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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
3章 彼女たちは前を向く

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27.プラントへ

「お、珍しいメンバー。」


 リーンハルトとヒロタダがジパング副支部長のゴーシに呼び出され、セキュリティゾーンの会議室に向かうとそこには監査局長とヴィリをはじめ、同じ隊のオリヴィアとハーマン、査定の時に一緒になったパウル、セイ、モニカ、ヤンがいた。


「無駄口を叩くな。さっさと座りなさい。」


 ゴーシが苛立ったように告げる。

 ヴィリが鋭く彼を睨むと不機嫌そうに睨み返す。彼は先日パワハラを働いた別部署の職員を正論の嵐でめったざしにしたという噂がある。成人したばかりにも関わらず実力も知識もある彼らしい噂だった。

 そして同時に、彼がいるということは極秘の任務なのであろう。


「では、今から今回の任務を説明する。今回はここにいる8人のみの任務だ。このメンバーであればむしろ余計な隊員がいない方が問題が少ないと判断した。今後、活性化する『Dirty』の活動に対して、徹底的に拠点を叩きに行くこととなった。すでに先日パウルの班で地方の拠点を叩いた。」

「はい。ですが、先日の事件のように幹部級は遭遇せず然程重要な拠点とは思えませんでした。」

「そうだな。プラントについてはダミーが多い。」

「……なぁ、リーン。プラントって?」


 前の方でパウルとゴーシがあーだこーだと話し始めてしまい、ヒロタダは置いてきぼりだ。

 その隙を見てヒロタダが小さく尋ねるとリーンハルトがああ、と同じように小さく返答する。


「この前のテレビ局襲撃事件、あの時の前線にはキメラっつー化け物が用いられていた。」

「キメラ?」

「いわゆる遺伝子組み換えや、種と種の後天的な複合により、在来種と異なるものとなった生き物だ。」


 いまや生物学の世界ではクローンやキメラはよく話題になるが、倫理的に喜ばしくないと長年議論が湧き上がっている。

 それを聞きつけたらしい、同じく退屈していたセイがヒロタダへの説明に加わる。


「どうやら『Dirty』にも生物学者がいるらしいんだよね。それを生成しているいわゆる研究所みたいなところが、プラントと呼ばれる拠点。だけどそれだけ重要な拠点だから偽物も多い、ってわけ。」


 それにね、と彼はヒロタダの肩に肘を置いて偉そうな態度のまま話し続ける。


「キメラは大概、抗体反応で死ぬか、生き残っても脳の活動が落ちて理性を失った獣になったり、はたまた生物としての何らかの機能を失うことが多い。成功はほんの4%と言われている。」

「先日の事件で出現したのはその失敗作、保管場所に困って放出した、っていうのが主だろうな。」


 一瞬セイとリーンハルトの視線が泳いだが、その意味はヒロタダには推し量れなかった。


「正規の学会では、大概同種の混合をした実験結果が発表される。例えば犬と犬、犬種だけ違うとかね。

 でも、アイツらは違う。例えば犬とヒト、狼とヒト、旧人類と新人類、はたまた、ね。」

「……そんなことが。」


 現代において品種改良など当たり前だ。

 しかし、旧人類しか存在しない時代から、より優れたモノを生み出すために、生物学の進展と倫理の問題でぶつかりながら試行錯誤を繰り返してきた。


「特に戦争の時は実験が活発だったよ。新人類より優れた新人類を、ってな。悲しいことにどちら側も躍起になっていた。だからこそ、当時特務隊も責められたんだけどな。」


 リーンハルトは悲しげに、何かを思い出すかのように呟く。

 その傍らに立っていたオリヴィアも顔を伏せる。

 しかしその話を区切るかのようにゴーシがこちらに向けて声をかけてきた。


「そちら、そろそろいいか? 先日監査局情報部より、先週稼働していたプラントの情報が入った。ちょうどテレビ局襲撃事件とほぼ同時期のため、すでに捨て石となっている可能性も高いがな。」

「一応、監査局筆頭の隠密部隊は揃えている。活動が確認でき次第、いつでも出動できるようにしている。それにこの後、資金ツテの方の一斉潜入任務も控えてますしね。」


 それはまた後日、とヴィリは書類を見ながら報告する。


「では今から現場の位置について知らせよう。決行は今夜、23時より開始だ。」

「「「了解。」」」



 それから8人は現場に向かった。

 トーキョーから、ワープホールで近場のターミナルに向かい、そこから徒歩だ。騒がない程度に会話をしながら進んでいく。

 今回の隊長はパウルであるが、彼が筆頭で話しているから問題あるまい。


「セイはキメラに会ったことあるのか?」

「えぇ〜、そんなこと聞く? ユーマニティ戦争の戦場にいたら少なからず見てるよ〜。それに、ヒロタダも常に会ってるけどねぇ。」

「そうなのか?」


 確かにシンジュクの事件で関わったが直接は見ていない。

 ヒロタダが考えていると、セイがそれじゃなくて、と少し困ったように言う。

 ふと隣のオリヴィアに目を向けると彼女は先ほどから一切口を聞かない。


「オリヴィアさん、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」


 ヒロタダが声をかけると彼女はびくりと肩を震わせ、急に顔を上げた。

 そして普段通りの、診察の時と同じような笑みを無理やり貼り付けた。


「大丈夫よ。昨日の仕事が難しい案件でね。……うん、大丈夫。」

「そう、ですか。」


 それ以上聞いてくれるな、という表情をしていた。

 先程からよくよく見てみると、パウルとリーンハルト、ヤンは会話をしているがどこかピリピリしている。

 そして、モニカも黙ってはいるが、どことなく集中しているように感じた。


 その様子を窺っていると、ヒロタダの背中を不意にハーマンが叩く。

 危うく声を出しそうになり、責めるように彼を睨みつけたが、ハーマンは至っていつもの様子だ。


「お前まで不安になる必要はない。そんな気にしてやるな。」

「……そうは言っても。」

「そーそー、ヒロタダは深く考えなくていいの! 悲しいことを背負うことが全て正しいわけじゃないしさ。」


 セイは微笑む。


 その時、パウルが止まったため、全員が歩みを止めた。

 目の先には廃工場がある。

 突入の時間まであと10分だ。

 人の気配は殆どしない。


「手筈通りいく。」


 パウルの言葉でセイとハーマンが先陣へ跳ぶ。

 その後ろにリーンハルトとモニカ、ヒロタダとパウル、オリヴィアとヤンが続く。


「3、2、1」


 突入! というパウルの鋭い声で、作戦は開始された。

【キャラクター紹介】


ゴーシ・テルシマ (13話より)

43歳 183cm

好きなもの:盆栽、絡繰弄り

嫌いなもの:仕事ができない奴

ジパングの特務隊副部長。性格は厳格であり良くも悪くも真面目。プライドも高い。周りからは気持ち悪いほどにシノブを敬愛しており恐ろしい程にストイックと評されている。実際に仕事の正確さ速さは群を抜いている。

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