも含めて。』

「否定はしないけどあの脳筋達とは一緒にしないでほしいわぁ。」


 ヤンがため息をつく。3人もそろそろ出るかと靴を履き、庭から裏に回った時だった。


 離れから爆音が聞こえたのだ。



「えっ、何々?」

『始まるには早い気もするけど……。』

「嫌な予感がするわね。アタシ達もさっさと移動しましょ。」


 ヤンが煙が立ち上る方を見る。

 恐らくあちらはパウル達が向かった場所でないだろうか。とりあえず傍らの少女達を守るべく、ヤンは移動を始めた。

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