表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/60

第8話

「だ、だれ!?」


「あ、驚かせてごめんなさい私」


「って……わ、私?」


 後ろを振り返ると、そこには私が立っていた。

 その正体を私は知っている。

 別の世界の私だ。

 私と容姿は瓜二つだが、私よりもおっとりしている気がする。


「な、なんで居るのよ! か、帰ったんじゃ無いの!?」


「えっと……貴方を説得する為に戻って来ました」


「せ、説得って何よ……」


「だから、私とユートが結婚する為に、貴方と悠人君に結婚して貰わなきゃいけないのよ! その為にまた戻ってきたってわけ!」


 またこの話だ。

 つい数時間前にもこの話は聞いた。

 そしてあっちの世界の私、アーネにもその理由は伝えたはずだ。


「だから……ゆ、悠人が告白して来ないと……付き合わない」


「そんな意地を張らないで! お願いよ!」


「そんな事言われても……」


「それはそうと……先ほどから何をしているのですか?」


「ふぇっ!? こ、これは……」


 まずい、私は今カメラを片手に悠人の部屋を撮影している。

 この状況を上手く説明しないと……これじゃぁまるで……まるで私が……。


「どうして顔を赤く染めているの?」


「な、なんでも無いわよ! ただ月が綺麗だったから、撮影してただけよ!」


「撮影? その機械は何の道具なのですか?」


「え? カメラ知らないの?」


「はい、私たちの世界に無い物です」


「これは、こういう風にボタンを押すと……」


 カシャリ


「キャッ! な、なんですか?」


「あぁごめん、フラッシュ炊いちゃった」


「なんなんですか?」


 若干怖がりながら、アーネは私に尋ねて来る。

 私は先ほど撮影した写真をアーネに見せる。


「ほら、こうやって風景とか人とか物を映して保存出来るの」


「わ、私が! 私が居ます!!」


「そういう反応なのね……」


「これは、なんでも映せるのですか!?」


「そうだけど?」


「な、なら……今度で良いので……ユートも映して居ただけませんか?」


「べ、別に良いけど……何なら印刷してあげようか?」


「印刷?」


「こういう風にして、いつでも見られるようにするのよ」


「こ、こんな事が!? す、素晴らしいですね!! 是非お願いします! あと、早く悠人君と結婚して下さい!」


「さらっと言うわね……」


 な、なんで私が……まぁ、私も悠人とそうなりたいんだけど……。


「言っておくけど、私は一応アイドルなんだからね! 恋愛なんて出来ないのよ!」


「アイドルとはなんですか?」


 あぁ、面倒くさいなぁ!

 いちいち全部説明してたら時間が掛かって仕方ないじゃない!

 私はそう思いながらも、アーネに色々と説明をした。

「なるほど……アイドルと言うのは、国民の憧れの的であり、自由に恋が出来ないのですね……私たちの世界の姫のような存在でしょうか?」


「まぁ……お姫様とはかなり違うけど……自由に恋愛出来ない点では一緒ね」


「そうですか……それでは素直になれないのも無理はありません……」


「わ、私は十分素直よ!」


 話しをしているうちに、夜は更けて行く。

 アーネも自分の世界のことや自分の事を話してくれた。


「私はあっちの世界では一国の姫でした」


「え! あっちの世界の私ってお姫様なの!? 羨ましぃ……」


「姫と言っても、良いものではありませんよ? 城の外には自由に出れませんし……友人も出来ません」


「苦労したのね……でも、それならどうやってユートと知り合ったの?」


「はい! 実はですね!!」


 アーネはそこから一時間、ユートとの出会いから結婚までの話しをし始めた。

 幼い頃に城を抜けだし、一緒に遊んでくれたのがユートだったらしい。

 ユートは王族でも貴族でも無い、普通の平民。

 そのため、それ以降は会うことすら出来なかったらしい。

 しかし、その時ユートとアーネはとある約束をした。 それは、いつかユートがアーネを城から連れ出すと言う約束だった。

 そして、ユートとアーネが15歳の頃だった。

 ユートは約束を守る為に今度は勇者として、アーネの目の前に現れたそうだ。


「そしてユートは、国王である私の父の目でこう言ったのです……『私が勇者として相応しい働きをし、魔王軍を滅ぼす事が出来たのなら……姫を私にいただけないでしょうか』って……きゃぁぁぁ!! もうユートったらぁ~」


「あぁ、はいはい」


 一人で興奮するアーネを他所に、私はもう眠たくなって来ていた。


「そして! ユートは半年足らずで魔王軍との和平を結んできたのです! 滅ぼすのではなく、共存の道を求めたユートの行いに父も感動し、私たちを認めてくれて……」


「オッケー……わ、わかったから……そろそろ寝かせて……」


「あら? もうこんな時間、私も戻らないといけませんわね……それではまた今度」


 アーネはそう言ってまたしても消えていった。

 一体何の用で来たのやら……。


「はぁ……明日も仕事だし、早く寝よ……」


 私は自分のベッドに横になり、そのまま目を瞑る。 変な事ばかりで今日は疲れてしまった。

 明日からどんな顔で悠人と会えば良いのだろうか……。


「あ! 悠人の半裸!!」


 少ししか撮影出来なかった……。

 






「ふーん……こっちの世界のアーネはこんな本を出してるんだね……」


「そうだよ……トップアイドルだしな」


「こっちの世界のアーネも可愛いのに……君はなんでさっさと結婚しないんだい?」


「うるせぇな! だから言ってるだろ! 色々とあるんだよ!」


「はぁ……僕とアーネはあんなに仲が良いのに……世界が違うだけで、こんなに関係性が違うなんて……」


「いい加減帰れよ! 俺だって色々忙しいんだから!」


「僕だって忙しいよ! 一応王国の軍隊長兼国王陛下の第一騎士なんだから」


「じゃあ帰れよ!」


「だから、君が彼女と……」


「あぁぁぁ!! わかったから帰れ!!」


 そう言った瞬間、ユートは目映い光に包まれて消えていった。

 

「はぁ……ようやくうるさいのが居なくなった」


 まさか、毎日来るつもりじゃないよな?

 それよりも明日から、彩とどんな顔で会えば良いんだ!

 俺が彩に惚れてる事がバレちまったし……あ、彩も俺を好きだし……。

 色んな意味で、明日からは普通の生活は送れそうにないな……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ