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話す
「部長、あと一軒行きましょうよ」
私は上司を誘うと、千鳥足の彼を引きずるようにして隣の店へ上がり込んだ。
金曜日の夜、誰もが明日の休日を祝して遊び狂う日。
私は会社の飲み会を終えた後も、二軒三軒とハシゴして、これでもかと飲み歩いていた。
普段であれば、金曜の夜には妻が家で待っているからと早々に切り上げるものだ。でも、今夜は違う。今夜だけは無礼講。
「部長、今日は沢山話して貰いますからねぇ」
私は席に着くや否や、ビールを二つにタコワサを注文した。店員が唐揚げをオススメしてきたので、ついでにそれも頼む。
「それで部長、最近夜の方はどうなんですか」
私は彼が話すのを待った。もう二十杯は飲ませただろうか。意識が朦朧とし、フラフラと頭を振りながら、部長は笑う。
「最近だとぉ、貴美子さんとか良かったぞぉ、尻がデカくてなぁ……ヒック」
部長は昔から女遊びが激しいと聞く。そして、いい女と出会えるとこうして酒の勢いに任せ何かと暴露してくるのだ。
私はそっとポケットの録音機を止めた。
「言質取りました」
貴美子、それは私の妻の名前だ。ようやくシッポを出したな、クソ野郎。




