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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
3章 彼女たちは前を向く

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30.落ち着け成人女性

「へぇ……そんなことが。」



 ヒロタダは個室で、先日の件についてエルナとルイホァ、そしてケイに伝えていた。



「でも、そんな解放なんてほいほいできるものじゃないよね? それに簡単にできるなら何らかのヒントが口伝とかで残っててもおかしくないもんね。」

「そんな不確定なことに頼るよりかは地力を上げたほうが効率的だよなぁ。」

「そうね、アンタらはともかくあたしはできる気しないわ。」


 あの場にいた人たちよりも、若者の方が現実を見据えており的を得る発言のように感じてしまう。

 3人は大して興味がないらしく追って質問もなかった。



「じゃあ時間をとらせて申し訳なかったね。ケイとエルナも少ない休みだし、ルイホァも帰省明けで。」

「大丈夫っすよー。久しぶりに暇しててどうしようかと思ってたんで。」



 ケイが扉を開いた瞬間だった。

 急に彼の鳩尾にオリヴィアが飛び込んできたのだ。

 ケイはぐっ、とうめき声をあげつつも彼女に抱きつかれたことを認めると情けない悲鳴をあげた。



「何やってんすか!」

「あら? ルイホァちゃんかエルナちゃんが最初に出てくると思ってたわ。うっかりね。」

「うっかりね、で成人女性が抱きつかないでください!」


 彼女を引っぺがすと赤い顔でヒロタダの後ろに隠れて威嚇をしている。確かに女性に抱きつかれたら思春期男子はこのリアクションだろう。ヒロタダは苦笑する。



「もしかして先週話してたタダ飯ってやつですか?」

「タダ飯!」

「タダ飯?」

「えー、オレらは行けないんですか?」


 三者三様のリアクションを返すとオリヴィアはにこりと笑う。


「そうね、男性はタダ、ではないから。

 いわゆるパーティっていうのよ。ほら、結婚したい人やお付き合いをしたい人が参加するような類のだけど。今回申し込んだのはもっと大規模でフランクなのだから。」

「やけ食いする気だ……。」


 正しくは自棄飲みであろうが、ルイホァの予想は大体あっている。しかし拗れているのは残りの2人だ。


「そっそそそんなパーティなんてふしだらよ!」

「タダ飯なんてそんな上手いことあんのか? 騙されてないっすか?」

「大丈夫だよ。そんな危ないパーティは、さすがにオリヴィアさんも……ですよね?」


「あなたたちは私をなんだと思っているの? ただのホテルビュッフェよ。」



 手近なヒロタダはやんわりと突かれた。

 もう一粗相したら手痛いダメージを喰らうだろう。



「ちなみにケイくん、ヒロタダくん、2人も来られるけど60ドル掛かるわ。あと、そんな服装で行くなんて許さないわよ。」

「60ドル?!」

「……ちょっと興味ある。」

「えっ、なら行こうよー! 私ケイの分割り勘するよ!」

「あたしはしないわよ。」

「さすがに請求しないよ!」



 どうやらルイホァは自分が放置されることを察しているらしくケイを必死に誘っている。ケイはケイで未知なるホテルビュッフェに心が揺らいでいるらしい。

 オリヴィアはその様子を了承ととったらしく、その様子を見て右手にケイ、左手にエルナを携え、歩み始める。



「そうと決まったら買い物よー!」

「「「え?!」」」



 ああ、やっぱりと思いつつも放っておけないヒロタダも足を早め、4人を追いかけた。









「なんで買い物、って思ったらそういうことなんすね。」

「キチッとした服持ってないのか?」

「制服しかないっすね。それに制服さえももう裾足りてませんし。」

「成長期だもんなぁ。」



 ケイ曰く、入学式の時から10cm以上のびているらしく、ジャージばかりで私服も殆ど買わないそうだ。

 自分で払うと言い張ったが、オリヴィアと急にやる気の出てきたらしいエルナに着せ替え人形にされた後、オリヴィアから贈ってもらった。無難に黒のジャケットとグレーのパンツ、シャツはストライプの入ったシンプルなものにしたらしい。

 ちなみにヒロタダは元より今日はスーツで出勤していたため問題なしだ。


 今は女性陣の買い物タイムであり、いやいやというルイホァを半ば抱える形で2人が連行して行った。



「しかも女の人の買い物の長さ元気さヤバくないっすか……ビビりましたよ。」

「僕はあの姉さんがいるからなぁ。ケイは彼女とかいないの?」

「時々告白してもらえますけど部活やってるんで断ってます。それに友だちやアンタらと一緒にいる以上に楽しいって思えそうにないんで!」


 とてもいい笑顔で嬉しいことを言ってのける。

 ヒロタダも少し照れ臭くなり、そうか、と素っ気なく返事をしてしまった。


 するとそこへ半泣きのルイホァが猛ダッシュで走って逃げてきた。再びどつかれたケイはぐっと呻き声を出す。


「もう嫌だ〜〜〜!」

「どうしたんだ?」

「オリヴィアとエルナに着せ替え人形にされた〜!」


 うおんうおんと漢泣きする彼女にケイは呆れながら尋ねる。


「でも解放されたってことはもう決まったんだろ? どんなのにしたんだ?」

「うっ、それは……。」

「綺麗系? 可愛い系? どっちも見てみたいなぁ。」



 ケイの天然発言に彼女は顔を赤くする。

 恐らく言葉にできないらしく、苦し紛れにどすどす彼をどついているが、その照れ隠しに気づいているらしいケイはにこにこ微笑んでいるのみ、悪いやつだ。

 ルイホァは八つ当たりにだむだむと彼の足を叩いている。微笑ましい光景だ。


 暫くするとショップの方から荷物を持ったエルナがやってきた。



「もーっ、なんで急にいなくなるのよ! 今から着替えて化粧して行くわよ! ほら時間無いんだから!」

「やだやだ! 恥ずかしいよ!」


 どうやら本気で抵抗しているらしく、エルナは完全に負けている。

 しかし向こうにはオリヴィアがいる。彼女は容易にルイホァを拾うとうふふ、と微笑んでドレスルームに2人を引き連れて行った。


「ケイも着替えてきたらどうだ? ワックスも貸すよ。」

「マジっすか! オレあんまりいじったことないんです教えてくださいよ!」

「僕もそんなに器用じゃないけど……。」


 そんなことないっすよ! と明るく言うと、男性陣も着替えに行く。










 ここからホテルは近場のため車を置いて男性陣は先にホテルに向かう。

 にしても、と隣のケイを見上げる。

 長身だし、髪を整えたせいで、普段より大人びて見える。

 その視線に気づいたケイはにぱ、と笑う。笑顔は相変わらず子どもだなぁと思いながらヒロタダは笑う。



「どんな飯あるんすかねー。」

「そればっかだな。一応このパーティは出会いの目的もあるからな。」

「えー、興味ないっすよ。オレ、ルイホァとエルナさんで手一杯なんでヒロタダさんオリヴィアさんの面倒見てくださいね。」


 つか、と彼はあっさり驚くべきことを言ってのけたのだ。


「エルナさんもリーンハルトさん好きならこんな所に来てる場合じゃないと思うんすけどね。」


 そう思いません? と彼は言う。


「……それ、本人に聞いたのか?」

「いや? たぶん気づいてないと思いますけど火を見るより明らかじゃないっすか。……まさか、ヒロタダさんも気づいてないとかじゃ。」

「いや、もしかしたらな、って思ってたよ?」

「何がよ。」



 突如現れた渦中の人物に2人はぎゃっと情けない声をあげる。

 姿を見せたエルナは、意外なことにオールインワンのパンツスタイルで、いつものコンサートとはまた違った雰囲気だった。



「すげー、大人っぽい! 普段の服もおしゃれっすけど綺麗っすね!」

「ふふ、アンタらもこれくらいしっかり褒めないと。」

「耳が痛いよ……。」



 ケイに素直に褒められ、得意げな顔をする。

 そして後ろから綺麗めのレーストップスにスカートを合わせたオリヴィアと、白いブラウスにフレアスカートを合わせたルイホァがもじもじとしながらやって来た。



「どうかしら。」

「綺麗ですね、さすがオリヴィアさんです。」

「コピペみたい。」



 エルナが先ほどから手厳しい。

 先ほどから黙っているケイを見遣ると彼はルイホァの前で固まっていた。おや、と思い3人が覗き込むと急にケイは動いた。



「……そんな見ないでよ。」

「あ、ごめん。その、似合ってる。」


「「……。」」



 まるで少女漫画を見ているようだ。

 エルナとオリヴィアも同じことを思ったらしく、にやにやと2人を見ていた。










 それからパーティ会場に着くと、オリヴィアは酒を取りに行くと言って離れてしまう。

 大方、男性と話しているのだろう。

 ヒロタダとエルナは一応周りと雑談は交わしたものの特に実りはなかった。残りの2人は花より団子、食事しかしていない。



「わー、ご飯おかわり取りに行っていい?」

「いいけどケイと行きなさいよ。」

「えっなんで?」

「いいから。で、ケイも、2人でこれをつけて行きなさい。」


 2人にネックレスを渡す。

 ケイはデザインを見て明らかに表情が曇ったが、ルイホァはシンプルなデザインが好みだったのか、パァッと表情を明るくした。


「お揃いだ! 嬉しい、ありがとう!」

「いや、オレとお揃いでいいのかよ。」

「ん? いいよ! 私友だちとお揃いのって持ったことなかったんだ! それにエルナとも、だよ?」


 ルイホァの言葉を聞いて状況を理解した彼は顔を真っ赤にした。

 行くぞ! と拗ねたようにズカズカ大股で料理の方にルイホァを引きずりながら行ってしまった。



「さすがにかわいそうじゃないか?」

「少しくらいいいじゃない。2人とも素直で可愛いんだもん。」


 遠目で2人を見ているといつの間にか引っ張る方が変わっており、ケイも次第に力が抜けてきたようで楽しんでいるように見える。

 男女ともに視線が2人に集まっているものの、2人の距離感やお揃いのアクセサリー、腕時計ー通信機であるがーうまく効果を発揮しているらしい。


「でもオリヴィアもめげないわよねー。全然付き合う気ないのに無理に付き合おうと頑張ってる感じ。」

「分かるのか?」

「逆に分かんないの?」


 女性の勘というやつなのだろうか。

 それとも自身が配慮不足なのか、うんうんとヒロタダは悩んでしまう。しかも、先日の婚約者の話を聞いた後だと尚更複雑な気持ちになってしまう。



「……女の子はねぇ、恋に恋してる時があるのよ! もしくはしてないとやってられないっていうか。」

「そうなんだな。勉強になる……。」


 恐らく積み重ねに乏しいであろうヒロタダに、エルナは大して期待をしていなかった。


「……エルナはいいのか?」

「別に興味ないわ。バーのお客さんの方がよっぽどかっこいいし。」

「リーンとか?」

「はぁ?! 何言ってんのよ?!」



 脇腹に結構強めの1撃を喰らう。

 これで自覚がないのか。

 ケイもすぐに仕返しをするだろうと、ヒロタダは内心で笑っていると、ルイホァが慣れない靴でひょこひょこしながらこちらへ駆け寄ってきた。



「オリヴィアが暴走してる!」

「「……。」」



 エルナもヒロタダも、まだ1時間くらいしか経っていないのに、と思いつつ仕方ない先輩か、はたまた絡まれている人を助けに重い腰を上げた。


 エルナが、ただの飲んだくれかも、と呟いたことを、ヒロタダは暫く忘れられそうになかった。

【こぼれ話:恋愛】


 オリヴィア、ヒロタダ、エルナは自他共に好意に気づくタイプ、ハーマン、ケイ、ルイホァは他人の気持ちには敏感、リーンハルトとシュウゴは自他共に鈍いタイプです。

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