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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
4章 兄と妹

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63.新人大会 -決勝?-

 決勝が執り行われる日である。

 実戦の15分前、組み合わせが発表されたのだ。シュウゴの読み通り、ヒロタダはチンヨウと当たった。



「良かったじゃない。ふふ、組み合わせビンゴ。」

「笑うな!」


 エルナはヒロタダと出会すたびに昨日のことを思い出すのか噴き出す。シュウゴもあの後は問題なかったのだが、エルナが笑うとつられて変な声を漏らす。

 ケイは清々しいくらい褒めてくるためそれはそれで恥ずかしいのだが。



「でもオレが砂鉄使い? の人っすよね。鉄を溶かせば何とかなるもんですか?」

「基本的にはどうにもならないから黒い炎で対応した方がいいよ。砂鉄はそもそも四酸化三鉄でそれを融解するにはーー。」

「頭痛くなるんでやめてもらっていいすか!」


 シュウゴは不服そうに説明をやめた。流石に青い顔で頭を抱える年下を目の前に説明を続ける気はなかったらしい。



「でも、能力のこともそうだけど気をつけたほうがいいと思う。」

「何でですか?」

「いやぁ、勘なんだけど……。」

「ん、分かりました。」


 ケイはヒロタダの曖昧な警告に対しても素直に頷く。その傍らでエルナがシュウゴに耳打ちをする。


「ヒロタダの言うこともそうだけど、今日の会場は妙よね。何だか特務隊員が沢山いるような……?」

「あながち間違いではないと思う。最近の『Dirty』は催事に現れることも多い。AA主催なら尚更だろうね。」

「……そっか。あたし達も参加者といえど気をつけないとね。」


 エルナの言葉にシュウゴも首肯した。










『いよいよやってまいりました、新人大会本戦決勝! ペキンチーム対トーキョーチームの試合です!』


「「よろしくお願いします。」」



 それぞれのチームキャプテンの握手で試合は始まりを告げられる。各チームメンバーの簡単なダイジェストを述べ、1試合目のコールがかかる。



『決勝第1試合目は、両者チームの最若手対決! ステージは訓練場No.137 ターンテーブル!』


「は、何だそれ?!」



 ケイがギョッとしたが手遅れである。気づいた時にはすでに彼の身はステージに飛ばされていた。何とか着地した、がステージが急にぐるりと回転したのだ。

 確かルイホァと行った中華料理店で似たようなテーブルを見たことがあった。確かにターンするテーブルだと場に合わないことを考えながら相手を見やる。

 相手は自分と違いバランスを一切崩すことなく真っ直ぐにこちらに走ってきた。むしろステージを上手く利用して勢いをつけてきたくらいだ。



「【砂鉄時雨】!」

「【黒炎】!」



 降り注ぐ鉄の雨を炎で押し返す。

 しかしシュウゴが言った通り、元より燃える物質でない砂鉄には、炎は相性が悪いらしく力の無くなった砂が降るばかりだ。

 相手もまさか炎で対抗されるとは思わなかったらしく、僅かに顔をしかめた。ただ、それは一瞬のことだ。


 ケイはふと、あくまでも勘であったが、現状の膠着はよろしくないように思えた。

 足から【赤炎】を噴出し、ジェット機のように後方に飛び退くと誰もいなくなったその場には抉られた跡が残った。



「へぇ……、年下のくせにやるじゃん。さすが、ハンフリーをやっただけある。」

「は? 何でお前、アイツのこと、ッ!」



 一瞬の動揺が命取りになる。

 あの時、カナザワで味わった常に死が背後に蠢く嫌な感覚を思い出す。

 ケイが咄嗟に避けると身体を砂鉄にした男が次々と攻撃を放ってくる。疎いケイでも現状があってはならない状況であることはすぐに分かった。

 迷わず通信機で仲間に連絡をしようとするも、ワープホールの通行書とともに起動しなかった。



「この砂鉄かよ!」

「当たりだよ! お前は『Dirty』にとって不利益をもたらす男と判断された! よってここで死んでもらう!」


 この動き、殺意。

 間違いない、この男はハンフリーと同じ紋付だ。



「こんの、クソッタレ……!」



 ケイは全身から【黒炎】を噴き出し、迎撃態勢へと移った。











 一方で会場もパニックに陥っていた。

 ペキンチームが侵入者に対して、ある程度予想していた侵入経路がことごとくハズレだった上、警備兵の負傷、そして観客に紛れ込んだ『Dirty』の人間達により、混乱が生じたのだ。



「きゃあ!」

「自分で避けられる?」

「クッソ……ケイは?!」


 敵襲からヒロタダとエルナを抱えて避けたシュウゴはため息をついた。分身系の能力者がいるようで、同じ人物達がうじゃうじゃと湧いていた。



「まだ訓練場だ! 戻ってこれないのか?!」

「……何らかのギミックがあることには違いないけど。」

「ちょっとアンタら! 人の前にまず自分よ! ここから抜けなきゃケイのこと助けられないじゃない!」


 襲いかかってくる人に対してエルナは棒を振り回して殴打している。シュウゴは淡々と銃でいなしているがいかんせん数が多い。



「あなた達本当に戦闘向きのタイプでないのですね。」

「あ、チンヨウさん!」


 そこへ走ってきたのはちょうど試合で当たっていたペキンチームの面々だ。合流した方が手早いと判断したのはこちらと同様らしい。



「まさかユーチェンが裏切り者とは思いませんでした。1年来の付き合いだったので。」

「そうですよね……。」

「アンタ達しんみりしてないで!」



 肩を竦めるチンヨウとそれに同情するヒロタダにエルナが叱咤をとばす。さて、とチンヨウは手を地面についた。



「【召喚・土犬】。」


 彼が能力を発動すると地面からメキメキと沢山の犬が生み出される。


「我が子達よ、この匂いの人物を噛み殺しなさい。」

「ガァウウ!」


 チンヨウが命じると犬達は分身に迷わず噛み付き、次々と倒していく。確かにこの能力なら近接戦でもなく、また武器が完全に不要な能力でもない。

 彼は鼻をひくつかせ辺りを見回す。

 恐らく、嗅覚により辺りを探っているのだろう。



「さて、我らが特務隊、舐めないでいただこうか。」

「僕たちも応戦する。」

「「「「了解!」」」」



 残りの4人もチンヨウとヒロタダの言葉に頷いた。













 リーンハルト達も、ペキン支部の面々と協力しながら動く。しかし、彼らの所属はあくまでもトーキョー支部であるため直接的な支配は受けないため、自由に動いている。

 だからこそ、昨日ズーハオが2人に頼みに来たのだ。



『貴方達2人、オリヴィアさん、ルイホァとともに、もし動けるなら迅速に犯人を仕留めてください。』



 パウルは、そのようにした場合手柄はトーキョーのものになるが良いかと尋ねたところ彼は真っ直ぐに言いのけたのだ。

 手柄など不要、皆が助かり敵を討てればどうでも良い、と。

 この男は愚直なまでに特務隊の仕事に陶酔しているのだ。



「リーンハルト、どうする?! 観客を巻き込まないで戦うなんて……。」

「ふん、お前らも対面では強いがこういうところは弱いらしいな?」

「ゴーシさん!」


 スーツの上着を優雅に投げ捨てると彼は能力を解放させる。


「オリヴィアのみここに残り観客の身体を確認しろ。3人はケイの救助と砂鉄男を仕留めろ。分身はペキン支部がどうにかしてくれよう。」



 彼が能力を発動させる。

 巻き込まれると面倒だ、リーンハルトとパウルは視線で頷くと、小さく了解ですと呟いてルイホァを引いてその場を離れる。



「2人とも、ゴーシさんってどんな能力なの?」

「ああ、あの人の能力は【幻覚】。ありとあらゆる五感から相手に幻を見せ、支配下に置く。初見の奴じゃとてもじゃないが対応できねぇよ。」

「凄い……。」


 ルイホァは感心したように言う。

 さて、とリーンハルトは2人から離れようと別方向を見る。


「お前は?」

「ケイを助けに行く。」

「なら3人で……。」

「いや、リーンハルトの判断の通りでいい。アイツがあの空間から脱出できた場合、2人はそれぞれ別のところに出る可能性が高い。」

「そういうこと、幸い確実にケイを消すことができる場所をオレは知ってるから。ルイホァはパウルの指示に従え。父親でも、兄貴でもなく、お前の上司はオレとパウルだからな。」


 リーンハルトの言葉に彼女は目を見開いたが、しっかりと頷いた。

 その様子を認めると、リーンハルトは小さく彼女の肩を叩くと目にも止まらぬスピードでその場で方向転換し、別方向へと走り去った。


「行くぞ。期待してんぜルイホァよ。」

「ハイ!」



 ルイホァはリーンハルトの言葉を胸に強く刻むと兄の師である彼の言葉に強く返事をした。


【こぼれ話】


 ゴーシの能力は【幻覚】です。

 五感全てに訴えかけて相手を嵌めます。

 特に視覚と嗅覚に対する支配は強く、ほぼ弱点はありません。



【キャラクター紹介】


ウ・ユーチェン (61話より)

26歳 159cm

見た目は若く少々小太りな青年。しかし動きは速い。戦後、革命を行う組織にミーハー的な感覚で憧れて参入した。

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