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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
5章 友との約束

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68.キョートの遺物

「ここがキョート。」

「古き良き街、ですね。」

「オイそこ2人。何普通に観光してんだ。」



 警察隊からこちらに合流してきたハーマンは警察の制服を着ている。

 今回は特務隊と警察隊の合同任務だ。それに先んじて、リーンハルトをはじめ、エルナとヒロタダ、ドロシー、モニカがやって来た。

 そして、警察隊と特務隊兼任のハーマンも重宝されている。


「にしても、次はここが狙い、ねぇ。」

「ヴィリさんが持ってきた情報ですからかなり高い確率ですよ。」

『そうだよ。あの人の仕事の速さ正確さは折り紙付でしょ。』

「そうねぇ。」


 相変わらずPCを打ち込んで話す彼女はコートに深く顔を埋めながら淡々と打ち込む。その横でぶるりとエルナは体を震わせる。


「でも11月になると寒くなるわね。」

『紅葉にももってこいの時期。人もたくさん来るからカモフラージュには最高だね。』

「何趣のないこと……。」

「雑談はそこまでだ。さっさと打ち合わせするぞ。」


 ふー、と紫煙を吹き出した後、たばこをもみ消すとハーマンは特務隊の面々を施設内に案内した。

 会議室にはすでに今回の任務を務める隊員や警察達が集まっていた。




 今回の作戦はざっくり言うとこのようだ。

 ヴィリ率いる監査局が掴んだ確かな情報らしい。どうやら『Dirty』はここ最近各地の遺構に関する資料や見取図、構造図などを回収しているそうだ。

 キョートにはさまざまな過去の建築物が多く存在し、今回はその1つが狙われている。

 加えて、今回ターミナル:トーキョーとターミナル:ワシントンのエリア長が会談をする。今の時代のエリア長はいわゆる総理のようなものだが、殆どはお飾りに等しく、表の支部長、といった感じだ。


 今回、警察隊は主として会議の警護、特務隊は周辺警護と遺構の守備だ。

 ヴィリと警察隊の隊長が組んで指揮をとるらしい。既知の仲らしい2人は歳差関係なく対等に話しており、それを初めて見たらしい隊員達は多少動揺しているようだったが、鋭い眼光で睨まれれば1発で黙った。


「アイツ相変わらずストレス溜まってるなぁ。」

「シノブさんの事件もそうだけど、最近各地の特務隊員の再教育プログラムを立てたり講師に行ったりって忙しいんだろう?」

「そーそー。シュウゴ宅が駆け込み寺になってるらしい。」


 小声でリーンハルトが笑いながらヒロタダにチクっていると前方からなお鋭さを増した視線が突き刺さったため黙り込む。

 席の離れたハーマンは小さくため息をついた。










「でもエリア長の直接の警護は警察隊の仕事だから少し気楽ですね。」

「エリア長なんか今更狙わねーよ。あんな形骸化した役職なんてな。」



 エリア長。

 それはAAが決定する、いわゆる昔の時代の総理大臣というやつだった。AAが決めた政策を淡々と述べる操り人形のような職。

 しかし、その者が穏やかに、安寧に生きることでエリアが平和であることを示す象徴のようなものでもあるのだ。


 ごく稀に暗殺しようとする不届きものはいるが、それを果たしたところで代わりの者が立てられる。

 一時期はよく狙われていたが、特に『Dirty』については完全に無価値と考えているらしく、むしろ本命を狙うときの囮として急襲する程度にしか考えていないようだった。


「エルナは現場に出てきて大丈夫だったか?」

「余計な心配よ。新人大会の時とは違って今回はドロシーもいるしサポート以外も万全よ。」

『そう。ヒロタダの心配なんて不要。』


 相変わらずのきつい物言いに苦笑いを浮かべた。

 今回の『Dirty』の狙いは恐らくキョートでも有名な寺院の内部構造を記した見取り図原本だ。しかし、候補は2つ、リーンハルト達はその一方に配備された。とある博物館の分館だったが意外と広い建物だ。

 4階に保管されている原本周囲に分隊本部を敷き、エルナの能力により周辺警戒を行なっている。



「トーキョーから加勢に来ていただいた方ですね。本日はよろしくお願いします。」

「ああ、こちらこそよろしく頼む。」


 己より若い強者にやや気圧されながらも現地隊の代表者らしき男性が挨拶してきた。随分と不器用な笑みだ。

 なんとなく、リーンハルトは彼の笑顔が気になりジッと見つめたが、彼は居心地悪そうにそそくさとその場を去った。














 警備を始めてから2時間ほど。

 エルナはすぐに侵入者の気配を感知した。

 現地の隊長の指示のもといくつかの班が殲滅に向かう。それぞれの班から報告がされる中、エルナは何とも言えない表情をしていた。

 彼女が浮かない表情であることに気づいたらしいリーンハルトは彼女を覗き込む。


「どうした?」

「あのね、2階から分館西棟にいった隊から応答がないのよ。」

「ああ……あの6人で向かった班か。」


 確かに同時刻に向かった班は報告があがってきている。リーンハルトも違和感があったため、よし、と腰を上げた。


「なら、オレが行く。」

「1人で?」

「ああ。七賢人クラスが来てなけりゃオレ1人で問題ない。それになんかすったもんだしてるわけじゃねーんだろ?」

「うん……まぁ。」


 単に劣勢であるなら早々に通信機で連絡があるだろう。しかし、それがないということは。

 リーンハルトは最悪の事態を考えつつもとある可能性を強く疑っていた。


「何かあれば連絡してください。こちらの襲撃後、どうやらもう一方の施設に襲撃は向かったらしいので。」


 モニカの言葉から、こちらが陽動の可能性が高いということが窺えた。リーンハルトは素直に頷くと、エルナに聞いた場所へ向かった。




 案の定、というべきか。

 リーンハルトが現場に着くとそこには隊員5人が倒れていた。全員生きているあたり、総統と手練れの仕業であろう。

 彼はあえて無防備に5人に近づいた。


「オイ、大丈夫か?」

「……ぅ、」


 リーンハルトが声をかけた男が呻き声をあげたと同時だった。

 その場に一気に水を出現させ、倒れている隊員達を一気に階下へ移動させた。そしてリーンハルトは手に氷の刃を作り出すと襲いかかってきた人物の喉笛に目掛けて振りかざした。

 特務隊の戦闘服を着た男は咄嗟に身を捩るとあっさりと避けた。

 男は打ち合わせの時と打って変わって余裕そうな笑みを見せた。


「やっぱりいたか裏切り者。つーか、お前の身のこなし、見たことあるな。」

「やだなぁ、訓練でご一緒したじゃないですか。」

「訓練じゃねぇ、査定と任務の間違いだろ。」


 男の動きがピタリと止まる。

 はぁ、と大きくため息をつくとみるみる姿は変わり、見覚えのある青年の姿になった。



「さすがリーンハルトさん、お久しぶりです。」

「大して久しぶりでもねーだろ、なぁセイ。」



 金色の髪を揺らしながら彼は微笑む。一向に獲物を構える様子のないセイにリーンハルトは僅かに力を抜き、話す態勢をとった。

 セイは意外そうに目を丸くした。


「驚いた。速攻殺しにかかってくると思ったのに。」

「それはお前がシュウゴを殺しかけて、特務隊を裏切ったからか?」

「もちろん。」


 彼はにっこりと笑う。


「そりゃとっ捕まえたいけどなぁ。お前今回は逃げる気満々だろ。」

「あれま、ばれましたか。ま、今回はオレもこの作戦乗り気じゃなかったですからねぇ。」

「……見取り図、本命じゃねーのか?」

「必要ですけどわざわざこんな警備態勢万全になりそうなイベントに重ねて襲撃ってバカでしょ。今回蜂起したのは組織の中でもバカの集まりなので処理していただければこちらとしても助かりますよ。」


 前半の言葉はごもっともな内容であり、リーンハルトも納得していた。


「なら、お前は何でそのバカの集まりについてきたんだ?」

「上の人間に機会があれば見取り図を回収してこいって言われたんですよ。ま、そんな手練れはいなかったから機会もなかったわけですが。じゃあオレからも質問。」


 リーンハルトはなんだ、と尋ねた。



「オレの過去はシュウゴから聞いたはずだよ。特務隊の研究所で実験されて、オレの両親は間違いなくウルツに殺された。特務隊を潰そうとするオレを、1人で捉えようとする理由は。」

「……部下が信じることを上司が信じるのに理由はいるか?」


 リーンハルトの言葉を鼻で笑うと彼は手を刃に【変化】させた。リーンハルトもそれに合わせて構えた。



「やっぱオレ、アンタ苦手だわ〜。」

「なら力づくでアイツらの目の前に引きずり出してやるよ。」



 2人の間に緊張感が走る。

 先程までの空気は嘘のように、2人の踏み込んだ音で一気に場も床も壊れた。


 

【こぼれ話】


 セイ(仮)の能力は【変化】です。

 基本的にセイの時の能力とほぼ同じですが、触れたものを対象に、自分の身体を変えることが可能です。

 変化した状態で傷を負えば本体も怪我をしますが、本体の怪我は変化した状態のものには影響されません。

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