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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
2章 還らざる者から紡がれる

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24.マスメディアは正義か? -命のやりとり-

※戦闘描写、怪我をするような描写が多々あります!

苦手な方はご注意ください!

 リーンハルトとヒロタダは恐ろしいまでに順調に上階のメインスタジオ付近まで進めていた。

 シュウゴが予想したエンカウントポイントはほぼ合っていたし、ケイ達の制圧も十分過ぎるほどに早い。


『リーンハルト、聞こえるか?』

「どうした、ハーマン。」


 リーンハルトはヒロタダの進行を手で遮り、ハーマンに応答する。


『今回の主犯はローベルト・カバコフという男。能力の詳細は不明だが、逆らった奴らがアイツに首を絞められたら服を残して消えたらしい。他にも布を絞るような様子で締め殺された人間もいたそうだ。前線も苦戦しているみたいだが、中断してオレ達で援護に向かうか?』


 ハーマンの問いに少しばかり考えを巡らすがすぐに彼は答えた。


「大丈夫だ。仕事を終えてから援護を頼む。」

『了解した。紋付かもしれないから気をつけろよ。』


 それだけを言うと通信は切れた。2人は小声で話しながら再び歩き始める。


「リーン、紋付って何だ?」

「『Dirty』にも幹部、っつうのか? 順位があってな、上の7人、組織では七賢人って呼ばれてる奴は身体のどこかに大文字の『D』が刻まれている。そしてその下位、おそらく10人程度は小文字の『d』と数字が入ってる。確か数年単位で補充されるんだったかな。」

「やっぱり強いのか?」


 彼はああ、と即答した。


「先の戦争で、当時のパウル、モニカ、ヤン3人掛かりで1人、ウルツがだいぶ昔に相討ちに近い状態で1人、七賢人をやれたくらいだ。オレは追い返したらしいが、自分の能力の暴走で救われたようなもんだしな。候補者も、能力の相性次第かもな。」


 それ程までの実力者を確保しているのかとヒロタダは困惑してしまう。

 しかし、彼はそんな敵を目の前にしても全く動じた様子はない。


「やらねぇと誰かがやられるし、誰かがやらなきゃいけない仕事だ。オレに誂え向きなもんだよ。ただ、人を守る余裕はないだろうから頼むぜ。」

「ああ。」


 ヒロタダは頷く。

 初めて出会った時、籠城する強盗達の様子を探るときのように中を伺おうとした時であった。


「待っていたよ、リーンハルト。入っておいで。」

「……なんで、」

「まぁ、だろうな。」


 リーンハルトは一切臆さずに部屋に入る。

 入った途端、勿論銃撃による歓迎を受けたがリーンハルトは一瞬で氷の壁を張った。


「あは、さすがだね。リーンハルト。」

「はっ、気色悪い顔になったな。元モデルのローベルトさんよ。」


 リーンハルトは挑発しつつも部屋全体の様子を確認する。

 アナウンス席にいるのは、つい最近見た顔、ヒロタダの姉のユイだ。そしてスタッフが数名、拘束されたらしいスタッフも10数名がいる。おそらく、新人類であろうことは見て取れた。


 ヒロタダの角度からだと人質の手首の拘束具も確認できた。

 どうやら衣類のようで、先ほどのハーマンの情報通り、衣類が食い込んでいるような人もいた。

 そして、ローベルトと呼ばれたウェーブヘアをした逞しくも中世的な男の右手には確かに『d』の文字が記されていた。


「あは、君を殺すことができて嬉しいよォ!」

「オレもだよ!」


 ヒロタダは咄嗟に横に抜ける。この2人の戦い、自身が足手纏いになるのは間違いがなかった。

 リーンハルトが指から水の弾丸を次々と放つ。壁は抉れており、それをギリギリのところであるがローベルトが避けていく。

 それをリーンハルトが追いかける。

 その隙にヒロタダはスタッフの拘束を解こうとする。

 しかし、ますます締め付けはきつくなるようでスタッフは悲鳴を上げた。


「痛い! 痛いよぉ!」

「す、すみません!」


 なら、と思い、能力【無効化】を放つ。

 予想通り、彼の拘束はみるみる緩み、彼は一気に肺に空気を入れるように大きく息を吸う。

 顔色も悪い、ギリギリのところであったのだろう。


「大丈夫ですか?」

「げほっ、ぁ、ありがとな。他のやつも、ユイさんも頼む。」

「分かりました。可能であれば部屋からの脱出も開始しましょう。」


 コントロールウォッチをつけているあたりこの人は新人類なのだろう。

 ヒロタダは手際良く、他のスタッフの能力も消していった。


「……ほぉ、珍しい能力だねぇ。」


 リーンハルトの猛攻を回避しながら、ローベルトは感心したように呟く。

 方向転換のために壁を蹴ったところで床から氷山の一角のような、氷の塊が出現する。しかし、ローベルトは器用にも、まるでスケートをするかのように円錐を滑ると、そのまま踏み込みリーンハルトに急接近する。


「ほーら、タッチだ!」

「!」


 彼の人差し指が、リーンハルトの肩に触れた。

 そして、彼が能力を発動させようとしたと同時に、リーンハルトは自身で口の中を噛み切り、己の血液の混ざった水を彼の顔面に吐き出す。


「ぎゃあああ! 汚らしい!」


 その水は一瞬で凍ったが、ローベルトの手が触れるとみるみる小さくなった。

 視界で捉えることが許されると、目の前にはリーンハルトの脱ぎ捨てた上着が転がるのみで、人質もアナウンス席のユイと、初老の男のみとなっていた。


「……ッ、リーンハルトはどこに、」


 背後から突如、寒気が襲ってきた。

 それは氷によるものか、殺気によるものか、それは定かではないが避けなければまずいと本能的に感じた。


 しかし、リーンハルトの速度はその嫌な予感を上回り、回避動作に移った彼の肩を氷柱が貫き、血が噴き出す。

 身を翻したローベルトはリーンハルトに触れようとしたが、リーンハルトは彼の背中を蹴り再び距離を取った。


 タンクトップになっているリーンハルトの腕は、何かに握られたような、内出血痕が残っていた。


「……お前の能力は【手で触れたものを小さくする】とかだったな。ようやく思い出してきたぜ。」

「インタビュー記事、覚えててくれたんだ〜。嬉しいなぁ。」


 流血しているにも関わらず、気味の悪いやつだと、内心で毒づく。

 ローベルトはゆらりと蠢くと、アナウンス席に対して何かを投げるようなモーションをする。

 リーンハルトの頭の中で、懸念していたことがおそらく事実であろうと警鐘が鳴り響いた。


「小さくできる、ってことは大きくもできるってことだよ!」

「ヒロタダ!」


 向かってきたローベルトの手をギリギリで避ける。

 髪がかすった気がしたが、それどころではない。リーンハルトは視界の端に巨大化した氷山のカケラを認めながらもローベルトの右手を掴み、橈骨を折るつもりで思い切り拳を突き上げる。


 嫌な音がした。

 ローベルトが掌を返してきたため、一度手を離し、距離をとる。


 一方で、氷山をギリギリのところで水に戻すことが叶ったヒロタダは肝を冷やしていた。

 アナウンス席の2人は幸い水を被っただけで済んだ。ユイはすこぶる顔色が悪かったが、幸い肩で息をしていた。しかし、初老の男性は今の衝撃で気絶してしまっていた。


「スタッフの人は避難させられたけど……!」


 幸い皆動けるが、怪我をしている者も多く、とりあえずのところ廊下の、見回りが来ないであろう場所に籠城してもらっていた。


「エルナ、シュウゴ、聞こえるか?」

『聞こえるわ。交戦中ね? 人質は?』

「こちら人質2人残して廊下で避難させている。誰か呼ぶことはできそうか?」

『あたし達も避難誘導しているから、【共感】でみんなに声かけてみるわ。』


 手短に告げると、通信は切れた。

 理解が早くて助かる。

 そしてヒロタダが2人の方に視線を戻すと、何やらローベルトが武器を取り出したようで、すでにそれを構えていた。


 銃口はリーンハルトと、人質に向けられているようだ。

 こちらに気づいたリーンハルトと視線を交えた。


「ねぇ、リーンハルト、知っているかい? 最近の発明はすごくてね、今や能力を弾に詰めることもできるようになっているんだよ。」

「……ほぉ。」


 確かに、前回のエルナとフェベとともに向かったワープホールステーションで似たような爆弾を見かけた。

 あんな小さな弾丸にも汎用できる技術となっていたのか、と敵ながら見事な技術であった。


「なら何か、お前が持つ2丁の拳銃にはその弾が含まれてるっつーのか?」


 見たところ、オートマチック式の拳銃だ。リボルバー式と比べても残弾も多い。こんな時に詰まりなんて祈るのもお門違いだろう。

 リーンハルトは目と、足にゆっくりと力を入れる。


 しかし、ローベルトは不気味に含み笑いするだけであった。


「……そんなつまらないことをするわけないだろう。

 半分は適当に実弾を入れた。メガネの能力を使っても半分しか落とせない。」


 自身のピストルを握るが、どう考えたって自身の技術では素早く撃ち抜くことなんてできないし、失敗すれば延長線上にいるリーンハルトに当たる可能性だってある。


 それなら、とじりじりと人質の方に動く。

 自分ができる、最大限の身体強化を。

 ヒロタダは集中した。


 人質もおり、動きを止めている殺気立ったリーンハルトの方に集中しており、ヒロタダの動きはほとんど認知されていないようだ。


 なら、今自分が守るしかない。

 怖い、怖いけど。

 痛いのも嫌だ、でも、姉さんが傷つく方がもっと嫌だ。


「……ッ!」

「死ね!」

「姉さん!」


 3人がほぼ同時に動いた。

 ヒロタダは能力を剥き出しにして姉、男性とローベルトの間に立つ。

 ローベルトはリーンハルトとヒロタダに向けた拳銃の引き金を引く。


「【氷像化】!」

「【無効化】!」


 リーンハルトは7弾のうち急所から遠い3弾を被弾しながらも濡れた床を伝い、ローベルトを足元から、まさに言葉のまま、一瞬で口元ギリギリまで凍らせてしまう。


「ヒロタダ!」


 悲鳴に近い、知ったものの名を呼ぶ声がした。

 ローベルトが動かないことを目視で確認すると、その声の主を見る。どうやらローベルトが凍結されたことで能力が解けたらしい。

 ユイが床に倒れ込むヒロタダに涙を零しながら寄り添っている。


「ヒロタダ!」


 リーンハルトも思わず駆け寄る。

 しかし、彼の四肢はぐったりと投げ出されており、見覚えのある眼鏡はひびをこさえたまま床に放られていた。

【キャラクター紹介】


ローベルト・カバコフ

31歳 184cm

短い金髪であり長い前髪にパーマをかけている。美意識が高く、元モデル、ややナルシスト。ゴシップをすっぱ抜かれたためメディアを恨んでいる。家族も失って打ち拉がれている時に勧誘を受け、Dirtyの有言実行する組織力に惚れて迎合した。



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