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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
4章 兄と妹

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51.またこの日が来ることを願って

「「「任務中止?!」」」


「ほんっとうに申し訳ありません!」



 リーンハルトと揃えて驚いた声をあげたのはヒロタダとルイホァだ。

 秋に差し掛かる頃、リーンハルト班はオキナワの支部に来ていた。プラントらしきものが見つかったと報告があったが、まさかの現地民の秘密基地のような物だったらしい。

 そんな物を見間違えるな、とさすがにリーンハルトも呆れて物が言えなかった。



「申し訳ありません! 我らの新人教育が不十分だったばっかりに……!」

「全くだよ。大体班編成自体も甘いんじゃねぇか。そもそもな……。」



 仕事モードのリーンハルトは淡々と欠点について述べていき、現地隊員達も一部はベソをかきつつ、真剣に聞いていた。

 ヒロタダはふと自身の隊員たちの様子を見てみたが、ハーマン以外はすでに注意が別のところに向いているらしくぼそぼそと雑談をしていた。ヒロタダの注意もこちら側に来たことに気づいたケイは手招きをして会話に交えてくれた。



「ヒロタダさん。今日任務中止ってことはオキナワで1泊できるってことっすよね?」

「まぁ元々1泊2日の予定だったし宿はあるだろうけど……。」

「ならさ、ちょっと観光したってバチは当たらないわよね? あたしオキナワ初めて来たのよね。」


 エルナとケイはすでに観光する気満々らしくお土産はどうとかあれが美味しいだとかすでに修学旅行気分に移ってしまってらしい。


「オリヴィアさん……。」

「まぁいいんじゃないかしら? 8人で旅行とかもしたことないし。私も久しぶりにゆっくりしたいわ。」

「シュウゴはオキナワきたことある?」

「高校生の時にね。」


 ルイホァと会話する彼は長い髪が張り付いて鬱陶しいらしく、普段より高い位置で縛り直していた。

 現地隊員との話がついたらしいリーンハルトはハーマンと話しながら6人の元へやってきた。



「とりあえずこの件については、現地退院から報告を入れさせることになった。で、今後のことだが……なんだその期待に満ち溢れた目は。」

「察してやれよ。」


 ふと笑うハーマンに言われ、リーンハルトは呆れたようにため息をついた。


「向こうのお詫びってことで宿はそのまま泊まっていいそうだ。メシも向こう持ち。1泊して明日午前で帰る、異論はないな?」

「「「ありません!!」」」


 未成年組の目がキラキラと輝く。



「なぁなぁ、花火やろうぜ! 今年やってないんだよ!」

「いいわね、じゃあ買いに行きましょう!」

「ご飯屋さん、ここが美味しいんだって! パンフレットに書いてあった!」



 キャッキャとはしゃぐ3人にリーンハルトは苦笑いしつつも嬉しそうに見守っていた。



「お前は混ざらなくていいのか?」

「リーンハルトさんはオレが混ざるように見えるんですか?」

「……見えないけどよ。」


「オリヴィアさんは買い物ですか?」

「そうよ〜。あ、ヒロタダくんもお姉さんへのお土産探しましょう。ハーマンさんも、娘さんにどう?」

「……そうだな。」


 珍しくハーマンやヒロタダも乗り気なものであるからリーンハルトも完全にオフモードになったらしい。先程まで険しい顔をしていた彼とは別人のようだった。

 シュウゴと話す彼を盗み見ながらヒロタダは微笑んだ。









 オキナワの自然は以前、人類の開発により歴史書で見るような美しさを失ったといわれていた。しかし、新人類の台頭とともに、開発は衰退して能力による自然の再生が行われた結果、昔のような美しさを取り戻したらしい。

 ジパングの中でも筆頭の『自然と共生する』観光地として有名だ。



「かつて失われた自然の再生、」

「なーに気難しいこと言ってんすか。モテるもんもモテなくなりますよ。」

「シュウゴは顔はいいんだけどなー。」

「2人とも。」



 雑貨屋でサンゴのストラップの説明文を読んでいたらしいシュウゴの後ろで暇を持て余したリーンハルトとケイがウザ絡みをしている。

 ヒロタダは2人を剥がしてシュウゴに話しかける。


「シュカちゃんにお土産買わないのか?」

「……。」


 すでに姉夫婦への土産を見繕ったヒロタダがシュウゴに尋ねると彼は眉を顰めた。何かまずいことを尋ねただろうか、ヒロタダが困惑を浮かべるとシュウゴはぽつぽつと話した。


「その、妹と冷戦中でして……。」

「冷戦?」

「喧嘩、ってわけではないんですけど。その、この前の大怪我からどこか冷たくて。」


 元より彼の妹であるシュカはシュウゴ同様、割合無表情ながらも彼よりは感情の起伏が激しい印象だ。勿論他の人たちと比べるとリアクションは薄いが。

 彼女を知るリーンハルトは首を捻りながら尋ねる。


「兄妹だろ? 今まで喧嘩しなかったのか?」

「いや、しますけど。でも今回みたいにだんまりなの初めてでどう機嫌をとったらいいか……。」

「この前のケイの時もだけど兄さんも大変だなぁ。」

「オレの兄貴はブラコン拗らせてますからねぇ。」

「そうなんだ。」


 ケイはたるそうであるが、リーンハルトの言葉にどこか嬉しそうに笑う。憎まれ口を叩くが兄のことが大好きであることは容易に窺える表情だった。



「たぶんオレがこの前大怪我したせいだとは思うんですけど。それに家にいないと寂しいって言われた矢先の入院だったので……。」

「なら妹さんとデートしてあげればいいんじゃないっすか? オレの妹もケンカした時は一緒に出かけてアイス買ってやれば1発っすよ!」

「ちなみにいくつ?」

「12歳!」

「……。」


 果たして大学1年生の妹を12歳の少女と同じ扱いをしていいものか、逡巡しているらしい。





「……。」

「どうしたの、ルイホァちゃん。」


 4人の会話を聞いていたルイホァの肩をオリヴィアが急に叩いたものであるから彼女はびくりとあからさまに驚いた。


「何でもないよ! オリヴィアはお土産決まった?」

「ええ。職場に初めて買っていくから驚くでしょうね。」


 ふふ、と彼女は笑う。



「……オリヴィアは兄弟いる?」

「私は1人っ子よ。両親ともに祖国で医師をしているわ。」

「そうなんだ……。」

「ルイホァちゃんは?」


「……兄が1人。」



 あら、とオリヴィアは首を傾げた。

 溌剌とした彼女からは想像し難い陰鬱な表情で呟くものだから少しばかり驚いたのだ。



「ご両親にお土産とかは買わないの?」

「……母様は、別居してて行事以外では会えなくて。父様はエリア:チャイナの支部長だから、そんなの、要らないって、」

「……?」


 あまりにも辿々しい彼女はどこか怯えているような様子だった。

 そこへ空気を読んでか読まずかエルナとハーマンがやってきた。



「ルイホァ! あんたも決めるわよ!」

「決めるって?」

「せっかくだから現地の衣装を着させてもらって写真撮るのよ! オリヴィアも! 男どもは放っておいてね!」

「そうね、ルイホァちゃんも。」

「え? え?」


 可愛らしい服装をしたエルナに引っ張られながらルイホァは店の奥に連れて行かれた。その様子を見たオリヴィアは安堵の息を漏らす。



「まさか、あの子の地雷が家族にあるとは思わなかったわ。」

「オレもあの研究室でニヨウに絡まれた時に少し知った。」

「あぁ、あの子はスキップで地雷原を走るような子だものね。」



 頭を抱えたオリヴィアがため息をついた。

 店の奥から呼び出された彼女はハーマンに一言断るとそのまま2人に合流した。







「どうどう? みんな!」

「お綺麗ですね。」

「も〜、シュウゴくんは分かってるわね!」


 オリヴィアから放たれた背叩きをシュウゴは避けた。色々と食らって学んだのだろう。オリヴィアはあらあらと残念そうに笑うだけだ。

 クリーム色のサラサラした髪を団子にまとめており、真紅の衣装がよく似合っている。


「ほら、アンタも出るわよ!」

「やめて、エルナ!」


 ズルズルと引きずられてきたルイホァは髪留めで髪を整えており、深緑の衣装と散りばめられた黄色の小花が大人っぽさを醸し出している。

 一方でエルナは濃紺の衣装であり、美女、という言葉がぴったりだった。


「エルナもルイホァも綺麗じゃん。」

「なっ……! あああアンタに言われなくても事実だし!」



 不意にリーンハルトに褒められた彼女は暑さが原因でない赤みに襲われていた。その間にルイホァはハーマンの後ろに隠れた。



「見せないのか? かわいいのに。」

「馬子にも衣装ってやつだよ。もう……。」

「まぁ経験もいいことだ。」


 彼女を背に隠したままにしてくれるあたりさすが最年長、ルイホァは以前のパーティーのようなことにならなくて良かったとホッとしていた。



「……でも、本当に似合う?」


 ルイホァの言葉にハーマンはおや? と思う。

 一切お洒落やそういったものに興味を持たなかった彼女に変化を感じたのだ。


「似合うと思うぞ。」

「……そっか。」



 恐らく笑っているであろう彼女にハーマンも微笑んだ。















 それからは、有名スポットの観光をし、写真をたくさん撮った。食事は費用で出るとのことで皆容赦なく食べていた。リーンハルトは初めて食べたらしい紅芋タルトが美味しかったそうでごっそり買っていた。

 要望に出ていた花火を買ったケイとルイホァ、エルナはテンションが上がってきたようで浜辺にさっさと走っていってしまった。ケイは最近出せるようになった赤い炎を出し、着火していた。

 随分と有効活用をしているらしい。



「花火とか初めてやったわ。」

「そうなのか?」


 リーンハルトは手持ち花火で空中に絵を描きながらからからと笑っていた。どうやら話に聞くとルイホァも初めてらしく彼女もはしゃいでいた。



「でも、仕事仲間とこんな風に旅行するとか考えたことなかったな。」

「旅行じゃねぇけどな。」

「そこは大目に見てよ。」


 はは、とヒロタダが苦笑いを浮かべた。

 体育座りをするリーンハルトはいつの間にか海に飛び込むケイやルイホァ、巻き込まれるシュウゴ達を見ながら薄く微笑んだ。


「まぁ、また来れるといいよな。その時は『Dirty』が壊滅してるといいが。」

「それは僕らの頑張り次第でしょ。」

「そうだなぁ。」



 さて、と手に持っていた花火を片付けようとリーンハルトが立ち上がった時だった。



「リーンハルトさん、帰るんですか?」

「え、いや、花火を捨てるだけ……うわっ!」

「お前も道連れだ。」


 両脇からすでにびしょ濡れのシュウゴとハーマンにつかまれてリーンハルトは宙に浮く。そのまま3人でまとめて海にダイブした。

 目を離した隙に2人も巻き込まれていたらしい。

 ヒロタダはそっとその場から逃げようとした時だった。


「アンタも入りますよ!」

「え?! は?!ちょっと!」


 ケイに俵担ぎをされたヒロタダもケイもろとも海に飛び込まされた。

 海では女性陣がケラケラとお腹を抱えて笑っていた。


「お前らなぁ! 観光していいっつったが節度を持ぶっ!」

「えー? 聞こえないわぁ?」

「エ……ルナお前なぁ!」



 怒っている風にしているがリーンハルトも笑っており、楽しんでいるのは明白だった。

 涙が出るほどに笑ったのはいつぶりだろうか。

 リーンハルトが誕生日にもらったフォトフレーム1号の写真がこの時の写真になったことを他の者が知ることになるのはまだだいぶ先の話である。

【こぼれ話:エルナの印象】


→リーンハルト 自分といつでも真っ直ぐ向き合ってくれる男性、時々危なっかしく感じて心配。

→ヒロタダ よき相談相手、能力や身体強化に関しては仲間意識が強い。しかし負けると悔しい。

→ハーマン 1番まともな大人。無鉄砲なこともしないため安心して一緒に戦える。

→オリヴィア 酒癖を除けば憧れの働く女性。無理をせず等身大で過ごせばいいのにと思う。

→シュウゴ 入隊当初からの気安い仲。憎まれ口も叩けるが最近揶揄われるからちょっと腹が立つ。

→ルイホァ かわいい、本当の妹みたいで大好き。買い物から修行、遊びまで何でも教えてあげたい。

→ケイ 可愛い後輩という感じ。戦闘に関しては尊敬しているがリーンハルトに可愛がられて羨ましい。

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