3 プライマリー・ナイト 1
明利はアリュナールに連れられて、自室コンパートメントに向かいながら【ルーミィ】艦内にある各設備配置についてのレクチャーを受けていた。
「ブリッジからエンジンブロックまで延びるこの艦内通路は、艦尾に向かって左右に分かれた2本のラインで構成されています。更にこの艦内通路は上下2層構造となっていて、この各通路に沿ってメディカル・ルームや、中央電脳室等が設置されてるわ。それから、中央最下層部には艦載機格納ペイロード・ベイがあります」
アリュナールの話によると、【ルーミィ】に搭載されている艦載機は、3艇の高機動対艦攻撃用突撃艇クリティカル・スマッシャー【NAT-AST1440テイントレット】及び、2機の艦隊直衛用最新鋭高速迎撃戦闘機【NAT-SEF-233スカルメール】が搭載されているらしい。
「小さい割には、結構ボリュームあるでしょ?フフフ」
確かに、ポケット・クルーザークラスの直衛防空戦力としては、それだけでもかなりの重装備だと感じる。
それでいて、本来犠牲になる筈のプライベートエリアは結構充実しており、リビング・デッキとブリッジを繋ぐ通路の結節ホールに連なって、各個の居住スペース(コンパートメント)が設けられているようだ。
上層部のブリッジに最も近い右舷側通路筆頭には、艦長室を兼ねたティアスのコンパートメントがあり、その隣に続けてアリュナール、新入りとして明利の順となっていた。
一方、反対側の通路には、左舷側筆頭からそれぞれ主席航宙師である伽罹那のコンパートメント、テミア、ラミアの順に連なっている。
やがて二人は、用意された彼専用コンパートメントの前へと辿り着く。
「一応ね。生体認証ロックアップシステムとなっていますけど、事実上艦内の一切の部屋はロックフリー仕様となってるの。まあ、艦内自体が自分のお家の中みたいなものね。ここがあなたのコンパートメント・ルームよ、さあどうぞ」
アリュナールにそう促され、明利は開いたスライドハッチの中へとゆっくりと進んだが、部屋へ入った途端、彼はそこに広がった目を見張るほどの異質な光景に、一瞬眩暈を覚えた。
「これは!!・・・すっごい壮観な仕様なんですね!皆さんの部屋もこんな風に・・・こんな仕様になっているんですか?」
居室の内部を呆然と見渡しながら、あっけに取られている明利に気付いたアリュナールも、彼に続けて中に入るやその豪華絢爛な光景に息を飲み、思わず声を上げていた。
「な、ななな何!何?何てこと、何なのこれ!?如何したの?もう、やだ!何よこれぇ」
アリュナールの顔が見る見る蒼褪め、やがて呆れ果てたような泣き顔になっていった。
「一体全体、誰の趣味なのよこれ?・・・ああっ、そうね、ルーミィ!貴女なのね?リトル!一体どうしちゃったのよぉ?」
明利のコンパートメントの内装は、有ろう事か豪奢な《ネオ・ゴシック》調に調律され、古城に住まう覇王の居室へと見事にデコレートされていたのである。
コンパートメントとしては、かなり広めとなっている部屋の中央部には、星銀色の金属光沢を発したシルクのジョーゼットが幾重にも連なる豪華な天蓋で飾られたアッパーキングサイズの古代式ベットが、これまた存在感を誇示するかのように「ドーン」と鎮座していた。
その古代式巨大ベッドの隣には、玉虫色に彩なして光輝く重厚な執務デスクが据えられ、その後には壁面の全てを覆って星龍を象った紋章らしい蒼星銀色のタペストリーが、煌びやかに掲げられている。
周囲には、丁寧にも重厚な古代地球式戦闘甲冑のレプリカや、見事な螺鈿細工の施されたチェストが配置され、重責を担うであろう城主が使う執務室を厳かに飾っていた。
加えて、古めかしい燭台が載せられた黒紫檀の円卓と、おまけにこれも又豪華な深青藍色のラウンジソファーまでが見事に配置されており、まるで古代博物館の展示ディスプレイの中にでも居るかのような錯覚に陥る。
「いや、これは凄いや、フォログラフでもないし、本物なのかい?」
唖然とする明利の前に在った物は、正しくファンタジー宛らの、古世代古城の覇王が使ったであろう居室を彷彿とさせるよう演出されたものであったのだ。
「リトル、居るんでしょ!?出てらっしゃい!ほんとにもう!こんな悪趣味誰が教えたのかしら?ティアが知ったら大目玉だわ」
あまりの精巧さに感心しつつも、アルは次第に込み上げてくる怒りを必死に抑えながら、一頻り周囲を見渡してリトルの姿を探す。
「冗談じゃないわよリトル、変なサービスするにも程があります。下品です!!」
すると、深青藍色の豪華なソファーの影からリトルがそろりと顔を覗かせ、アルに向かって不服そうに訴え始めた。
「下品とは・・・何だ。余は、確と・・・伽罹那に聞いたのだぞ・・・旧レテューサ皇国の殿方は、蛮勇なる古を好むものだと・・・これが一番いいのだと・・・何故だ?・・・せっかく余が創ったのに・・・アル、これって駄目なのか?」
「はぁぁ~、やっぱり!」
アリュナールはご立腹モードから一先ず退いて、思いきり溜息を洩らしながら眉間に手を当て呟く。
それでも一瞬「ハッ」として頭を振りながら気を取り直し、リトルに向かって滔々(とうとう)と説教を始めた。
「無論駄目です、ダメに決まってます!!直ぐにノーマルスタイルに戻しなさい。ほんッとにもう!伽罹那ったら!悪趣味にも程があります、下品だわ。リトル、大体貴女も直ぐに人の話を真に受けちゃって・・・良いですか、本来戦闘艦艇に於ける艦内施設艤装概念と言うのはですね・・・」
佇む明利を無視して、延々と続くアルからのお説教を聞きながら、そっと明利の方を覗い見たリトルの唇からは、ちらりと小さな花弁のような可愛い舌を覗かせていた。
明利はその悪びれた様子のない平然とした態度のリトルに、思わず片目を瞑って応えてしまう。
「・・・って、ちゃんと聞いてますかリトル!必ず元に戻しておいてくださいね!!」
漸くアルのお説教にも、終息点が見え始める。
「ラジャー・・・だぞ。近日中には・・・元に戻して置くとしよう。・・・アル、済まなかったな」
「では結構です。それから明利、今しがたの「ウィンク」見てましたわよ。リトルの心配より、当面ご自分の居場所を確保する心配でもなさったら宜しいのではありませんか?」
返す刀で、アルのご不満の矛先がこちらに向いて来た。
しかも、風向きが超絶悪くなっている様にも思える。
「えっと、すいませんでした。じゃあ、取り敢えず、僕はどうすればいいんでしょうか?」
済まなそうな明利の弁に、アルは軽く腕組みしながら頬に手の先を触れ、ほんの少し意地悪っぽく答えてしまう。
「そうですねぇ、如何にでもして頂いて結構です。ラウンジ・デッキでゴロ寝でも為さったら宜しくてよ?あっ、そう、そう、ペイロード・ブロックは如何かしら?あそこは減圧で少々冷えますからね、何なら簡易シェルターでも貸して差上げましょうか?」
「・・・明利。あそこは勧めんぞ・・・少しどころか・・・かなり冷える。・・・アル、止めておけ、こ奴、コールド・スリープするぞ。・・・余としても、それは大変遺憾に思うのだが」
リトルが首を振りながらアリュナールの傍へと駆け寄り、真顔で彼女に訴えて来た。
「フフフ、いいんじゃない?フリーズドライよりましでしょ。何~てね嘘、冗談よリトル。心配しちゃったの?ごめんなさいね」
アリュナールが「ぷっ」と噴き出し笑いをしながら、彼女の傍へと近付いて来たリトルの頭を優しくそっと撫でると、不思議そうにその笑顔を見つめていたリトルは漸く彼女の冗談に気付いたのか、ちょっと拗ねた様にほっぺを膨らませ「プイッ」と横を向く。
何とも微笑ましい二人の姿を観ていた明利にとっては、それはちょっと羨ましさを覚えさせる光景でもあった。
「そうだな、ペイロード・ブロックは流石に遠慮しますよ。もし、よろしければ、ラウンジ・デッキの片隅にでも野営させて頂けると幸いなのですが?」
どの道、野営は慣れているからなと、明利は覚悟を決めて答える。
「すまない明利。・・・余の責任の許・・・お前の世話をするぞ。・・・安心しているが良い」
殊更バツの悪そうな顔をしてそう言いながら、今度は明利に向かって「トトっ」と駆け寄って纏わりつくリトル。
やれやれ、ホントに素直なのか純真なのか、引っ掻き回される身にもなってもらいたいものだと明利は苦笑いを浮かべる。
「それにしても・・・」
明利は少し前から感じていた、この艦に対して抱いている違和感について、思い切ってアリュナールに尋ねてみることにした。
「フェナリィさん、いえ、アル、この艦のペイロード容積が気になっていたのですが、思ったより、兵装等の設備空間が少ないような・・・いや、明らかに構成不明といおうか、何に使用されているのか判らない構造部分の方が多いような気がしますね」
明利の発した問い掛けに、少しばかり怪訝そうな表情を浮かべて佇む彼女の姿を前に、明利は躊躇いを憶えながらもそのまま言葉を続けた。
「と言うより、ポケット・クルーザークラスや、単なる戦闘艦艇とは本質的に何かが違うのではないかと云う気がします。まるで人の存在が入る余地のない、セミ・オートシップに近い感じですね」
アリュナールとリトルの反応が少しばかり気にはなったが、明利の《ミッション》にとって何時かは知らねばならない事でもあった。
《セミ・オートシップ》とは聞こえはいいが、主にアディリア連合星系の支配領域で使用されている疑似生体転用サイボーグ航宙船の総称であり、人が介在しない分、艦内に於けるバイオスフィア構造を排除できるため、ある意味宇宙空間に適応して進化を遂げる人類の《次なる飛翔態》と呼称されいた。
しかし、その人類本来の採り得る姿からはあまりにもかけ離れ過ぎた《次なる飛翔態》の存在は、他の人類文明世界にとって同時にある種の嫌悪感を持って迎えられる事も多く、ソル系連邦及び他の人類銀河文明世界にとっては受け入れ難い存在でもあった。
その露骨とも云える明利の問い掛けに対して、彼を凝視したアリュナールの口から発せられた言葉には、当然の如く酷く乾いたものが感じ取れる。
「・・・明利。この艦は、あなたがMIDの情報で認識していた事実とは違うの。全く異質な存在よ」
アリュナールは静かに視線をリトルへと移し、リトルもそれに応えるかの様に小さくコクリと頷いた。
「やはり、知っておくべきよね。そう・・・MIDに収集されていた記録の中の艦、貴方の記憶巣群の知っている艦は、確かに実在していたわ」
そしてアリュナールは明利に向き直ると、一頻り真剣な眼差しで説明を続けた。
「あなたの記憶巣群の中に記録されている名前の彼女、【STR-SS-002】は、嘗てリジュア・ヴォード開発公社九紫重兵器工廠第Ⅲ新領域局のTe-01ラボで開発建造されました。その後、ある極秘実験中に正体不明のI・Aによる破壊工作を受けてコントロール不能に陥った《彼女》は、自己崩壊を続けながら暴走を始めたの。そして、それを制止しようとした2つのスクォードロン(ソル系宙軍の艦隊構成で中規模艦隊に類する)を巻き込み、これを壊滅させてしまったわ」
アリュナールの漆黒に輝く瞳には、確と明利を見つめるリトルの顔が映り込んでいる。
「多くの犠牲を伴いながらもやがてその命が燃え尽きた《彼女》は、凍結処置されたまま廃艦処分とされたの。そう、この艦【ルーミィ】の構造解析マトリクス・データを基材として生み出された【STR-SS-002】は、産声を上げる間もなく密かに闇へと葬られてしまった・・・」
その瞬間、何故か燭台の小さな炎が微かに揺らめき、そして静かに彼女の話を引き継ぐかのようにリトルがそっと呟いた。
「人の手になる・・・生まれて直ぐに葬られた・・・余の不幸な・・・模造品だ」
明利の脳裏には、次第に明かされて行く【ルーミィ】の秘密と共に、新たな疑問と不安の影が過る。
「・・・と言う事は、この艦の艦籍自体が偽装されていた・・・いや、そもそも既に建造していたものを、何故再び構造解析する必要があったんだ?」
欠落したパズルのピースを探して混濁する彼の不安の影に対して、答えのピースを当て嵌めるかのようにアリュナールが言葉を返す。
「再度の解析じゃないわ。そう、この艦【ルーミィ】は元々ソル系連邦、いいえ、人類銀河世界の凡そ人の手に拠って開発建造されたものじゃないのです。そう、気の遠くなるような太古の昔から、我々人類文明が発生する遥以前から、既に存在していたのよ」
明利の視線の片隅では、リトルが豪華なアッパーサイズのキングベッドへ飛び乗ると、そのままピョンピョンと飛び跳ね始める。
「そう大した・・・存在じゃないがな・・・。それに・・・余は、随分と永い間・・・眠っていたらしいのだ。・・・当然、覚醒する以前の・・・記憶も定かで無いぞ」
リトルは、ベッドを幾重にも囲んだシルク・ジョーゼットの感触を確かめるように払い退け、堂々と腰に手を当てながら明利に向かって自慢げに話を続けた。
その尊大に話す彼女の姿を見据えながら、明利は堰を切ったように矢継ぎ早に質問を発する。
「じゃあ、君は幻の【トップ・コア星系】で【喪われた連合調査団】が発見したという、あの【凍結遺産】の一つだとでも言うのかい?崩壊文明散逸遺跡群のどのポジションと関係があるというんだ?一体どの階層文明に属していた?何故眠っていた?どうしてそれが此処にある?クラファード局長は、叔父さんは、この事実を・・・父さんはこれを知っているのか?」
明利にとってその情報はあまりにも衝撃的な展開であり、予想だにしなかったこの現実を前にして彼の中には次々と新たな疑問が湧き上がり、それを押し留めることができなくなっていた。
とんでもない処に、そして途轍もないものが隠蔽されていたのだ。
そうだろう、それも重大な国家機密が何者かの巧妙な情報操作によって、中央政庁の誰一人としてこの存在を知らされる事の無いまま、その懐深くにちゃっかりと【凍結遺産】の一つが隠匿されていたのである。
それは嘗て七大世界が形成される以前、銀河中心方面の深宇宙を探索した人類銀河文明連合調査団の手により記録されていたもので、彼らによって発掘、発見された数々の崩壊した銀河系超古代先史文明に属するオーバー・テクノロジーのカタログ総覧【カンタフルAⅡ213-0707発掘遺産目録】に収められていたものであったはずだ。
【カンタフルAⅡ213-0707発掘遺産目録】とは、別名「喪われた禁忌発掘品カタログ】とも呼ばれ、その調査結果と発掘遺産の分配・承継権を巡って勃発した【第三次ウェルム戦役】の遠因となったものであり、その激烈な星間文明間における抗争の中に喪われしまった幻の極秘レポートであった。
その【喪われた禁忌発掘品カタログ】に記述されていたであろう【凍結遺産】とは、主に超古代第Ⅳ銀河文明と第Ⅵ銀河文明間で起こった消滅戦争の残滓と云われ、現代人類銀河文明が今もなお血眼で探査し続けている人類外先史文明種族間抗争の残した遺物、及び超越科学兵器群の存在を意味している。
そしてそれらの【凍結遺産】は、正当なる銀河文明承継者を自称し人類の盟主たらん事を欲しているソル系連邦政府にとって、絶対に確保しなければならない重大な国家機密でもあり、恐らくこのアリュナールの話は、【ルーミィ】自体が何れかの人類外先史文明が残した超古代超兵器の一つであることを示唆しているのだろう。
その途方もない話を聞かされた明利の背筋には、冷たいものが奔った。
「そう・・・貴男も色々と複雑なモノを抱えている様子ね、明利。残念だけど、今は、貴男の問いに何一つ答えられそうもないわ、ごめんなさい」
アルは彼の想いを拒絶するかのように意味深な答えを返しながらも、彼女の瞳は静かな優しさを湛えて諭す様に明利へと向けられていた。
そして優しく包み込むかの如くそっと歩を進め、明利とリトルの傍へと歩み寄って行く。
「ただ一つ言える事はね、リトルは久遠なる時を越えて私達に出会いを齎したの。リトルを、この【ルーミィ】を発掘した、今は亡き連合調査団の一員から後にその身を託された私達は、彼女の同意と協力を得て単にその力を利用させてもらっているだけなの」
リトルは相変わらずキョトンとした表情を変えず、妖しいまでの「金銀妖瞳」が、じっとアリュナールを捉え続けていた。
「余は利用させている・・・訳ではない。・・・余は自分を見つける・・・旅をしておるのだ」
それまで飛び跳ねていたアッパーキングサイズのベッドから、再び深青藍色の豪華なソファにふわりと飛び移り、ちょこんと身を沈めたリトルは、無表情さを保ったままアルの言葉に続けて返答する。
「さて、自分は何者なのか。・・・何の為に目覚めたのか、そして・・・彼女達は・・・面白い旅へ、余を・・・誘ってくれるからな・・・存外、余も楽しんでおるのだぞ・・・気にするでないわ」
だがそれは、何処となく意図されたが故の無表情さにも思えた。
「それより明利、お前は・・・何かを探しているように見えるがのぅ。・・・迷子にでも・・・なったかの様に・・・怯えてな」
明利がふと気付くと、リトルの紅金と青星銀の冷徹な眼差しが、彼の心の奥底を探るように向けられていた。
(くそっ、しまった、少し喋り過ぎたな)
明利は、リトルの発した疑念を含んだ揶揄の言葉を受け、心の中で舌打ちをする。
こちらの思惑までは感付かれてはいない様だが、思わず取り乱してしまった姿を見せた為か、彼女らに多少の違和感を抱かせてしまった事は、大凡察しが付く。
だが、今は未だ自分の隠された意図を彼女達に悟られる訳には行かない。
明利にとって喫緊に事態の修正を行わねばならない程に、【ルーミィ】の存在はあまりにも衝撃的な情報で在り過ぎたのである。
「じゃあ、リトルは?この【ルーミィ】ってのは一体何者なんですか?」
明利は軽く惚けた具合に、ピントを暈した質問を態と繰り出し、軽く動揺させた素振りの彼の声が、静まり返った豪奢なコンパートメントに響き渡った。
「消滅した人類銀河文明連合調査団員から託された、【喪われた禁忌発掘品カタログ】の一部には小さくこう記述されていたらしいわ」
ソファにチョコンと沈み込んでいるリトルの傍へと、静かに腰かけたアリュナールは、そっと彼女の頭を抱き寄せて一言呟く。
「銀河星雲紀銀杏座青93から青の魚座黄17に【星龍の顕現】あり。見出されしそれは星龍神族の末裔か。惨と猛悪にして血を好み、全ての文明に破壊と災悪を齎す。・・・ですって」
星銀色に煌めくリトルの髪を、アリュナールの指先がそっと優しく撫で付けると、彼女の細く白い指の間をサラサラと静かな音を立てて零れて行く。
「【ルーミィ】はね、その星龍神族の末裔らしいの。正確には遺伝子サイバネティクス操作を加えられた、改造顕現體と言えるのかもしれないわね」