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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
4章 兄と妹

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54.合同文化祭! -圧倒-

※戦闘・残酷な描写あり、注意!

「シュウゴくん、何があったんだ?!」

「話は後、とにかく子どもたちと一緒に逃げて。」

「シュウゴくんは?!」

「……。」



 一緒に逃げようと言わんばかりに自身の袖を掴む彼女を申し訳なく思う。誤魔化すのももう無理だろうと、彼はため息をついた。



「嘘ついててごめん。オレ、最近始めたのバイトじゃなくて特務隊だから。戦わなきゃ。」

「……へ、そうなの?」



 友人の思わぬカミングアウトに2人は呆然とする。

 しかし彼はそれに動じることもなく、貫かれた天井を見つめる。上階はカフェテリアを主催する団体の貸し切りだったはず。すでに昼時間は過ぎているがまだ人がいるだろう。

 シュウゴは能力で梯子をかけると慣れた所作でひょいひょいと上っていく。


 案の定、キッチン担当と受付をしていた自分の妹がいた。



「特務隊員です。動けますか?」

「私たちは大丈夫です!」

「でも受付担当の子が僕を庇って……。」


 横目で見るとシュカは額を切ったようで血を流していた。


「そこに梯子がかかっています。下へ降りられるのでお2人は自力で。彼女はオレが連れて行きます。」

「すみません……お願いします!」



 シュウゴはすぐさま包帯を作り出し、シュカの頭に強めに巻く。彼女は大人しくされるがままだった。

 無抵抗の彼女を背負い、瓦礫を上手く使いながら下の階に降りる。どうやら待っていてくれたらしいミホがそわそわしながらこちらを見ていた。



「大丈夫? 立てる?」

「……うん。」

「ならすぐに避難を、この人オレの友達だから。」


「お兄ちゃんは、また戦いに行くの?」



 すぐに現場へ向かおうとしたシュウゴの袖を、くんとシュカが引っ張る。すぐにでも振り解けそうな弱々しい力であったがシュウゴもそこまで鬼ではなかった。



「私、分かってるんだよ。お兄ちゃん達がどれだけ危険な目に遭ってるか、それにセイさんも、異動なんかじゃないんでしょ?」

「……!」


 まさに妹の言葉は図星であった。



「私嫌だよ、またお兄ちゃんが大怪我するの。やっぱり特務隊なんて、辞めて……。」



 シュウゴが口を開こうとした時、シュカの言葉を遮ったのは意外にもミホであった。彼女は穏やかに微笑みかけた。



「私も、さっきシュウゴくんに聞いてびっくりした。でも、シュウゴくんは無闇に危険なことをする人じゃないでしょう? 誰かのために戦える人だもん。待っててあげよう?」


 ね、とシュカをやんわりとシュウゴから引き離す。

 シュウゴが小さく口パクでミホに礼を述べると彼女はゆっくりと首を横に振る。



「お兄ちゃん。」

「ん?」

「……約束守ってね。」


 今日は一緒に帰ろう、そう言ったなと思い出すと自然と口角が上がった。

 これは間違っても、今回は病院送りになるわけにはいかなそうだ。



「分かってる。行ってくるね。」

「……うん。」

「ミホ、シュカをよろしく。」

「うん。気をつけてね。」



 それだけ告げるとシュウゴも窓口から足をかけて跳びだした。

 シュウゴは何となく、探知能力があるわけではないため勘にすぎないのであるが本能で理解していた。

 ヨコハマで出会ったあの男が近くにいるということを。














「おやおやァ、こんな所に監査局長殿がいるとはねぇ。」

「……。」



 校舎を伝って屋上に行くとそこにはコカトリスを模したキメラとメガネをかけたワカメ頭の男がいた。

 やはり攻撃した時の尾が見覚えのあるものと思えば戦争で見たことのあるキメラではないか。


「まさかこのオレがガキ……監査局長殿を殺せるとはな。」

「御託はいいよ。さっさとやり合おう。時間が無いんだ。」

「そうだなァ!」



 背後から襲ってきた彼の刃を避ける。

 どうやら能力は【瞬間移動】、ありきたりのものであるが油断ならない厄介なものだ。

 そして、彼が能力を使ったのがトリガーになったのかコカトリスが咆哮をあげて毒霧を交えた吐息を漏らす。化物が振り回す尾を避けると男が再び背後に回り込んでいる。



「ヒャハァ、ただのすばしっこいガキだ! あの方のために死んでもらう!」



 あまり長い時間をかけるとこのキメラに逃げられる上、この男は敬愛する『あの方』のためにロクな情報も落とすまい。

 ましてや、紋付でも無い人間だ。

 なら対応は一択。




「……ぇ?」




「無駄口叩いてる暇あれば僕の斬撃よければ?」


 男の左腕がぼとりと床に落ちる。

 呆然としている間にヴィリは能力を使い、一瞬でコカトリス型のキメラの後ろに移動した。

 そして自身の持つ刀で一閃、キメラの首は屋上に轟音を立てて落ちた。


 男はキメラの血を浴びてハッと意識を戻したようで、その事実を視認すると突如慌て出す。



「血、血が! オレの体に!」

「……コカトリスの体液は体内に摂取すると感染を引き起こす、戦争の時は確かそうだったね。君は放っておけば自然と死ぬ。」



 うわあああと先ほどまでの威勢の良さはどこへやら、情けなく逃げ出す彼の正面にヴィリが飛び降りてやると腰を抜かした。

 何とも情けない光景だろうか、内心で呆れていたが一切表には出さず淡々と刀を振るう。



「最後に生きるチャンスをあげるよ。貴方の仲間は、いや、アドルフはどこにいる?」



 ヴィリの口から出た名を聞いた途端彼の顔色が青くなり、そして急に何やら自信を取り戻したのか汚らしく騒ぎ出す。


「そうだ、あの方が来ればお前なんて一瞬で死ぬ! オレはあの方の後継だぞ!」

「……バカじゃないの、あの男は君みたいに醜くてバカな人を可愛がる人じゃないよ。」


 それ以降の男の反論は叶わない。

 というのもすでに男の首元にヴィリが峰打で一撃食らわせており、意識を飛ばしていたからだ。見積もった所数分の命の男にわざわざトドメを刺すのも惜しい。


 しかし、この男最後の最後で情報を漏らすものだから愚か以外の何でもない。

 あの時取り逃がした、セイを奪った男を仕留めるチャンスが今日この場に到来しているより他なかった。


 圧倒したヴィリは血を払い刀を収めるとすぐにシュウゴの気配がする方へ駆け出した。















「また試合の時に来んのかよ! 何なんだよこの引きの悪さは!」

「苛々しても仕方ないよ!」

「そうだけども三度目だぞ?!」



 体育館の避難誘導を終えたケイとルイホァは片や私服、片やジャージでリーンハルトの指示に従い、今回の騒動の原因を探して施設内を奔走していた。

 ケイはヴィリの援護が必要か尋ねたが、リーンハルトとルイホァに止められた。つまりは、邪魔になるかはたまた行くまでに終わるということだろう。


 道の途中で会う洗脳されたらしき人たちは、自我がないためうまく教室に放り込み、ドアの立て付けを悪くするだけで無力化できていた。

 時折混ざっている『Dirty』の人間については容赦なく気絶させ、散々指導された拘束具をルイホァから貰い装着して行った。



「で、こっちであってんのか?」

「風の流れ的に、中心がこっち! ケイも変な匂い、感じるでしょ?」

「……まぁ。」



 とは言っても吐き気がするような甘ったるい匂い、としこ表現できず何とも形容しがたいものであった。

 ケイはチラリと傍らのルイホァを盗み見る。

 先日の研究室の件、謝られたがケイにとってはそれだけでは済まないものになっていた。この小さい身体が何を背負って、何を思いながら自身を見つめているのか酷く気になるのである。



「……何? さっきから。」

「いや、別に。」



 煮え切らない返事をするケイに疑問を抱きつつ、2人は講堂近くの広場に出る。広場といえど奥まったややわかりにくい所にあり、人影はあまりない。

 だが、その中で彼女は既に気付いていた。

 主犯の居場所を。


 【鎌鼬】を手元に生み出すと講堂の屋根に向けて風を放った。

 屋根一部が破損するとともに2つの人影が飛び出して広場に降り立った。



「何だ貴様ら。」

「ははーん? 高校生風情が調子に乗ってヒーローごっこにでもジャシャリ出てきたのかしら? 僕ちゃんお呼びじゃないのよ〜。」


「なんだケバいババァ。」


 思わず口から出てしまったらしいケイはハッと口を閉ざしたが、相手の怒りの琴線に触れたのは敵を含め3人が察した。


「このクソガキ殺す! 武器を取りな、レイジ!」

「ハイハイ、メリヤ。」


「悪い余計なこと言った。」

「別にいいよ、ケバいのは事実。」



 挑戦的に微笑んだルイホァを見て、内心安堵しつつ、ケイは小さく頷いた。

【こぼれ話:シュウゴの印象】


→リーンハルト 話を聞いてくれる理想の上司。からかっても怒らないため、おや? と思っている。

→ヒロタダ 常識人であり自分と別分野に明るいため話していて楽しい。

→エルナ 妹と同い年の女の子、唯一守らなきゃと思う仲間。研修から一緒だったため親しみはそれなりにある。

→ハーマン かっこいい大人。加えて喫煙以外はいい父親だなぁと思っている。

→オリヴィア 尊敬の対象。訓練も付き合ってくれるいい人であるが叩かないでほしい、痛い。

→ルイホァ 頭も使えるので組みやすい相手。顔に出ないだけで食事量には驚いている。

→ケイ タイプが違うためはじめはどうなるかと思ったがいい子すぎて時々戸惑う。


割と辛辣。

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