リーサルト3
落ち着いた雰囲気になりましたね。
是非、お楽しみあれ。
また、食レポ的な文書もあるので、楽しんでいただければなと。
学食へと訪れたレスティアたちは、窓際の六人掛けテーブルに、二席を残し腰を下ろした。
レスティアから見ると、左にシュライが座り、斜向かいにケレス。そして対面にテスラが座ってるという形だ。
そしてレスティアの前には四角形のお盆があり、その中には手前に白ご飯と野菜ベースのスープ。
奥にプチトマト入りのサラダと白身魚が添えられていた。朝には最適なさっぱりとした朝食だった。
料理を頼むためのカウンターへ行ったとき、本当に食べれるのかと心配していたが、その心配は無用だったようだ。流石の校長だけあって、話しを通すのが早い。
レスティアは箸を手に取ると、何から手に付けようかと迷ってしまう。なにせここの料理全品三ツ星シェフが手掛けているので、全てが絶品なわけなのだ。
過去にこのクラスの大半の人と一緒に食事をした――大勢の席はいつのまにか誰かが用意してくれてたらしい――ことはある。その時はパンの気分だったので、それを中心にした品を選んだのだが、どれもかれもが美味しすぎて、もう頬がとろけてしまいそうだった。
だが、周りからの質問攻めの嵐に落ち着いて食事をすることができず、実はこの学食に通ったのがこの一回だけだったりする。疲れた状態で食事をしてもおいしくはない。
あのクロネスに勝てなかったことと、ロンデウス家を侮辱したことは許せなかったが、そのおかげで食べられたわけなので、あるいみ感謝。といったところだろうか。
まぁ、そんなことはどうでもいい。とにかく今を楽しもう。すでにお腹は空腹だ。
レスティアは上品な動きで右手にお椀を掴み、箸でご飯をつまむとそのまま口へと運んで行った。
噛むごとに染み出る白米の甘さが、口腔に溶けだす。やはり、米さえも抜かりが無い事が目に見えた。家での食事でこういった料理は何度も口にしたことはあるが、それに負けない程の上手さを感じられた。
「美味しい……」
そう、思わず呟いてしまう。
「えーいいなー。シュライも食べたいなー」
「そ、それはダメですよシュライさん……。これは、レスティアさんのお食事なので……」
「そうだぞ~シュライ。食いしん坊かー」
ケレスが両手を後頭部へ回し、けけけと笑いを見せる。
それにシュライは、
「ち、違うもん! 食べたいって言ってみただけだし!」
と、そう苦し紛れの否定をする。そうして腕を組み頬を膨らまし、ぷんすかと怒ってる様子で口でぶつぶつと何事かぼやた。が、目線だけはしっかりとレスティアの朝食を捉えており、露骨に目で食べたいと言っている。その視線を感じたレスティアは、ふっと微笑むと白身魚の三分の一を切り掴むと、左手を受け皿にしシュライに「食べる?」と訊ねる。
「……わ、わたしは……別に……」
ちらっ。
「食べる?」
「わ、わたしは…………」
シュライがぷるぷると震え出して――
「はい、あーん」
レスティアは満面の笑みで白身魚をとった箸をシュライに近づけた。
するとシュライはその流れと自分の衝動に負け、口を大きく開けて――ぱくり、と一口。もぐもぐと咀嚼する。
「美味しかった? シュライ」
「うんおいしい……って、あっ! やっちゃったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
自分の失態に気付いたシュライが突然叫ぶと、机に突っ伏し大袈裟に落胆してみせた。
レスティアは心の中で面白い子だなーと思うのであった。
と、入り口からだんだんと声が近づいていくる。視線をそっちの方へ送ると、クロネスたちがやってきたようだ。レスティアは騒がしくなりそうだな……と多少の不安を感じつつ、ならべく気にしないようにしながら、食事を再開することにした。
□ □ □ □
「うーんどれにしようか迷うね」
「いや、キャロスが頼むわけじゃないからな」
「うん、そうだよキャロス」
「……もう少し静かにできないのか?」
食堂のカウンターに行き、奥で動いていた年頃の女性の「あの、クロネス=バルティーレなんですけど……」と声を掛ける。それに気づいた女性ははいはいと、温厚そうな顔で駆け寄った。
「クロネスね。校長から話は聞いてるよ! 材料はそんなにないから、あんまり良いのは作れてないけど……とりあえずはい! これ! しっかり食べてね!」
お盆を受け取ったクロネスは、近くにあったテーブルへ座ることにした。
それにつられるように、ドゴル、クリス、キャロスも腰を掛ける。
クロネスの左隣にキャロス。向かい合うようにクリスとドゴルがそれぞれ横に並ぶ。
すると、もあっと蒸気に乗って一粒一粒が立ち、光沢している白米の甘い香りが鼻腔をくすぐった。周りにあるわかめスープからも出汁のきいた匂いが漂い、ほろっと崩れている白身魚が更に食欲に拍車をかけた。
クロネスは初めて学食の料理を食べる訳だが、もう見た時点ですでに美味しそうと直感する。
ごくりと唾を飲むと箸を持ち、ご飯に手を付けた。
「あ、うまい……」
たしかにこの味なら、人気も出る筈だわ、と実感した。クロネスはあまりこういった高級料理など一切食べたことは無く、いわゆる一般食程度に味を知ってるくらい。値がある料理など、一度も味わったことはないが、そんなクロネスでもわかるほどでもあった。
「えーいいなー。僕もたべたかったー」
上半身をべたっとテーブルに貼り付けたキャロスが、視線だけをこちらに向け羨ましそうに呟く。
「……あげないからな?」
「…………クロネスのケチ」
「キャロス。これはクロネスのだ。俺らはもう食べただろう」
「そうだよキャロス。またお昼に来ればいいじゃん」
宥められたきゃろすはつまんらないのか、唇を尖らすと、ふてくされた子供のように顔を反対の方へ向ける。キャロスは食事を見ないようにし、耐えることを選択したらしい。
「クロネス、気にしなくて食べていいからな?」
「うん。ぼくたち朝食食べてきたから、ゆっくり食べてていいよ」
そう言われると、自分が変に気を遣いそうになってしまうのだが、二人がいいならそれでいいんだろう。並べくキャロスの事は考えないようにしながら、箸を進めた。
――全体的に半分ほど食べたところで、ドゴルが口を開いた。
「そういや、クロネス。俺たちがリスポーンしてしまったようだされたあと、どうなったんだ?」
ドゴルが口火を切った。山頂での出来事に興味を示したようだ。
クロネスは口に含んでいた食べ物を飲み込むと、うーんと考える。
「……わからん」
そう、あの時使った魔術――黒魔術【龍の咆哮】を放った後、地に落ちたことは覚えている。だがそこから記憶が曖昧だったのだ。そして目が覚め気づいたら、保健室のベッドで寝ていた。
黒魔術【龍の咆哮】は、クロネスが編み出した黒魔術であり、どの魔術よりも高い攻撃力を誇る。闇より司った滅びの波動を放射し、それに接した物は全て〝無〟へと還る。しかし、まだクロネスの魔力量と技量では、その本当の力を引き出すことはできず、半分ほどの威力しか引き出せないのだ。そこに関してはまだまだ自分には足りないなと思いつつも、使いどころを間違えると、無駄に魔力を消費してしまいそのまま一気に魔力欠乏になりかねないので、最重要の時だけ使おうと、今回の訓練を受け学んだのだ。
あれは、つい勝たなきゃなという衝動に刈られ行使したわけだが、やっぱり自分には冷静さに欠けてると改めて思い直した。
それよりも、だ。クロネスは箸をおき「皆。一つ言いたいことがある」と言葉を放つ。
と、クリスとドゴルは顔をこちらへ向けた。キャロスも貼り付かせていた上半身を起こし、半目でクロネスを見やる。
すると突然。
「ごめん!!」
クロネスが首を垂れ、謝り出したのだ。唐突の行動に驚いたドゴル、クリス、キャロスは目を見開き、腰を浮かせあたふたと慌て始める。
「ど、ど、どうしたんだよ!」
「クロネス顔上げてって!?」
「そ、そうだよクロネス! なにか良く分からないけど!」
クロネスはゆっくり顔を上げると、バツが悪そうな表情をする。
「……俺が暴走した時、あったろ。あの時、俺は周りを見ていなかった……。だからその……。すまん!」
再び頭を下げるクロネス。ずっと謝りたい気持ちでクロネスの心は一杯だったのだ。勝手に動いてしまった事。周り気にせず、一人で突っ走ってしまった事。そして、チームの言葉も聞かずに独断でやってしまった事。そのすべてについて謝罪をしたかった。
クロネスが目を瞑り、ふるふると震える。
――と。
「嗚呼。だしかにそうだな。クロネスは一人でに行動しすぎた」
重々しい空気が伝播する中、ドゴルがどすんと椅子に腰を下ろし、強く重みのある口調で言い放つ。
巌のような顔に微かな怒りが燃えた。
クロネスはぐっと唇を噛み、俯く。そうなるのは当然だ。自分は、それほどの事をしてしまったのだから……。クロネスは自責をし始め――
「だが、しっかりと俺たちを的確に指示してくれたし、どうすればいいのかと教えてくれた。俺はああいった戦闘は初めてだ。だが、クロネス。お前のおかげで俺はここまで生き残れたんだ。確かにかってに行動してしまったのは悪い。だけどな、それと同じくらいに俺たちを助けてくれた。だから――チャラでもいいんじゃねか?」
と、ドゴルはいたずらっ子のように笑顔を漏らした。にかっと白い歯が口から覗く。
ドゴルの思わぬ発言にクロネスははっと顔を上げ、ドゴルを見つめた。クロネスの瞳が揺らぐ。
「だ、だけど――」
「だけどもなにもない! 俺たちはお前に助けてもらった。これでいいじゃねえか! そんなにきにすんことねぇよ! あとなー、あれは訓練だ。またやり直せばいいだけの話じゃねぇか! そんなに思い悩むなっての!」
有無も言わさぬ速度でドゴルの言葉は介入する。そしてそんな台詞が、クロネスの身体をどっと殴った。――そうだ、俺は、『完璧』を求めすぎていたんだ……と。ずっと上位で居続けるために、クロネスは全てをないがしろにしてきた。だけど、それってのは自分が勝ち進むためにしてきた自己中でもあったのだ。だから、訓練時の指示は勝つために指令したに過ぎない。だが、そんな事でも、知らずのうちに彼らにとっては『救い』となっていたのだ。それはただの視点的な問題なのかもしれないが、クロネスにとっては十分なことであった。こんな簡単なことに気付けなかった自分に、馬鹿だな……と自嘲気味に笑い、クロネスははっと息を吸うと胸の中で出かかっていた五文字を吐き出した。
「あ、ありがとう……な」
消え入るそうな声で告げる。……界隈が水を打ったように静寂し――ん? 異変を感じたとクロネスは面を上げる。
すると、ドゴル、クリス、キャロスは変なものでも見るような目で、訝し気にクロネスを見つめていた。
「え、えっと…………」
思ってたのの違う雰囲気に戸惑ったクロネス。
「いや、なんか、こんなこと言うだなって……」
ドゴルが心底意外そうな表情で言い……
「ぼ、ぼくも驚いちゃった。頑固もじゃなかったんだね……」
そうクリスが呟いて……
「クロネス。そんな事言えたんだね。もっと冷たいと思ってたんだけど」
キャロスが失礼な発言をクロネスへ投げかけた。
クロネスは目をぱちくりし、静止した。顔に集まった熱もすっかり引いてしまい、逆にクロネス自身が困惑してしまう羽目に。
ここからどう展開すればいいのかわからなくなったクロネスは、とりあえず手を動かすことにした。
折角熱いスープもぬるくなってしまった。それによってか、まろやかになった舌触りがなぜかクロネスの身体に沁みる。飲みながらクロネスは、湧き出た恥ずかしさも消えてくれる良いな、と願いつつ。朝食を吟味することにした。
いやはな。これで20作目ですね。
ここまで書くのに1年もかかってしまうとは。
自分の書く速度に問題があるのでしょうか……
とにかく、読んでいただいてありがとうございました。
また何かあればメッセージを送り下さい。




