学園祭前夜
【キーワード】
・シンナー
・スナック菓子
・片想い
遠くで笑い声が聞こえる、隣の教室からだろうか。誰かが音楽まで流しているようで、学校とは思えない。まるでディスコかナイトクラブだ。
そう私が錯覚するのも無理はない。というのも、今は夜中の10時半。本来なら皆家に帰り、今頃ベッドに寝転がってスマートフォンでもいじっている時間だろう。
そうしないのは理由があった。私達は、学園祭を明日に控えていたからだ。だから、本番を控え最終調整に入るべく、担任に許可を得て深夜の教室に寝泊まりさせてもらっているのだ。
「はい、優くん。あーんして」
鳴り響くサウンドトラックに身を任せ、カップルがイチャついている。
ずっと私が片想いし続けてきた大塚優。彼はこの学園祭準備に乗じて彼女を獲得したらしかった。
「もう少し早くアタックしていれば、彼と付き合えたのかな」
「ん? ユミ、何か言った?」
溜息をつく私に、隣で絵を描く女の子が顔を上げる。
ふと、シンナーの匂いが鼻を突いた。
「ううん、なんでもないよ」
作り笑いを浮かべることしかできない。いっそ、このインクを飲み干せば全てを忘れられるのかもしれない。
そんな憂いを帯びたまま、私は広げられたスナック菓子を一つ口に放り込む。優くんと屋台を回りたかった。彼と学園祭の成功を祝いたかった。そんな私の小さな恋は、口の中のポテトチップスみたいに、脆く砕け散った。
塩っぱさだけが、虚しく残るだけ。
恋愛小説をついつい書いちゃうかも。