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二人の魔法師と五つの魔導書  作者: 手鞠 凌成
一章 戦闘訓練
6/23

戦闘訓練その3

戦闘訓練その2の続きです。

 ……………。


「――――くっ、《聖なる精霊の恩恵よ・我が手に宿り、解放せよ》」


 瞬間、レスティアの身体に光が纏うと、ゆっくりと地面から離れ、上昇していった。


 正にそれは天へと向かう天使、否、女神その物であった。纏った光は神々しく輝いている。


土の巨兵(ゴーレム)】は更なる追撃をレスティアに与えようと腕を大きく振った。


 レスティアはそれを華麗に、まるで蝶の様に避けると

 瞬時に左掌を【土の巨兵(ゴーレム)】へ向けた。


 すると、眩い光線がたちまち【土の巨兵(ゴーレム)】の巨躯を包み込んだ。そして、光が消える頃には【土の巨兵(ゴーレム)】の姿は跡形もなく消失していた。


 そんな光景を地上から、三人の女子生徒が目を爛々とさせ、眺めていた。


 それは、今回のレスティアのチームメンバーであるテスラ、シュライ、ケレスであった。


 レスティアはふぅと、一息吐くとふわりと地上へ降り立つ。


 着地するなり彼女らはレスティアの下へ駆け寄るとキャッキャと騒ぎ始めた。


「流石、レスティアちゃんだね〜。 ロンデウス公爵の娘だけあるわ〜まじ尊敬する」


 そう最初に口を出したのはケレス=レタルド=カロンだ。


 眼は猫のように鋭く、つり上がっている。強い口調と態度が目立つも、女子の中では二位に信頼を集めている。


 もちろん一位はレスティアだ。


 茶髪のショートポニーテールが特徴でスタイルもよく、白く透き通る肌は光をも反射しそうだ。


 得意魔術は風。


「さ、さすがです! レスティアさん! わたしも貴女のように魔法使いこなしたいです!!」


 次に、興奮冷めぬ表情でレスティアを賞賛したのはテスラ=バテス。


 自己紹介で彼女が言った通り、得意魔法は水。


 空色の髪の毛の先はカールしていて、前髪から覗く眼は余り活気がなく、何処か弱々しい。


 豊満な胸は動く度に縦に大きく弾み、魅了する。


「ふんっ! さすがですねレスティア!でも、シュライも負けないよ! 」


 そう元気よく反応したのはシュライ=マレシア。


 一言で表すなら「活発轆地」だ。


 極度の負けず嫌いで尚且つポジティブ。『失敗は寧ろ新しい経験を得るためのご褒美だ』と云う謎の座右の銘を背に生きている。そのためか、中々集団行動が上手くいっておらず、その前の戦闘の際、先に突っ走ってしまい、レスティアの助けが無ければ、即『脱落』するところであった。


 頭のサイドから垂れるお下げは激しく揺れている。


 得意魔術は人体強化(マルドアップ)


「にしても、やっぱつぇな〜レスティアちゃんは、あたし、あんたに追いつける気しないわ。一生」


「そ、そうですよ! レスティアさん!わたしももっと頑張らなくちゃ………」


「シュライ、絶対レスティアちゃんに負けるつもりないから。あの時は、本気を出してなかっただけだからね!

 勘違いしないでよ!!」


 と、シュライは左手を腰に当て、人差し指を伸ばした右手をレスティアの方へ向けながら、そう言い張った。


 目には闘志が激しく燃えていた。


「いやいや、そんなことないよ! 」


 レスティアはそう微笑を浮かべると、胸の前で小さく手を振った。


「そんな謙遜すんなって〜、腐っても首席は首席だろ?

 もう少し自信持てよっ!」


 バシンっとケレスはレスティアの肩を叩くと、ニカッと歯を見せ笑った。


 それに続いてテスラ、シュライも笑みを零す。


 四人から溢れ出る笑顔は、太陽よりも眩しく、一時の平和が訪れていた。


 しかし、そんな平和はすぐに崩れ去る。


「皆、警戒態勢をとって。くるよ!」


 途端に引き締まった声が三人の耳に届いた。


 その一言で察したのか彼女らは一気に身体を外側に向け、周囲に目を配らせる。


 すると、ボコボコと幾つもの膨らみが地面から生じると巨大な手が生えてきた。


 ――――【土の巨兵(ゴーレム)】だ。


 しかも複数。レスティアが見る限りは数十体はいそうだ。


土の巨兵(ゴーレム)】の体が形成されるなりレスティアは呪文を唱えた。


「《神の雷の制裁あれ》っ!!」


 刹那、全ての【土の巨兵】の足元に魔法陣が展開されると電気が迸り、一時牽制する。


 すぐさまシュライは【バックアップ】を自らの身体に付与(デルク)し、霞のように消え、気付いた時には目の前にいた一体の【土の巨兵】の背後を飛んでいた。


(取った――――)


 シュライは一撃で仕留められると確信したのか、不敵な笑みを漏らすと、強化された拳を勢いよく【土の巨兵(ゴーレム)】の後頭部へ殴りつけた。


 ビキビキ、網目状に亀裂が入る。


 しかし、


(あれー?)


 砕け散らなかった。


 シュライは【土の巨兵(ゴーレム)】程度なら、一発で破壊できる自信はあったのだ。が、現実はどうだ。生き生き(?)としているのではないか。


 そんな戸惑いも束の間、【土の巨兵(ゴーレム)】は頭部を横へ動かし、爛々と鋭く光る目を、シュライの方へ向けた。


 感情などない、只の傀儡(ゴーレム)だとしても十分な威圧と脅威はあった。


 シュライは目を見開いたその瞬間、眼前に岩石の壁が現れ――吹っ飛ばされた。


 そう、巨大な手がシュライに直撃したのだ。


 ――背景が激流の様に前へと流れていく感覚を覚えた。上なのか、下なのか、今のシュライには半別が困難となっていた。一つ分かることと言えば、【土の巨兵(ゴーレム)】との距離が急速に遠くなっている事くらいだ。


 シュライは弾丸の如く空気を切っていき、太く生えた木の幹に小さな身体を衝突させた。


 そのまま五メルト離れた地面へ、重力に従い落下した。


「「「………」」」


 まさかの出来事に、三人は言葉を出すことが出来なかった。レスティアははっと何かを思い出したのか、ローブの裾を触った。すると、虚空に四角形が浮かび上がると

 何やら上から文字が映し出された。

『レスティア』『テスラ』『ケレス』『シュライ』の順で縦に並んでおり、一人一人に横に長い線が延びていた。


 レスティアは『シュライ』の所を見ると、その線の長さが全員に比べ短くなっており、赤く点滅している事に気付いた。


 残り、三割と言ったところだ。


(く…………)


 一筋の汗が、流れ落ちた。


 そして押し寄せる焦燥。


 このままだと、脱落してしまう。


 レスティアは危惧を感じていた。


 この【土の巨兵(ゴーレム)】はあくまでも『戦闘訓練』用に魔術で創られた物に過ぎないので、殺傷能力は皆無となっている。だから、当たったとしても負傷することは絶対有り得ない。しかし、「実践の戦闘」に近づける為には"演出”が必要となってくる。


 生徒一人一人には1000HPが与えられている。

 そしてそれが0HPになると、即その四人一組(チーム)は退場となり、スタート地点(最初に生徒が整列した場所)に転送(テレポート)される仕組みになっているのだ。


 それ以降の参加は認められない。


 因みに、ダメージ判定はその時の状況や環境、攻撃を受けた際の威力、また身体に付与(デルト)障壁(シールド)等の、様々な要素から判断される。


 レスティアはガバッと顔を上げると、指示を飛ばした。


「ケレス! 貴方はシュライの所へ行って回復を、テスラ、私と一緒に残って!!」


「は、はい〜〜」


「分かったよ!!」


 そう言うと、ケレスはシュライの元へと駆けて行った。


 レスティアはそれを尻目に、前方を見据える。


 次々と増殖していく【土の巨兵(ゴーレム)】。ワラワラと地面から這い出ては、ゆっくりとレスティアの居る所へ集まってくる。


(さて、どうしたものか………)


 レスティアはこのあとどう切り抜けるか考えることにした。

読んでいただきありがとうございました。


これからも応援よろしくお願いします。

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