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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
3章 彼女たちは前を向く

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32.ヨコハマ賭博街の闇 -逢魔が時-

「絶対嫌です!」


 ヒロタダが任務の内容について抵抗するのは初めてだった。

 ちなみに同じ内容を突きつけられたシュウゴは死んだ目をして諦めており、セイはノリノリである。そして、エルナ、モニカ、オリヴィアは真剣に衣装を選んでいる。


 今回の参加メンバーは、ケイを除いたリーンハルト隊に加え、モニカ隊、ヤン隊含めた数班との合同任務であった。


「でも、まさかあのヨコハマ繁華街の一角に賭博街が構成されてたとはねー。この前観光に行ったけど気づかなかったよ。」

「ルイホァが行ったのは昼間だろう? なら仕方ないんじゃないか?」


 のほほんと、対象外となったルイホァとハーマンはその光景を見ながら話す。



 時は遡ること数十分前のこと。

 前回プラントから得た情報より、『Dirty』のジパングにおける資金源を突き止めたと報告が入り、3班が招集されたのだ。


「今回も監査局合同の任務となるわ。

 総指揮はアタシ、ヤン・バーデが行う。よろしくねん。」


 さて、と淡々と低い声で説明を始める。


「今回はヨコハマ繁華街の一角に蔓延る『Dirty』の資金源と思われる『ヨコハマ賭博街』への潜入および組織殲滅を行うわ。

 違法賭博や法に係るような風俗店もあるそうだから、勿論警視庁も噛んでることはお察しの通りよ。

 そして、その幾つか候補に調査を目的に数名ずつ潜入してもらうことになったわ。

 通信はドロシーと監査局の人間が行う。」


 だから、女性が多い班編成なのかとヒロタダは勝手に納得していると、傍らのリーンハルトは何を知っているのか、自分に生温かい目を向けてきた。


「潜入は、まず東海屋(とうみや)に、シュウゴとセイ、Rock'ns cafe にモニカとオリヴィア、LIARS CAGE にヒロタダとエルナ、フェベね。

 東海屋にはアタシが、Rock'ns cafeにはハーマンが、LIARS CAGEにはリーンハルトがバックアップに入る。

 詳細は各隊に伝達済み、確認なさい。あと質問は?」


「あの、質問いいですか?」

「はいどうぞ。」


 まるで予想してたと言わんばかりの速さだ。


「……潜入とは、ボーイで「女装よ。」

「……ぶっ。」


 隣でリーンハルトが小さくすまん、と言った。


「なぜ僕なんですか……。」

「この中でアンタが1番小さかったからよ。

 ちなみにセイは華奢だし、シュウゴは顔がいいからね。」


 セイはケラケラ笑っており気にしていない様子であったが、シュウゴは無言で自身の顔に触れていたあたり、自身の女顔に絶望していたのだろう。



 そして冒頭に戻る。

 スーツを着て老け顔メイクをしたハーマンは呆れたように言う。

 ちなみにルイホァは18歳未満のため、今回はハーマンと親子役になったらしい。あれだけ私生活では可愛らしい服装を嫌がっていたにも関わらず仕事となれば抵抗なく着込んでいるあたりプロだった。


「ヒロタダ、済まないがもう諦めろ。仕事だ。

 きっとボーナスも弾むぞ。」

「そういう問題じゃないんですよ! 男としての尊厳の問題です!」

「えー、もう諦めましょうよ! 案外ハマるかもしれませんよー!」

「……セイ。」


 彼はウィッグもつけており、慣れた手つきでシュウゴの化粧をしている。

 フェベはどうやら上客側としての潜入らしく、リーンハルトは髪染めを行い、その付き人として行くらしい。

 黒髪の彼がヒロタダに話しかける。


「仕事なんだよ。別に俺が行ってもいいけど、体格とかでモロバレなんだよ。

 シュウゴが我慢してるんだしさっさと準備しな。」

「……我慢しなければこの任から解かれる。それで済むならとっくにやってます。」


 彼は父親に似た低い声で唸るように己の上司に恨み言を呟く。

 表情は普段と変わらないが結構怒っているらしい。

 ヴィリが何度も何度も謝っており、彼らの面目を立てるために何とか我慢しているようだ。


 確かに大人げないなと反省したヒロタダは甘んじて役割を受けることになった。




 どうやら、ヒロタダ達が派遣されたところは割合優しい所らしく、気楽なバーのようなところで、お酌が主であった。


「今日から入ってきたヒロコとエルよ! よろしくしてあげてね。」

「エルです。よろしくお願いします。」

「ヒロコです、よろしくお願いします。」


 必死に裏声を使っているが、演技に精通したエルナでなかったら恐らく噴き出したであろう。

 幸いここには訳ありの人間が多いらしく特に追及されることもなかった。


 ちなみにオリヴィアとモニカの行ったところは個室対応もあるなかなかグレーなところらしく、セイとシュウゴが行ったのは和服メインの接客が主のところらしい。


「ヒロコ、アンタ手際いいわねぇ。キッチン入りなさい。」

「はい、ありがとうございます。」


 幸い自身の家事スキルのおかげで、ママと一緒にキッチンの方に入ることになった。

 しかし、忙しすぎて全く調査ができそうにない。

 時折エルナから【転送】による連絡が来るがそちらに気を配れないほどである。


「……ヒロコ、忙しそうね。」

「ママに気に入られたからねぇ。あの子、手際いいし。アンタは愛想いいから接客向きで助かるわぁ。」


 接客担当はホールを綺麗にしてしまえば特にやることはないらしく、皆最後の化粧直しを行なっていた。


「ここって、リスト入りのお客様とかいるのかしら?」

「どうしてそんなこと気にするの?」

「……実は前の店で、ッ。」


 どうやら同僚の女性は勘違いしてくれたらしく背中を優しくさすってくれた。

 ここでこの技術が役に立つとはなぁ、と冷静な自分が呟く。

 すると彼女は声を潜めて教えてくれた。


「ウチは特にそんなヤバイ客はいないんだけどねェ、この界隈で噂はあるわよ。」

「噂?」


「そおそお、何か通り魔的な感じで、若い女の子が殺されてるんですって。しかも、嘘をつくと殺されるらしいのよ。」


「嘘をつくと?」


 彼女は呑気に怖いわぁ、なんて呟きながら語る。

 しかし、エルナはなんとなくであったが引っかかった。


「もうやめちゃったんだけどねぇ、唯一助かった子の話によると、犯人の子に『嘘をついた方が負け』って言われたらしいのよ。

 あとはよくわからないんだけど命辛々ってやつねぇ。

 はい、鏡台空いたわよ。」

「ありがと。」


 まぁ直接的には関係ないだろうなと思いながらリップを厚めに塗り直した。




 一方東海屋に潜入したシュウゴは出勤1日目にして、人生で初めてやる気が起きないという現象にぶち当たっていた。

 友人はすでに順応しており、初日から客をとっているとはいかほどに、と内心で問うていた。


 幸いシュウゴは顔がいいことを目につけられ、店の売り頭である女性の世話役となっていた。

 料理に関してはからっきしであったがプレゼントの仕分けやドレスの整理などは得意であった。


「アンタみたいに仕事の速い子が来てくれて良かったよ。無愛想だけどね。」

「……はぁ。」


 売り頭の女性はにこにことしながらシュウゴに手招きをする。

 そして、彼女は驚くべきことをあっさり言った。


「で、アンタは男なのになんでこんなところにいるんだい? 他の女は誤魔化せてもアタシの目は誤魔化せないよ。」


 すす、とヤンに加工してもらった、喉に巻いている人工皮膚を撫でる。

 ぞわぞわと鳥肌が立ち、思わず退くと彼女は愉快そうに笑う。


「まぁ、アタシの命を狙ってるわけじゃないだろう?」

「……むしろ何かあればお守りします。」

「ならいいけど。そうだ、女装を黙っとく代わりに1つ頼まれてはくれないかい?」

「頼み?」


 任務の詳細について問い詰められているわけではない。

 それなら適当に聞いておいた方がいいだろう、と判断し、彼は頷いた。

 女性は売り物の時と異なる笑顔を浮かべて、シュウゴに耳打ちした。


「折檻って言葉を知ってるかい?」


 折檻ーーのちの戒めのために厳しく罰する、いわゆる肉体的に痛めつけるものだ。

 勉学に勤しんでいたシュウゴはもちろん知っており、眉をひそめた。


「ここは古代日本の遊郭っていうのをモデルにしてるから名ばかりの部屋が元から存在していたんだよ。でも、最近折檻だって言って売り子が7人行方不明になってるんだ。アタシの可愛い妹分も含めてね。」


「それを調べろと?」

「ああ、勿論アンタに自由な時間も作ってやるし、何なら頭特権の、鍵も貸してやるよ。」

「……別に構いませんが、何故そこまでオ、私を信用できるんですか?」


 ふふ、と彼女は得意げに微笑んで見せる。

 そして、シュウゴの胸を指差す。


「アタシも新人類なのよ。【嘘発見機(ディテクター)】、嘘をついたり何らかの隠し事をしているとそこがもやついて見えるのよ。例えば貴方の首元とか、服装とかね。」


 なるほど。

 それにこの世界では随分と有用な能力であるなと感心した。


「アンタは外装以外は全く嘘をついている様子はない。この業界では珍しい、信用しやすい人間ってことさ。ただ……アンタに忠告だよ。」


 シュウゴは彼女が続けた言葉を聞いて、目を丸くする。

 それはすでに彼が薄々想像していた嫌な予感、というやつであり、それを聞いたシュウゴは小さく、そうですか、と呟いた。




「ごめんなさい、オリヴィアさん。何度もフォロー入ってもらって……。」

「大丈夫よ。」


 オリヴィアは戸惑っていた。

 モニカが想像以上に男慣れしておらず、初めの客には夜伽の意味を尋ね、2番目の客には思わぬところで茶を浴びせ、3番目の客はセクハラをされていても気づかず、ついオリヴィアがフォローに入ってしまった。

 正直なところ、オリヴィア自身は上手く回避していたが、モニカは猪突猛進、性に対する知識がなさすぎた。


 しかし収穫はあったのだ。


「この街でも有名どころに気に入られただけで十分よ。マスターも言っていたじゃない。あの男は気難しいと。」

「そうですか? うーんたまたまだと思いますけど。」


 噂によると、かなりきな臭い親父がいるだが、モニカは上手くその男を取り込むことができた。

 オリヴィアの勘だとそういう男は賢い女や勘の鋭い人間を嫌う。いい意味でモニカの素の良さが効いたのだろう。


 2人は2日目まで帰宅許可を得たため、明日のために一時退却する。

 話によれば、東海屋の2人は何故か泊まり、残りの2人も帰宅とのことであるが。男の子2人ならまだ大丈夫だろう、とオリヴィアは諦め.帰路につく。


「そういえば、お客様の噂、聞きました?」

「もしかして、MY TUBE 人気を博している方が時々訪れるって話かしら?」

「そうです。噂によると女の子らしいですよ。エルちゃんと同じくらいの。」

「はぁ、何でまたこんなところに。」


 辺りが気にしない程度の雑談を交えながら進む。

 しかし、オリヴィアが抱いた疑問は任務であるかないか関わらず興味があるものだった。


「詳しくは分からないですけど……。」

「最近の子は時々理解できないことがあるわ。ネタ作りなのかしら?」

「そうですよね〜。エルちゃんにまた聞いてみましょう。」


 2人は疲れた身体を早く休めたいとため息をつきながらそのまま無事、ヨコハマ近くのホテルへと戻って行ったのであった。

 こぼれ話ではありませんがメイン8人の誕生日を更新しました!

 良ければ何の日か調べてみてください。

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