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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
4章 兄と妹

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58.新人大会 -参加者達-

 リーンハルト班は呼び出された。

 まさかの副支部長からだ。

 リーンハルトをはじめ、ハーマン、オリヴィア、加えてルイホァはその理由に心当たりがあるらしい。

 しかし、ヒロタダは心当たりがない上、何となく副支部長のゴーシを苦手としていたため、変な汗も出るほどに緊張していた。



「本当に普段着でよかったのか?」

「ゴーシさんがいいっつったんだからいいだろ。入るぞ。」

「こっ、心の準備が!」

「何でそんなに緊張してるの?」


 リーンハルトを止めようとした手はルイホァにあっさり止められ、リーンハルトはさっさとノックして入ってしまった。



「よくきた。形式的な挨拶は省く。」

「例の件ですか?」

「ああ、その通りだ。関係者はそこに座れ。他は横のソファに座れ。」


 察していた4人はさっさと横のソファに着席してしまう。残りの4人で余った席に座る。ケイがヒロタダの異常な汗に気づきわざわざゴーシ側に座ってくれたことに内心ホッとした。


「さて、本題だが。今年の特務隊新人大会はお前たち4人に出てもらう。この資料を読め。」

「ありがとうございます。はい、」



 ケイが受け取った資料を他の3人に渡す。

 ふむ、と速読の得意なヒロタダとシュウゴはすぐに概要を理解した。文字を追いかけることを諦めたエルナとケイはリーンハルトの方を見やると、彼は苦笑いしながら話し始めた。



「毎年、入隊1年目の隊員を対象に世界的に行うと新人大会が開かれてるんだ。今回はジパング代表で4人が選ばれたってわけ。」

「マジかよ! あっ、すみません。」

「かまわん。」


 すごすごと小さくなるケイにゴーシは手をひらひらさせる。


「基本的にはエリア毎に4人1組出られるわ。予選が行われて、本戦に出場するとAAから出る隊教育費予算のアップとか支部長権限の増強とか、勿論出場者には賞金、って色々お得なのよ!」


「オレたちの時代は戦争があったから、無かったけど終戦後に戦を忘れないように、っていう戒めみたいな大会なんだ。それと新人に厳しさを教えてやろうっていう。」

「そうだ、そして昨年のジパングの成績は最悪だ。」



 ドン、と怒り心頭らしいゴーシは強くデスクを叩いた。



「昨年はそこにいるルイホァによりチャイナに優勝を持っていかれた。加えてジパングは予選落ち、尻から数えた方が早い順位だった。

 そのせいでシノブ様がどれだけ恥をかかれたか!」

「……本人は笑ってたけどな。」


 リーンハルトがボソリと呟く。


「だから、今年はお前らを派遣することにした。紋付きを倒し、七賢人の圧も既に経験している4人ならば不測の事態にも容易に対処できるだろう。シノブ様もヴィリも了承済みだ。」

「オレも話きてぜひ、って言ったから後は4人の予定と意志次第だな。学校とか仕事は大丈夫そうか?」


「僕は大丈夫です。」

「オレはもう実験自体は終えたので問題ありません。卒論もほぼ書き終えてますし。」

「今は大会もないから大丈夫っす。」

「うーん、スケジュール調整すれば何とか……、でも事前の練習とかはあまり柔軟にできないかもしれないわ。」


「構わん、上出来だ。」



 4人の返事に満足したのか、ゴーシは珍しく嬉しそうに口角を上げながら頷いた。



「予選内容は、基本的に会場入りしてから知らされる。つまりは、3日前だな。本戦に残ればトーナメント式、1vs1の試合2本と2vs2の試合1本だ。」

「……それってこのメンバーで大丈夫なの? まともに戦えるのケイだけじゃない?」

「ちょっと、それはシュウゴに失礼じゃ「オレもそう思います。」


 せっかくのヒロタダのフォローを食い気味で否定され、少しばかりショックを受ける。



「空き時間は死ぬ気でこっちの4人に鍛えてもらうといい。だから、この4人も今日呼び出したんだ。何ならパウルやヤン、モニカ、カジェタノにも話は通してある。喜べ。」

「それとオレは当日行けないからパウルに代理を頼んだ。」

「え、どうしてですか?」


 ヒロタダが尋ねると彼はあー、と小さく呟く。


「……刑事課に戻ったんだよ。そっちの引き継ぎがあってな。」



 本格的に友人を探し出すため、だろう。リーンハルトも了承済みらしく頷く。ルイホァだけは訓練相手が減ってしまうため退屈そうにしていたが、彼女なりに察して黙っているようだ。


「私は医務担当で同行するから目一杯応援するわね!」

「なるべく世話になりたくないっすけどね。」


 ケイは苦笑いしながら言う。全く以ってその通りであるため、他の人も何も言わない。



「それと、ヒロタダとシュウゴはここに残れ。」

「「え。」」


 つい声が重なったが、2人の言葉の意味は似て非なるものであるだろう。


「予選対策を行う。過去大会の予選を分析した結果に基づき、私がわざわざ予測してやった。ならばそれを無駄にすまい、対策を行うぞ!

 法関係に強いお前と、分野問わず頭に入るお前の頭があればどうにかなる!」


「オレらは期待されてないみたいっすね。」

「まぁ期待されても困るけど。餅は餅屋よ。実働頑張りましょ。」



 早々に補講から逃げる態勢に入った2人は、ヒロタダとシュウゴを見捨てることに決めたらしい。

 するとシュウゴはスッと手を挙げた。


「必ず頭に叩き込みますので、この場は失礼してもよろしいでしょうか。この後学会に備えたゼミがあります。」

「構わん。ならば、この資料を明後日までに読んでこい。」

「承知しました。」



 ハードを受け取ると、シュウゴもさっさとヒロタダを置いて帰る準備を始めた。彼に至っては恐らく他意はないのだろうが、ヒロタダは血涙を流す思いでシュウゴを睨みつけた。彼は不思議そうにするばかりだが。



「さて、時間が惜しい。他の者は訓練なり何なりに移行するといい。ヒロタダ、お前は逃げるなよ。」

「頑張れ。」



 思惑はバレている上、全員がヒロタダの救出を諦めた。

 この日から夜な夜なヒロタダの泣き声が隣の部屋から聞こえるようになったとリーンハルトがパウルにぼやき、彼が腹を抱えて笑うのは数日後の話である。








 ゴーシのスパルタにヒロタダがひーひー言いながら何とかシュウゴと揃って履修を終えた頃、シュウゴはヒロタダに相談をしにきた。

 それは現状の参加者の能力を確認したいということだった。

 エルナとケイにも時間を割いてもらい、演習場に珍しい4人が集まった。勿論物珍しそうにリーンハルトとルイホァも見ていた。



「それで確認したいことって?」

「貴方の【無効化】の範囲とケイの【黒炎】についてです。」

「というと?」

「確かケイの【黒炎】は能力とかキメラとか任意のものを燃やせるよね? つまりヒロタダの【無効化】を燃やせるのか、逆に【無効化】で消されるのか、ってことでしょ?」


 ルイホァが口を挟むとシュウゴが頷いた。ヒロタダはハッと思いついて手を叩く。


「なら、エルナの能力もケイの能力に影響されるかも気になるな。僕の能力がエルナの能力を消すのは初めての演習で分かってるけど。それにシュウゴの能力はどうなんだ?」

「オレは【黒炎】を出してからケイと共闘してません。あとオレの能力、どのタイミングからヒロタダさんの【無効化】から逃れられるのかふと気になって。」

「確かにな。オレも水操る時、水ごと消されるわけじゃなくて操る力を消される、って感じだもんな。」



 改めて指摘され、リーンハルトも疑問に思ったらしい。首を捻っていた。

 当然のように確認作業をするシュウゴであるが、はじめに相談してきた時は僅かに不安そうにしていたため、何となく微笑ましくなった。



「でも、シュウゴからそういうこと相談されて最初はびっくりしたよ。もしチームのリーダーとか必要ならシュウゴがやればいいんじゃないか?」

「えっ、やだ。」


 珍しく反射で、加えてタメ口で拒否したものだからシュウゴ以外は皆驚いて固まった。本人も何を言ったか理解できなかったらしく驚いた顔をしていた。


「え、あ、すみません。オレ、そういうのしたことない、というか客観的に向いてないと思うんです。」

「それ誰かに言われたんすか?」

「そういうわけではないけど……、でもヒロタダさんに指示された方が安心じゃない?」

「僕はシュウゴがリーダーの方が安心だけどな。手続きとかが心配ならそれだけ僕がやるし。」


 彼は助けを求めるようにルイホァとリーンハルトの方を見た。



「それは4人で決めることじゃないかな?」

「ルイホァの言う通りだな。」

「いいんじゃないの? あたしはどっちでも。」

「オレも部活のキャプテンならまだしもここのリーダーできる気しないですし、自分じゃなければ。どっちもそれぞれいいと思いますけどね。」


「僕もサポートする。やってみよう。」


「……分かりました。後悔しても知りませんから。」

「僕は絶対上手くいくと思うけどな。」


 照れているのか恨みがましそうな目でヒロタダを睨みつける。元より眼力も強いため箔がつく。



「なら、さっさと能力の検証をしましょう。」

「よっ、リーダー!」

「シュウゴリーダー!」

「うるさいな。」



 手頃なケイの脇腹を突くと嬉しそうにきゃー、なんて笑っている。ルイホァが羨ましそうに寄っていくと頬を突いてやっていた。

 妹の件もあり何やかんやと面倒見がいいなぁ、などとヒロタダが笑っていると、ふと視界の端に少しばかり心配そうに見つめるリーンハルトの顔が入った。



「どうしたんだ? 何か心配事? リーダーのことなら心配ないと思うけど。」

「いや、それはオレも心配してねーわ。」


 それは嘘でないらしく彼は軽く笑う。そっと声を控えてヒロタダに告げる。



「……今回の会場は、エリア:チャイナ。つまり、ルイホァの父親が支部長として会場には来るってことだ。この前の帰省の時だって完全に萎縮して帰ってきたしな。」

「なら同行しなくても……。」

「オレも言ったんだけどなぁ。でも、同じ世代の奴らが頑張るから見たいんだろ。」


 仕方なさそうに笑う彼は恐らく反対したのだろうが、ルイホァの思いを汲んで仕方なく諦めたらしい。


「ま、そっちのことはオレとオリヴィアと、それにパウルもいるし大丈夫だろ。ゴーシさんもちょっと冷たい人だけど部下は守ってくれるし。」

「……そうだな。まず僕たちが勝たないとな。」

「ああ、頼んだぜ。」



 2人は拳をトンと合わせる。

 しかしこの時はまだ知らなかった。

 ルイホァ達家族の理解し難い溝について。

【こぼれ話:オリヴィアの印象】


→リーンハルト 戦争の時からよく知る才能は変わらず、だが以前より穏やかになり話しやすくなった。処方を守ってほしい。

→ヒロタダ 絡み酒してもそこまで怒られない、モニカの次の呑み相手。

→エルナ 彼女の芯の強さに感心している。リーンハルトとの恋を応援しているし女性として幸せになってほしい。頑張れ!

→ハーマン ある意味で気を遣わずに話したり相談できる相手。

→シュウゴ 頭がよく会話しやすいが時々シモンと重なり話しにくい時もある。

→ルイホァ 歳の割に落ち着いており任務中は放っておいても安心できる子。地がいいのでたくさんおしゃれなどをさせたい。

→ケイ かわいい歳下の男の子であるが圧倒的な戦闘センスに怪我をしないかハラハラしている。

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