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Psychic Rulers 〜能力者たちの語りき話譚より〜  作者: ぼんばん
2章 還らざる者から紡がれる

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23.マスメディアは正義か? -成長-

※戦闘描写があります!

『緊急度高、至急リーンハルト隊は任務にあたれ! 場所はモジテレビ、至急、至急!』


 訓練場にいたヒロタダは顔を青くする。

 モジテレビ、確かそれはアナウンサー兼ジャーナリストの姉が局入りする場所だと言っていた覚えがあった。

 近くにいたリーンハルトは何か心当たりがあったのか、ハーマンと視線を交える。


 テレビ局の電波ジャックが巷では話題だ。それに伴い、特務隊にも出動要請が出ていた。今回もまた、リーンハルト班は全員出動している。特に先の任務のことがあったケイとシュウゴについては口にしないが明らかに気合が入っていた。

 リーンハルト班以外の隊も2班出動しており、表口から突入するそうだ。彼の班は裏口から全員で潜入という形になる。


「この放送って5月1日に流れてた動画サイトの映像の一部だよな。」

「そうだな。」

「この不協和音、っていうのかしら。気持ち悪い。」


 エルナは嫌悪感を露わにする。

 一方でシュウゴは一切の興味を示さずに地図を黙々と読み込んでいた。加えて何やら書く作業をしていた。

 その作業を見守っていたハーマンが口にする。


「今回の作戦はどうするんだ、リーンハルト。」


 その言葉に全員がリーンハルトの言葉に耳を傾ける。


「まず基本のツーマンセル、オレとヒロタダは本隊援護、ハーマンとルイホァは見回り殲滅、オリヴィアとケイは電気系統の奪取、シュウゴとエルナは戦況の伝達。」

「「了解。」」


 リーンハルトは続けた。


「ハーマンとルイホァは生け捕りが難しければ、容赦なく命を奪え。ケイとオリヴィアはとにかく早く。エルナとシュウゴは、あの査定の時みたいに敵を避けながら戦況確認、可能であれば人質の誘導を頼む。ヒロタダは人質誘導を優先で。」

「分かった。」

「あの、みなさん、これ。」


 次いで、シュウゴがそれぞれに手渡したものは1枚の地図だ。

 それを見た一同は、目を丸くしてシュウゴを見つめた後、彼の意図を理解してすぐに地図の確認を行なった。



 内部への侵入は本隊部隊の突撃の30秒遅れで開始される。

 通信機からカウントが聞こえたと同時に正面玄関から爆音が聞こえる。

 規定通りの時間に8人も一気に侵入した。

 先頭を走るのはケイとオリヴィア、ほぼ同時にリーンハルトとヒロタダ、少し遅れて別の道にハーマンとルイホァが、ゆっくり進むのはエルナとシュウゴだ。


「なんだお前ら!」


 見回りの人間と1番初めに出会ったのはケイ達だった。

 彼はブレーキを掛けることなく、そのまま身体強化により、身を翻すとその人間の頭部に踵落としを入れた。運動部の彼から放たれる蹴りは重いものであったろう。

 その男の後方を歩いていた援軍2人はオリヴィアが手刀と回し蹴りであっさりとのしてしまう。


「やっぱり知っていると対応がしやすいわね。」

「ちょっと距離はあるけど、こっちの方が早いっすもんね。さすがシュウゴさん。」


 彼らが受け取った地図は効率よく敵に遭わずに制御室まで向かうことができるルートが書かれた地図だった。確かに遠回りであることに間違いはないのだが、敵の位置的にこちらの方が明らかに円滑に進めるルートだった。

 2人はものの数分で制御室に着いた。

 そこにはもちろん3名ほど、『Dirty』側の人間がいた。


「こちらにも侵入者が……。」

「構わん! ガキと女だ、殺れ!」


 しかし、ケイはあの時の、地下鉄での戦いと違って落ち着き払っており挑戦的に笑った。


「痛い目見んのはそっちだぜ、おっさん。」


 彼は【黒炎】を放ち、彼らの手元に持たれた銃を的確に燃やした。

 男達は悲鳴をあげて落とす。

 ケイは迷いなく、最も体格に恵まれない男に接近し、鳩尾に蹴りを叩き入れる。そして器用に、最も体格の良い男に対して手を向ける。


「【黒炎柱】!」


 彼の手から真っ直ぐに炎の柱が放たれる。

 一点集中にしたことにより、スピードも威力も上がっていた。

 男は力なく倒れ込んだ。


「はーい、ご愁傷様。」


 完全にケイの方に注意が向いていた男を、オリヴィアは即効性の強い麻酔針を腹腔に刺した。


 それからケイは3人に簡便な拘束具を装着する。首に装着すればボタン1つで操作できてしまうものだから、ハイテクである。

 一方でオリヴィアは手慣れた様子で制御盤を操作する。医学に加え博識なものだとケイは感心する。


「これでOKね。あとは合図に備えて、ケイくんは敵襲に備えて。」

「了解っす。」


 部屋の角に男達を集める。

 すぐさまオリヴィアから一斉送信で制御室制圧完了と連絡がいったようだ。




「くっそ、正面の奴らが押されてるらしい!」

「さっきから見回りの奴らも連絡が取れねぇ。」


 見回りの女と男が通信機に触れながら苦虫を噛んだような表情を浮かべて呟き合う。


「どっちに行く?」

「そんなの、ローベルト様のところに決まって……、ぁ。」


 え、と男が振り返ろうとしたときには首を細い糸のようなものがキリリと締め付けていた。

 視界の端で捉えたのは返り血を浴びた男だ。


「騒いだらこのまま糸でお前の首を切る。他の奴らの命も繋がっているからな。」

「キャアアア!」


 女の方は通信機を投げ捨てて慌てて逃げ出す。

 しかし、それを追いかけたのは風を纏ったルイホァだ。


「静かにしてね、お姉さん。」


 猛烈な風の突撃を食らった女は床に叩きつけられる。頭部を打った影響で脳震盪を起こしているようで、容易に拘束具をつけることができた。

 男はその様子を見て、逃げることは叶わないと悟ったようで体を弛緩させた。


「能力を発動させたら殺す。武器を見る限りお前の能力は、攻撃に特化したものではないな。」


 さらにキリリと閉まる首に彼は小さく悲鳴をあげる。


「……どうせ無駄だ、何人揃ったってローベルト様には勝てない。」

「そんなことはお前が決めることじゃない。結果が全てだ。さて、そんな戯言を溢す暇があるならーー。」


 小さく、囁くように言う。

 そのハーマンの言葉を聞いた男はみるみる顔を青くし、口を素直に動かした。




「シュウゴ、人質のことなんだけど。」

「……どうだった?」


 エルナは少し考え込むような様子を見せてから口にする。


「倉庫にもたくさん人がいるみたいだけど全く動いてない。動いている人は2人。どう思う?」

「大方脱出し損ねた能力のない人だろうね。動いている2人は最低限の見張りだろう。」

「どうする?」


 エルナのどうする、には2つの意味が含まれていた。2人で助けに行くか、増援を待つか、だ。

 判断をしかねている彼を見遣ってエルナが続ける。


「……恐らく前線は五分五分、オリヴィアとケイは制御室付近、見回りはまだいるからルイホァとハーマンも任務は終わってない。」

「なら、2人で行こうか。たぶん、相手は拘束系の能力者と攻撃系の能力者だと思う。後者をどうにかできればオレ達2人でも行けると思う。それに、今回は全くの無策ってわけじゃないから。」


 表情は全く変えないが、彼は自信ありげに言う。査定の時やテロ事件明けはどこか不安げな様子が見られたが、そんな雰囲気は微塵も感じられなかった。

 2人は見回りが通らない道をうまく選択して進む。途中で作戦の確認をし、倉庫に接近した。


 エルナはシュウゴの指示通り、相手の位置を探る。どうやら壁を隔てて向こうの部屋に人質達はいるらしい。それは2人にとって予想の範疇だった。

 そして、1人の動きが止まった時、作戦を決行した。


 エルナはシュウゴが作った録音機を再生させる。

 そこからは来る途中で録音した見回りの人達の足音。それと同時にシュウゴがドアを蹴破ると勿論見張りの男達の視線は出入口に向かう。

 しかし、シュウゴは怯むことなく持てる限りの発煙筒を投げつけた。


「何だこれ!」

「神経毒か?!」

「……ただの発煙筒だけど。」


 シュウゴの言葉と同時か、室内のスプリンクラーが作動した。

 彼は事前に倉庫の天井が高く、煙を感知して作動するタイプのものと知っていた。

 床が水浸しになるのはそう時間はかからなかった。シュウゴは能力ですぐさまスタンガンを作り出し、最大出力の状態で投げつけた。


「「ぐああああ!!」」


 男達の断末魔に近い叫び声が響き、閃光が飛び跳ねる。

 しかし、この男、部屋から出てあっさりと防音性の高い扉を既に閉めているのだ。シュウゴは時計を見てカウントを終えると扉を再度開き、銃を構えて体格の良い男に撃ち込む。

 数ヶ月前まで戦闘の経験のない男とは思えない的確さだ。

 小さい方の男は完全に気絶しており、スプリンクラーが止まったことを確認したエルナが拘束具を装着する。勿論、長靴を身につけている。

 シュウゴも同様に大男に装着して、早々にスタンガンを回収する。既に壊れているようであり、感電しないようゴム製の袋に回収した。

 それから人質のいる扉を開くがシュウゴはすぐに異変に気付いた。


「エルナ、待ってて。赤外線受信の爆弾がある。」

「え、どうすんのよ?」


 エルナの疑問に答えるより早く彼はその感知器を跨ぎ、手慣れた様子で解体を始めてしまう。


「はい、できたよ。避難を始めようか。能力切れてみんな起きてくれそうだし。」


 シュウゴの言った通り、何人かからうめき声が聞こえてくる。幸い、見回りの敵達も気付いていない、または殲滅されているようで脱出は容易そうだ。


「アンタ、凄いわね。この短期間で……。」


 エルナが思ったことを素直に言うと、シュウゴは少しばかり驚いた顔をすると、平然として答えた。


「もう、犠牲者は出したくないし。怪我するとみんなに怒られるからね。」

「……そうね。」


 彼も変わっているのだなと思いつつ、同意の気持ちも込めてエルナは頷いた。

【こぼれ話】


 テレビ局は各国で異なりますが、チャンネル数は同じに設定されています。

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