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鷲獅子対策に有用な道具は?

【答え:②】

 ①③④は対策をしないと鷲獅子に有利な地形。

 ②の森林地帯は鷲獅子から隠れ潜みやすい地形。



「うん。アンタらの戦力なら、森林地帯を選ぶのが無難だろうな」


 指導役メンターは貴方の答えに頷きながらそう言いつつ、なぜ森林地帯を選ぶべきかについて解説し始めました。


「飛行種の魔物は当たり前のように飛ぶ。それが奴らの強みになるんだが、森林地帯は木が……高木が邪魔になる。森の中に冒険者が隠れていると飛行種やつらは見つけづらくなるし、戦いづらくなる」


 地を這う人間側にとっては空の敵から身を隠してくれる森林地帯が、飛行種の魔物にとっては要害となる。要は天然の対飛行種用の陣地で戦う事が出来るのです。


「攻撃仕掛けて、直ぐに仕留められなさそうなら森の中に逃げ込めば追ってこれない。だから対飛行種相手に都市郊外でやりあう場合、森の力を借りるのが無難だ」


 もちろん、これは全ての飛行種に当てはめられる定石ではありません。


 飛行種でも小型になれば問題なく森林地帯に入ってくる事もあります。あるいは火炎を吐くものとなると森ごと焼き払われ、焼死する事も有り得ます。


 しかし、今回目指す通常の鷲獅子狩り相手なら森林地帯で戦うのは悪手ではありません。100%の安全が得られる――とまではいきませんが。


「状況と魔物によりけりだが、アンタらの戦力なら鷲獅子の生息地に近い森林地帯で戦うのが良い。逆に、他の地形は何が悪いと思う?」


 指導役の問いに貴方は直ぐさま正解を答えました。


「そう、視界が開け過ぎてるんだ。森林みたいに退避場所となる場所も少ない」


 見晴らしの良い草原は人も魔物も、お互いに遠目でも相手の事に気づく。


 砂漠地帯も同じこと。一度見つかれば狙い打たれます。


 山脈地帯はまだ岩陰に隠れられる見込みがあるものの、今度は足場が悪いので天空を自在に飛ぶ飛行種相手では立ち回りづらくなります。


 その事を改めて説明した指導役でしたが――。



「いやぁ、そいつの言う事は間違ってるぜ!」


「そうよそうよ~。私なら森林以外を選ぶわ」


 食堂に来ていた客2人が異議を唱えてきました。


 貴方にとっては他人の2人でしたが、指導役は顔見知りらしく「げっ、何でアンタらがいるんだ」と言いたげに顔をしかめました。


「視界良好、大いに結構。鷲獅子なんて来た端から矢で撃ち落とせばいいのよ!」


 弓使いらしき獅子系獣人の女性はフォークでステーキを串刺しにし、プラプラと揺らしつつそれで貴方を指し示しながら乱暴な意見をのたまいました。


「矢なんて使うまでもねぇ。鷲獅子なんざ石ころ投げればそれで殺せるさ」


 騎士らしき黒狼系獣人も「見つかろうが撃ち落とせばいい」という論に同調しつつ、骨つき肉を骨ごと噛み砕いていきました。豪快に笑いました。


 指導役は「いやいや」と手を振って反論しました。


「アンタらみたいな超人と一緒にすんな。こちとら工夫が必要な身なんだよー」


「でも、パパッと倒せるようになったら開けたとこの方が楽よ。効率的」


「魔物の方から探して貰った方が探す手間も省けるしなー」


「アンタらみたいに鷲獅子だろうが火焔飛竜だろうが狩り慣れてたらさ、あんまり後先考えなくてもいいだろうけど鷲獅子どころか飛行種狩りを本格的にはやるのが初めての初心者ヤツは慎重に立ち回るべきなんだよ」


「まあ退路確保は大事だわなー」


「不退転の覚悟で挑め!!」


「あ、真っ昼間から酔っ払ってるな。むちゃくちゃ言いやがる」


 3人はしばし議論を交わし、貴方はそれに耳を傾けました。


 慎重に立ち回ってコツコツ稼ぐか、大胆に立ち回って大きく稼ぐかどうかは自分次第。一口に魔物狩りと言っても人それぞれの戦型こたえがあるのです。


 指導役も後から茶々を入れてきた2人も、全てにおいて間違った事を言っているわけではない。それぞれに「理」がある。


 その事を考えつつ耳を傾けていた貴方に新たな問いが投げかけられました。



「そもそもお前さん、鷲獅子がどんな魔物かわかってるのか?」


 それを聞くためにも指導役の冒険者に相談しているところでした。


 ただ、貴方は鷲獅子狩りを目指すに当たって昨日のうちに「鷲獅子がどんな魔物か」については紙媒体の資料で調べていました。


 貴方が持つ鷲獅子の知識は以下の通りです。



【通常種の鷲獅子グリフォンについて】

■大きさ

 全高:3~5m

 全長:5~7m

 翼開長:9~10m

■警戒すべき能力

①岩すら砕くクチバシと握力500キロ超の鉤爪

②牛程度は軽々持ち運ぶ時速100キロの飛行能力

③他種族に対する強い縄張り意識

④矢避けの風

⑤ブレス



「大体あってる。よしよし、基本は抑えてきてくれてるな」


「後は実際に当たって砕けて身体で覚えていきなさい」


「身体で当たって砕けて死ぬ事もあるけどな!」


 指導役が真面目に指導しようとする中、酔っ払った獅子と狼の獣人2人が「ハハハハハ!」と笑いながら好き勝手に口を挟んできます。


 指導役はやや困った顔を見せたものの、「まあこの2人はどっちもかなりの腕利きだから」「ただし強すぎて参考にならん事もある」「あとどっちも露出狂だ」と添えて助言を加えていきました。


 獅子系獣人の女性は「矢避けの風」の危険性を説きました。



「魔物は口と鼻を沢山持ってる奴もいるわ。鷲獅子もその手の魔物の一種で、口が沢山あるの。食事用のものじゃなくてね」


 1種の呼吸器の事です。


 体表に気門と呼ばれるいくつも穴があり、そこから呼吸を行い――空気の吸引と排出を行なっています。獣でありながら、虫に似た方式で呼吸しています。


「殆ど絶えず呼吸を行なっていて、吐き出す空気を飛翔のための補助に使ってるの。鷲獅子だと特に翼にこの機能が備わってるわ」


「これは単に飛翔のためだけではなく、激しい呼吸で生じる気流の乱れを生じさせ、その乱れにより放った矢が外れやすくなるんだよ」


「これがいわゆる、矢避けの空気かぜね」


 貴方はその風により、対鷲獅子用に考えている投槍が外れやすくなるんじゃないかと懸念しましたが――その懸念には獣人の女性が首を横に振りました。


「そこらの鷲獅子ならそこまで気にしなくていいわ。いい加減な一投ならフワッと逸れちゃったりはするけど、通常種はそこまで豪風じゃないもの」


「鷲獅子の上位種になると、周辺に竜巻が発生するほどだが……通常種なら大丈夫。頭いいヤツはその風の流れも込みで矢なり槍を放ったりするんだが――」


「アンタは力技で通す派よねー」


「当たり前だ! 計算するとかメンドクセー」


 黒狼系獣人はそう言って笑いつつ、「ブレス」の危険性を説き始めました。



「面倒くせえと言えば、ブレスも面倒くせえぞ。当たると痛い」


人狼アンタならともかく、常人は痛いどころか死ぬよ」


「当たらなきゃいいんだよ! と、言いたいとこだが鷲獅子のブレスはメンドクセーことに散弾方式のモンだからー。回避すんのも面倒くせえぞ」


 鷲獅子は全身の呼吸器で集めた空気を口から一気に吐く――ブレスを吐く事が可能です。炎が飛んでくるわけではありませんが、命を奪われかねないものです。


「ありゃよくエアブレスと言われるが、正確に風じゃなくて――」


ストーン放射ブラストよね」


「そそっ。体内に取り込んだ空気を口から一気に吐いてるんだが、そのブレスと共に内蔵に取り込んでる石を吐き出してんだよ」


 鷲獅子は鳩の如く、石を食べます。


 鳩の場合は歯が無いため、胃袋に小石をためておいて歯の代わりに餌を砕く用途に食べているのですが――バッカス冒険者達が対峙する鷲獅子は相手を殺す攻撃目的で石を食べています。


「鷲獅子そのものがそこそこデカいから、取り込んでる石の中には俺らが投石に使うようなデカい石も混じってる。それが散弾みたいに飛んできたりするから気をつけろよ。備え無しに腕に当たったりしたらへし折れるぞ」


「個体差はあるが、上空から時速300キロぐらいで石の弾丸が飛んでくる。石にも限りがあるからそう、何発もは飛んでこないけどな」


 打ち尽くすまで堪えても、今度は強力な鉤爪で上空から襲いかかってきます。


 鎌の如き鉤爪で引っかかれただけでも十分致命傷となりますが、そこで掴まれたり上空に羽ばたき連れていかれるとさらに目も当てられない事になりかねません。


「鷲獅子の厄介なところは空からの攻撃手段も持っている事だ。ただ、空さえ飛ばれなければアンタらなら余裕で倒せるだろうよ」


 指導役はそう言いつつ「強い縄張り意識」について語り始めました。



「鷲獅子は縄張り意識が強くてな。群れの仲間はともかく、他のヤツには……人だろうが魔物だろうが強く意識する。同種の鷲獅子とはそれなりに群れるんだが」


 これは危険な要素――のようで、むしろ逆に「人間有利に利用できる要素の一つでもある」と指導役は言いました。


「鷲獅子の生息地は大抵、鷲獅子が一番偉い」


「偉いというか、強いだな」


「縄張り意識が強すぎて、鷲獅子の生息地では鷲獅子が生態系の頂点に君臨してる事が多いわ。生息地一帯で一番強い魔物が鷲獅子である事が多いってことね~?」


 自分より弱い魔物は追い散らし、自分より強い魔物がいるなら他所の地域へと逃げ、自分が生態系のトップにいれる生息地ばしょをキープするという事です。


 鷲獅子が入り込みにくい森林地帯であれば森の中で小型から中型の魔物がほそぼそと暮らしている事はありますが……。


「何というか、ビミョーに情けない魔物よね。獅子の身体を持ってるくせに、頭が鳥だから阿呆になっているのかもしれないわ」


「ズル賢いのは獅子ネコ譲りだと思うが」


「何ですって」


 獅子系獣人の女性はボソリと呟いた黒狼系獣人の男性に対し、軽く怒りながら彼の皿に手を伸ばし、しばし「ギャアギャア」と肉の取り合いをしました。


 指導役はそれらを無視しつつ、言葉を続けました。


「要は鷲獅子の生息地は単純シンプルで読みやすいってこった。鷲獅子以上に強い魔物が介入してくる事が少ないし、雑魚もさほどいない」


 ゆえに中型以上の飛行種魔物を狩っていくうえでの登竜門となりやすい魔物で、アンタ達なら狙い目だろう――指導役は語りました。


「この特性は討伐以外にも使えるぜ。鷲獅子の縄張りとなってる森林地帯は魔物の妨害が少ないから比較的安全に進みやすい。遠征の経路に選ぶと便利だ」


 他、その縄張りにある森の中を野営地にする冒険者達もいます。


 魔物は人間の敵ですが、魔物の生態や性質を逆手に取り、上手く利用する事で魔物対策にも使えるのです。



「さて、ここまでを踏まえて問題だ。


 鷲獅子対策にはどんな道具を持っておいた方がいいと思う?」




【問題:鷲獅子対策に有用な道具は?】

①人がすっぽり隠れられる丈夫な大楯

②よく鳴り響く大きな鈴

③大量の小麦粉

④その他


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