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時間を作れたため書き上げることが出来ました。R15注意です。
朝になった。今日は自分の寝室なので、まぶしい朝日にたたき起こされることも無かった。
譲二はベッドの上で軽く伸びをすると足の指を数回、にぎにぎと動かして覚醒をはやめた。このようにすると眠さを引きずらずに起床できるのだ。
時間は、朝6時。
ミキと話し合って、朝食の時間は朝7時に決めた。さすがに朝4時半の起床は早すぎたのだ。
朝食の1時間前なら、そろそろミキも起きてくるころだろうか。
譲二が寝室を出ると、コーヒーのいい匂いがしてくる。キッチンをのぞくとミキが元気に挨拶してきた。
「先生! おはようございます」
「ミキさん、おはようございます。新しいベッドで良く眠れましたか?」
「いつのまにかぐっすり寝ていました。自分の部屋とか初めてでドキドキがすごいです」
早く慣れるといいですね、とミキの頭を撫でて見る。ミキの頭は譲二の清涼剤になりつつある。
すると、もっと撫でて、と言わんばかりにミキがよってきた。踏み台の上のミキが落ちないように、軽く体を支えるようにした。
「そういえば、朝食のコーヒーには少し早すぎませんか?」
「あ、このコーヒーですね。じつは買ってもらった温度計で試しに淹れてみたのですが、思っていたよりうまく出来なくて」
「少し貰ってもいいですか?」
ミキは、お湯で暖めたカップにコーヒーをそそいで、はいどうぞと丁寧に渡してきた。
コーヒーについてミキもこだわり屋だが、譲二も負けていない。目を閉じて集中してからカップに口をつける。
「すっきりとしたコーヒーです。昨日と違うのは酸味が多く出ています。温度がもう少しだけ高めが好みですね。全体的にはおいしいコーヒーです」
「はい…」
ミキは少しうれしそうな、ちから及ばず残念そうな、複雑な表情をした。
豆が酸味寄りのグレードが高いものだったので、昨日より低い80℃で淹れてみたこと、粉の常温保存のためか味が変わっているかもしれないこと、ミネラルウォーターではなくて浄水器の水が良いと思うこと。
ミキの説明は、コーヒーへの情熱が伝わってくるようだ。
「このコーヒーの粉を使い切った次には、ミキさんお勧めの道具と豆を揃えてみましょうか」
「ほんとうですか!」
うれしい、うれしいです、とミキが抱きついてくる。
譲二はそのままミキを抱え込んでしまうことにした。もちろん頭を撫でるためである。
◆
「今日は午前中に、作り置き惣菜を調理してくれる家政婦さんが来ます」
朝食後に宅配で届いた大量の食材に、譲二が思い出してミキに伝えたのだ。
ミキと二人で消費するようになったので、惣菜の種類も量も大幅に増やすようにお願いしてある。
そして今から大事なことを、ミキに伝えなければならなかった。
「ミキさん、着替えてきましょうね」
「あっ」
これで紺ブルマ体操服のまま、家政婦さんを出迎えるという悲劇が避けられたのだった。
ミキが着替えて戻ったころ、家政婦の葛西さんがインターホンを鳴らした。
細ボーダー白地の半袖カットソーに黒ショートパンツの姿で、ミキが玄関まで出迎えにいく。
「こんにちは。ぼくはミキといいます。今日はよろしくおねがいします」
「あらー、かわいい子ね。秦野さんのお子さんかしら。今日はよろしくね」
ミキは何気に人見知りしないのだ。そしてコミュニケーション能力も高いようだ。
家政婦の葛西さんと、すぐにうちとけてしまった。
ミキは惣菜を調理するところを見たがった。これは葛西さんにお願いして快諾してもらう。
邪魔にならないように少し離れて見ていたミキが、味見に呼ばれて、エプロンをつけて、ちょっとしたお手伝いをするまでになっている。
今日は職場に取りに行くものがあるので、ここは任せてしまっても良さそうだ。譲二はミキと葛西さんにことわって外出することにした。
◆
お昼ごろ家に戻ると、葛西さんは仕事を終え退出していた。合計二時間ほどのすばらしい仕事ぶりだ。
ミキは良い笑顔で迎えに出てくる。葛西さんにお味噌汁の作り方を教えてもらったようだ。
テーブルに用意されたお昼を、ミキと二人でいただくことにする。
用意されていたのは、お味噌汁と炊き立てご飯と、今日作られたお惣菜たちだ。
ミキの作った豆腐と油揚げと青菜の味噌汁はおいしかった。油揚げは湯通ししてあり、ふわふわだ。青菜はほうれん草とかぶの葉で食感の違いが面白い。
お味噌汁の出汁は、昆布とかつお節を冷蔵庫のポットで水出しするのだそうだ。
コーヒーとまた違って面白いですね、とミキがうれしそうだ。
譲二は、なんだか小さなお嫁さんを貰った気分になってきた。
短い時間一緒に居るだけでも、ミキの性格のよさが分かってくる。そもそも男性女性というよりもミキだから良い、と言うしかない気分なのだ。
午後は二人で家の掃除をして回った。ミキはいつもの紺ブルマ体操服だ。気に入ったのなら買い足しておいたほうが良いだろうか。
その日の夕食もおいしかった。ミキの作ったお味噌汁とご飯は、譲二にとっての幸せの味がするようだった。
◆
ミキと譲二がそれぞれお風呂から出ると、いつものように寝る前のケアトレーニングの時間となる。
譲二はミキに新しい医療用品の箱を渡した。これは潤滑が正常であるか常時計れるものだ。
使い方や形状は前と同じだが、ペアリングしたブレスレットが付く。
ブレスレットは柔軟な細い輪で、不透明な灰色をしている。動作すると全体がほのかに光るのだ。
青は潤滑が充分で、黄は少なくなっている状態。
黄の点滅は潤滑を増やす行動が必要。赤の点滅は外部から液補充が必要、という意味になる。
昨日と同じようにベッドの上に両手をついてもらって、腰を高くしてもらう。毎日の交換も慣れてきて、ミキのびくびくした感じはなくなっている。
いつものように交換が終わりミキの服装を直すと、譲二はミキの左手にブレスレットをするりとはめた。
しなやかなブレスレットは、輪ゴムのように難なくミキの手首におさまった。
ほどなくブレスレットは黄の点滅をしはじめた。ミキは困ったように聞いてくる。
「これを青色に変えるには、どうしたらいいのですか?」
「これからミキさんの体をいろいろ刺激して見ます。辛かったり痛かったりしたら、すぐに言ってくださいね」
ミキが、こくこくと返事をすると、手で擦っていくようにミキの体をなぞっていく。鎖骨から肩、胸から脇腹や背中。腰周りに股間部、足へと試していく。
胸や脇腹はむず痒く、股間は刺激が強すぎるようだ。ミキにあまり無茶なことはしたくない。
譲二は両手でミキの小さな顔をつつむ。両耳をやわやわと刺激して見る。
ミキと目を合わせると、少し瞳が潤んできている。譲二は、キスをして良いですか? と聞いてしまった。
「…はい」
と、小さく答えたミキは目を閉じた。
ミキのブレスレットは、黄の点滅から黄色に変わり、そして長いキスが終わったとき青色になった。
次回も、一週間以内をめどに投稿する予定です。