冬休み旅行
【キーワード】
・ピエロ
・車
・お菓子
「イヤだ! しょーちゃんイヤだもん!」
せっかくの冬休み、家族旅行を楽しもうと思った私は、2ヶ月も前から妻と今日の計画を練っていた。しかし。
「しょーちゃん、みーくんの家で遊ぶんだもん! 行かないもん!」
どうやら我が子が機嫌を損ねてしまったようだ。
「しょーくん、今日はママと旅行する約束でしょ?」
妻は困り果てた様子で荷物を車に詰め込む。しかし流石は我が子、妻によく似た頑固者だ。
「しょーちゃんは行かないもん!」
想像通りの反応である。こうなればもので釣るしかないだろう。そう思った私は、予め用意していた秘策を披露せんと。
「しょうたろう、一緒に来てくれたらお菓子あげちゃうぞ?」
ポケットに入れた駄菓子の袋を握り、ガサガサと音を立ててアピールする。
「お菓子!? なんの、なんの?」
完全に興味はこちらに逸れた。あとは釣り針を引くだけだ。
「ふっふっふー、しょうたろうも喜ぶと思うぞ」
私はドヤ顔でポケットの中身を見せてやる。現れたのは『たけのこの里』だ。私も妻も大好きな子のお菓子、飛びつかないはずもない。
「はうっ! それは期間限定品の!」
妻が釣れた。いや、今のターゲットは我が息子だ。妻の気を引くのは後でいい。さぁ、しょうたろう飛び込んで来い!
「えー、たけのこの里じゃん。しょーちゃんはきのこの山がいいの!」
大爆散だった。まさかの敵勢力。
「よろしい、ならば戦争だ」
ちょ、ミカコさん、我が子に何言ってるの?
「ほら見なよ。これだから血の気の荒い里の者は」
我が子はどこでそんな言葉を覚えたんだ!?
「ガルルルルルルル」
我妻が野生化してしまった。
「ウギィャアァギャオァオオァ!」
我が子は何を言ってるか分からない。どうすれば、どうすればこの醜い争いは止められるのだろうか。
「パ、パパはきこりの切株派なんだよね〜あはは」
「は?」
「は?」
「え?」
我妻と息子の争いは急に終焉を迎えた。残されたのは静寂。私に向けられる哀れみの視線。いや、軽蔑の視線だろうか。
「あなた、何言ってるの?」
「パパ、意味わかんない」
「あ、あははー、そ、そんな事よりほら、旅行しようよ!」
「うん!」
「ええ、」
二人はそう口を揃え頷くと、大人しく車に乗り込んだ。
「ほら、切株、さっさと運転して」
「ねぇ、パパってきこりさんなの?」
私は、とんだピエロだ。
冬休みはまだ、始まったばかりである。
ギャグを書いてみたくなった。