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居酒屋の月

【キーワード】

・泣きボクロ

・日本酒

・過去

「あんた、もう飲み過ぎだよォ」


 店主が珍しく心配気な声を出した。私は缶ビールを自分のジョッキにセルフで注ぎながら隣を見つめる。


「らぁいじょぶれすよぉ」


 女が顔を真っ赤にしたまま日本酒の入った瓶を揺する。目の前にグラスもお猪口も用意されている癖して、使っているようには見えない。


「お前さん、もう今日は帰んなァ?」


 店主は恐る恐る女の肩を揺するが、彼女は心ここに在らずと言った様子でカウンターに突っ伏した。


「ははは、参ったねェ。こりゃ」


 片眉を顰めた店主に視線を移しながら、私はもう一杯ビールを喉に流し込む。


「あんたはまだ飲むかい?」


 問いかけてくる店主に頷きで返事をし、再び私は女を見た。先程から様子がおかしいことに気づいてはいたのだ。しかし、話しかける勇気というものを持ち合わせてはいなかった。

 彼女はどうも私の過去に酷くこびり付いた恋人によく似ている。


「知り合いかい?」


 ビールの追加を私の前に置いた彼へ、私は乾いた笑みの返事。


「知らないかい」


 知り合いのイントネーションでため息をつく男と、隣で涙を零す女を肴に、私は何杯目かのビールを自分に注いだ。


 まゆの形も泣きぼくろの位置も、何から何まで合致する。


「ご馳走さん」


 なぜ彼女は泣いていたのか、どうして帰ってきたのか、なぜ苦手な酒に溺れてしまったのか。

 私はついに聞くことが出来なかった。


「いいや、他人の空似だ」


 独り言に返事をしたのは、冷たい夜風。さり気なく大きな月が雲に隠れた。

 体言止めを活用したかった。もう少し文学的な表現を扱えるようになりたい。

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