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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
3章 彼女たちは前を向く

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34.ヨコハマ賭博街の闇 -子夜戦-

※残酷な描写、戦闘描写あり!

ご注意ください!

 エルナは目をぱちくりと瞬かせた。

 自身には何が起きたのだろうか。

 他の嬢も同じらしく、呆然とした。


 真っ白な空間には白い机と、白い椅子が4脚、そしてそのうちの1脚に先ほどの上客の女性が座っていた。


「ようこそ、私の世界へ。まずは、各々席に座って。」

「何でアンタの言いなりに……。」


 嬢の1人が抵抗の意を口にすると、急に上客の女性はドンと机を強く叩いた。


「私が言ったんだからさっさと座れ! アンタが私と一緒にいるって言ったんでしょ!」


 急に怒り、癇癪を起こす女性に3人は固まる。

 しかし、エルナはすぐに2人の手を引いて席に座る。

 その様子を見ると女性は満足げに鼻を鳴らす。


「ずっと思ってたよ。貴女は賢い女って。」

「アンタ、何者なの?」

「私はルリ・キョウタニ。貴女たちがずーっと追いかけてる『Dirty』、紋付の人間だよ。」

「は? 『Dirty』?」

「あれだよ〜、前サイトで動画やってた。」


 エルナはひと睨みして2人を黙らせる。今はそんな呑気な話をしている場合ではない。

 このルリという女は自分のことを紋付と言った。紋付はリーンハルトさえも怪我をしながら戦ったという。

 しかも手の番号を見るあたり、その男よりも上位の人間だ。


「じゃあ早速名乗ってよ。私も名乗ったんだし。」

「私はハナエ……。」

「それだけ?」


 それだけ?

 どういうことだとエルナと、もう1人の嬢が顔を見合わせた時。

 視界の端で、何か白い刺が彼女の胸を貫いた。

 白かった空間は彼女の鮮血でみるみる赤く染まっていく。彼女の身体は椅子ごと床に投げ出される。

 浅い呼吸が聞こえるが徐々に彼女の生命の息吹は潰えていく。


「キャアアアア!!」

「……名乗ったじゃない!」

「偽名を、ね。」


 もう一方の彼女は悲鳴をあげて暴れているが、椅子から離れられないらしくそのまま手足を動かして暴れている。

 机の脚や床に獅子を打ち付けており、美しい手足には次々とあざができていく。

 エルナはそれを見て逆に頭が冷えていくような感覚に襲われていた。


「偽名?」

「そう、私の能力は【liar dead room】。ここは嘘つきに厳しい部屋。嘘つきには死を与える。この部屋の神様は私よ。」

「やだよぉ、怖いよぉ!」


 みっともなく暴れる嬢に冷たい目を向けると指を鳴らす。

 すると彼女は急に小さく呻いて、叫ばなくなった。


「ちょっと、この子は嘘ついてないじゃない!」

「煩いから静かにさせただけ。まだ生きてるよ。でも、貴女が死んだら死ぬ。それだけだよ。」


 彼女は指を立てた。


「10分、私と正直にお話ししよう? それが終われば貴女たちは部屋から出られる。」

「それまでに嘘をついたら死ぬ。それは貴女も、ってことね。」

「勿論。」


 この気絶している女性はせめて救わねば。

 エルナは震える拳をギュッと握り直し、正面に座るルリを見据えた。




「……。」


 シュウゴはおどろおどろしい地下室の雰囲気に呑まれていた。彼方此方からヒトではない何かの呻き声が聞こえる。自然と武器を記載した紙と、能力を使うためのペンを握る手が強くなる。

 個室それぞれを窺うがどこもかしこも化け物の巣窟らしい。

 恐らく折檻、という名の実験台への参加ということだったのだろう。この空間のどこかに売り頭の女性が探していた妹分がいる。

 せめてそれを確認したいと願う。


 真っ直ぐ進んでいくと広いホールにあたる。あたりには毒々しい色の液体が入った水槽のようなものが並んでいた。

 すでに亡くなっているのだろうか、人が入っているものもある。

 液晶を起動させると、PCにはどこかで見覚えのある羅列があった。

 恐らく他の者が見たらそれには気づかなかった。

 しかし、シュウゴだからすぐに気づいた。


「……これ、液体の成分表と機械の操作法。」


 液体を見れば浸透圧も、中和剤もすぐに分かる。恐らくこのまま垂れ流しにして解放してしまえば、検体の人が生きていた場合、死に至る可能性もある。

 オリヴィアに連絡を、と思ったが先ほどから通信機も作動しない上、地上から揺れを感じる。

 仕方ないと父に教わった論文の知識を、自身が学んできた知識を全て想起し、すぐにプログラムを打ち込む。


 もう人が死ぬところを見たくない。


 彼の胸にある想いはそれだけだ。

 時間を持て余した彼は、考えうるハプニングに備えて、素早く紙にあるものを書き込む。


「誰かいるの?! 助けて!」


 地図を書き終えると部屋の奥から声がする。

 シュウゴが慌てて向かうと、和装の折檻に追われたという女性らしき人が7人いた。検体の女性含むと人数がぴったり合う。


「助けるから静かに。あなた達の姉貴分に頼まれてきました。皆さん動けますか?」

「1人は弱ってて……でも息はあります。1人はどこかに連れてかれていて……。」

「たぶん今……。」


 それ以上告げる必要はあるまい。

 デスクへ戻り引き出しを漁ると案外あっさりと鍵束が見つかった。


 鍵を開け、静かに出てくるように手招きをする。

 さすがあの売り頭の妹分、残りの女性達の指揮をうまくとっており無駄に騒ぐことがない。シュウゴの指示通り壁に寄ってくれた。


 カプセルの1つが開くと弛緩した女性が出てくる。


 必要があれば心肺蘇生を行うべきと思い駆け寄るが、温度管理や中和剤がうまく効果をなし、彼女はすぐにむせ込んだ。

 苦しそうにも自発呼吸をすることに安堵しつつ裸の女性にすぐに上着をかけて、妹分に託す。


「意識はあるようだね。」

「時間がありません。早くここから脱出してください。道はこれに、」


 シュウゴは女性達を背に庇い、出入り口に銃口を向けた。


「あ、良かった〜。シュウゴいないと思ったらここに居たんだ。」


 そこに現れたのはセイだ。

 昨日ぶりの彼はいつの間にか私服に着替えており、女装などしていない。


「どうしたの、オレに銃口なんかむけて。」

「あ、アンタの味方かい?」

「……。」

「酷いなぁ、何で無言なのさ。」


 からからと笑っていた彼は警戒を続けるシュウゴに向けてスッと真顔になる。


「理由もなく友人に銃口を向けられてる気持ちにもなってよ。」

「なら、セイも説明すべきだ。」


 セイは口元を歪めた。


「……何でセイは、出会った時からずっと全身に【変身】の能力をかけているんだ?」


 嫌な予感は的中するものだ。シュウゴは通信機に付けたあるものを押した。

 彼はにぃ、と不気味に口角を上げた。


「それはね、オレが『セイ』じゃないからだよ。」




「【地雷】!」

「無駄だよ!」


 地面には雷が走る。

 瞬間的にムカデの動きは止められるも、どうやらほとんど聞いていないらしく、それも一瞬であり、トリスタンまで雷は届かない。加えて、周辺の店が邪魔だった。

 あたりは悲鳴に包まれている。

 特務隊員が避難誘導を掛けてくれているが、まだ人がいるらしい。

 ムカデの脚が人の群れに向かう。


「【雷槍】!」


 ドォン! と落雷のような轟音を鳴らして、雷で尾を地面に縫い付ける。

 たまたま体節の部分に刺さったのだろう、歩脚が気色の悪い動きをする。

 これでムカデはどうにかしたかと思いきや、体の一部が小さな個体となり、ムカデはみるみる分散していくのだ。


「しまった!」

「さぁ、僕を殺すか、人々を救うか、2つに1つだ!」


 だめだ。

 一般人を捨て置けない。


 モニカは足を止めてムカデに全力で雷を浴びせる。

 男が逃げていくのが視界の端に映る。

 しかし、このままではムカデをとりこぼしてしまうし、これ以上距離が離れれば追いかけることが難しくなるかもしれない。


「ルイホァいけ!」


 聞き覚えのある声にモニカはハッとする。

 指示を飛ばした男は指から粘度の高い糸を出してムカデをからめとる。そして、指示を受けた少女はモニカよりも速い速度でトリスタンを追跡する。


「逃すか! 【暴風】!」


 夜の歓楽街各地で爆音やら轟音が響き渡る。

 時計の頂点を短針長針ともに乗り越えた頃、ついに戦いの火蓋が幕を開けたのだ。

【キャラクター紹介】


ルリ・キョウタニ (34話より)

25歳 151cm

黒髪をツインテに縛っておりちょっと毒々しい化粧をしている。大人しいが思い込みが激しい。引きこもりでクリエイター、○ouTuber的なやつ。裏の顔は旧人類や新人類問わず能力で捕まえるシリアルキラー。

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