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冒険は続く


 貴方達は偶然見つけた金鷲獅子と、必然の戦いを行いました。


 十分に下準備を行ってなお、死の可能性もある戦いでした。


 それでも十分な実力を持つ貴方と仲間達は森の中を駆け回り、次々と鷲獅子の群れを地に落とし、むくろへと変えていきました。


 鷲獅子達も自分達に害を成す冒険者にんげんに反撃をしたものの、煙る煙幕と生い茂る木々に阻まれ、ろくに敵の姿を視認できずに終わりました。


 ですが、ゴルト鷲獅子グリフォンは木っ端の鷲獅子とは違いました。


 咆哮と共に全身から吹き荒れ始めた豪風は大蛇の如く地上を舐め、森の木々ですら長く晒されればへし折られるほどの威力。


 当然、対峙している人間など木の葉のように巻き上げます。


 貴方も見えざる手に絡め取られるよう、すくい上げられました。


 それでも貴方は投げ槍を投げ、巻き付いた縄をたぐり、空中を移動しました。


 最初は弄ばれるばかりで死にかけましたが、それでもやがて甲冑の戦士の助け無しでも嵐を乗りこなし、金鷲獅子へと向かっていきました。


 されど、それだけで組み伏せれる相手ではありません。


 金鷲獅子は貴方以上に豪風を乗りこなし、時に呼吸の力で貴方を自身の間合いの内まで吸い寄せ、大爪を断頭台の如く振り下ろしてきました。


 貴方はそれを受け、槍を壊されながらも予備の剣を抜き、再び大爪と向き合った時は身をひねり躱し、逆に金鷲獅子の前足を一本、斬り飛ばしていました。


 さらに、甲冑の戦士が上空から急降下パワーダイブを仕掛け、片翼と最後の前足を斬り落としましたが――それでも決着はつきませんでした。


 激昂した金鷲獅子は地面を抉り飛ばすほどの風を吹き、台風の目となり貴方達を弾き飛ばし――味方の鷲獅子すら構わず吹き飛ばし、たけりに猛りました。


 そんな中、貴方は前へ前へと進みました。


 吹き飛ばされても木や地面にに刃を突き立て、断崖を登っていくように金鷲獅子に肉薄していきました。後方で木の腹に立つ甲冑の戦士に見守られながら。


「無理して進みすぎるな――必殺の間合いさえ、維持出来ればいい」


 その助言の意図を読み取り、貴方は進み――やがて止まりました。


 金鷲獅子が風は永遠には吹き荒れ続きませんでした。


 吹き続けているうちにいきを吐き切りました。


 貴方は敵が息を吸うための吸引へと転じたタイミングで一気に進み、剣を無防備な敵首へ振りました。閃く刃は止まること無く横一線に振り抜かれました。


 それがトドメの一撃となりました。


 こうして、貴方は――貴方のクランは鷲獅子の群れに勝利しました。



「すげぇ……こんな、でっかいヤツ倒したんだ……」


「でっかーい」


 嵐が収まった後の解体現場に少年少女の姿がありました。


 貴方達が助けた少年少女の冒険者達です。


 彼らは指導役に付き添われ、解体を手伝いにきたのですが驚いた様子で金鷲獅子の死体を見つめ、感嘆の溜息と共に貴方への称賛をこぼしました。


 少年の仲間である少年少女も驚いた様子でいましたが、直ぐにそわそわと――それでいてキラキラした瞳で貴方と貴方の仲間たちを見つめてきました。


 その瞳は憧れの先輩を見るようなものでした。


「な、なあ……えっと……金鷲獅子の頭、抱えてみていい!?」


 そんな事を頼まれたので、貴方は快諾しました。


 快諾して少年少女達が「すげー」「でけー!」と言いながら抱え持っている光景を見ながら水分補給をしていましたが、直ぐに彼らが戻ってきたのに応対する事になりました。彼らはまだそわそわとしています。


「えっと、その……」


「そ、総長さんのクランって、募集とか、かけてないんですかっ!?」


「そ、それ。それだ! どうなんだ!? あ、いや……どうなんですか!?」


 貴方が少年少女達の質問に首を傾げていると、指導役が「いいのかなぁ」と少しだけ困った様子を見せつつも、質問の意図を説明してくれました。


「いや、どうも鷲獅子をホイホイ倒してるアンタらに憧れてるみたいでな。仲間にしてください、って事みたいなんだが……」


「そうだ! そうです! オッサン、それなりに気が利くな!」


「オレ様はオッサンじゃねえっつーの」


 少年少女達は遠慮しつつも、貴方に「仲間にしてほしい」と言いました。


 指導役もそんな少年少女達を見て、貴方に語りかけました。



「コイツら、まだどこのクランにも所属してないみたいなんだ。色々危なっかしいから、ちゃんとした先輩冒険者のいるクランに入った方がいいと思うんだよ」


「入れてくれよ~! 総長さ~ん!」


「もちろん、大将アンタ達が了承してくれるなら、の話だ。駄目ならオレがどこか別のクランに声をかけて引き取ってくれないか相談するから――」


「オッサンはちょっと黙っててくれ!」


「オッサンじゃない」


「オレ達は、オレ達が付いていきてえ! って総長ひとに、ついていきたいんだ! そういう人を見つけたんだ! だから、頼むよぅ」


 少年少女達は「ダメと言われたら諦める」と言いつつも、本当にそう言われると傷つきそうな不安げな顔をしつつ、貴方に頼み込んできました。


 頼み込み、自分達を売り込んでいきました。


「オレ! 森狼の2匹ぐらいはラクショーで倒せるぞ!? そのうち、総長さん達みたいに鷲獅子倒せるようになってみせるし! あとは……えっと、他には……あっ! 索敵魔術とか得意だ。100メートル先に茂みの中ぐらいならわかる」


「アタシも索敵魔術できるよ~! あと靴磨きしてたから、靴だけじゃなくて装備の汚れとか落とせるし……ざ、雑用、何でもします! 弓もちょっと使えます!」


「ぼ、ボクも弓をちょっとだけ……! あんまり遠くに当てるの苦手だけど……矢とか自作できます! 細工物も、少し作れます。狩った魔物の骨とか牙とか加工して、付加価値つけたりとか出来ると思いま……出来ます! やらせてください」


「私、戦うの苦手だけど……お料理得意です! お洗濯もします! まだまだチビだけど……50キロぐらいの荷物でお手玉できます! 戦うのダメダメだけど、私も冒険して、街の外でお星様とか見たいんです! 仲間にしてください~!」


「おらは…………えっと…………おらは……」


「お前はひい爺ちゃんが罠師で、罠作り手伝ってたから罠作り得意だろ! なあ、総長さん頼むよ、オレ達みんな、雑用いっぱいするし、連れてってくれよぅ」


 リーダー格の少年は必死に貴方を見上げてきました。


 今はまだ役に立てないけど、直ぐに成長して、総長あなたと肩を並べて戦えるぐらいになってみせる――何の保証もないものの、そうなってみせると言いました。


 少年少女達以外の視線も貴方に集まっています。


 指導役と甲冑の戦士は貴方のクランに所属していない雇われ冒険者であるものの、少年少女達の行先が気になるのか黙って見守っています。


 ここで、貴方が少年少女達かれらの加入を断ったとしても指導役達がどこか適当な冒険者クランを見つけ、連れていってくれるでしょう。


 今はまだ弱い少年少女達です。


 直ぐには役に立たず、足を引っ張る事もあるかもしれません。


 ですが、磨けば光る原石かもしれません。


 そうでないかもしれません。



「オレ達も仲間にしてくださいっ!」



 貴方は彼らを仲間にしてもいいですし、しなくても問題はありません。


 これは、答えの存在しない問題です。


 肯定イエス否定ノーの二択に限るものでもありません。


 そのうえで貴方なら――どんな選択みらいを選びますか。




 





【答えの無い問題:貴方を慕う少年少女達にどう答える?】



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