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5 目覚めてしまった

「小説の参考資料を検分している内に目覚めてしまった……」


 日曜の朝だというのに俺の目覚めは悪かった。何故なら昨日……俺が、俺は……お、男の娘の画像で……!


「ううー! 違う! 俺はホモじゃない! 昨日のは一夜の過ちだ! そう……ノクターンで書くには必要なことだったんだ!」


 遅れたが俺は成宮底作。「なろう」で人気がなさ過ぎてノクターンへ行こうとしているブサメン大学生だ……ホモではない。


「ええい! 長い人生こんなこともある! お陰でこいつらの生態が分かった! ナニ以外は完全に女として描かれているんだ!」


 そう、男の娘は架空の存在なのであり、だから喉仏とか肩幅がなくても問題はない。すね毛なんてもってのほかだ。

 しかるにこのジャンルは「両性具有」に興奮するのと近いのかも知れない。「登場する女キャラの性的興奮が、視覚的に男でも理解できるための象徴」としてナニがくっついているのだ。……とりあえずこの仮説を意識して、男の娘キャラを考えてみることにしよう。

 メインヒロイン(?)は研究者の男の娘で……1話前半で状況説明、後半にくんずほぐれつする役、と。問題はニャンニャンするシーンだ。こいつは男だが……そこで読み手をどう興奮させるのか、シンプルにナニの描写以外殆ど女として書いていけばいける……よな?


 エロを収支報告書を見るように分析するのは、ナンセンスなのかも知れないが……こうでもしないと俺は「二次元の男に劣情を催したブサメン」という業の深い肩書きを背負ってしまう……。そうではない。昨日の行為は、さっきの考察をするために必要だったエロワールドの実況見分みたいなものだ! うおお、だから変なことじゃない! 俺はホモじゃない! ブサメンなだけだー!


 俺が布団の中で頭を抱えてうんうん唸っていると、スマフォの振動が聞こえた。目覚ましはつけていなかったはずだが……?


「んー? ……あ! 昨日翔太とラ○ンできるようにしたんだっけ」


 手にとって内容を確認する。

 

 ――おはよう!今日ヒマならどっか遊びに行かない?――


 ……こ、これは……さ、誘ってやがる! い、いや普通のことだ。俺はどうかしている。男同士で遊ぶなんて普通のことだ。よく考えたら他にもメンバーがいるかも知れないな。さっさと返信しよう。


 ――いいよ。どこいく? 面子は?――


 ――僕だけ。他に誘ったけど急には駄目だって。成宮くんどうせヒマでしょ――


 むむ、確かにヒマなんだが……ふ、二人きりか。


 ――見たい映画があるんだよ。一人じゃ寂しいし付き合ってよ――


「おお!? 翔太くんが誘ってやがる!?」


 い、いや落ち着け……深読みしすぎだ。下衆の勘繰りはエロ魔人の嗜みだし仕方ないことだが。ま、映画くらいなら……まだ今月余裕あるしいいか。えー、飯合わせて大体3000円以内には……収まるよな。


 ――いいよ。なに見る?――


 ――『サダオViSit to theカヤオ』知ってる? ホラーなんだけど――


 ――おー知ってる。俺も見たかった奴だ。じゃあ集合は……――


 こうして休日翔太と過ごすことになったので、なんとなく入念に支度して町へ繰り出した。


……

 

 支度に時間をかけすぎたのか約束の時間に10分遅れてしまった。気まずいので俺は噴水の前でスマフォをいじっている翔太に、さわやかな笑顔を向けて謝罪しながら挨拶した。


「てっへー☆ ゴメン遅れた!」


「遅いよー、待ってる間にバケモン1匹捕まえれたよ!」


「お!アレもう配信されて――」


 俺の会話が途中で止まってしまったのには訳がある。なにか、いつもの翔太と違うような……。目がパッチリとして……か、可愛い……? こんな顔だったっけ……お、俺は昨日の行為で見る世界が変わってしまったのか!? 見えざる一線はすでに過ぎていたとでも言うのか!? 誰だそんなの言うのは!


「お、お前なにか雰囲気変わった?」


 心臓の動悸が早鐘を打っている。こ、こわい! 何か知らんが怖くなってきた!


「へ……? ……あ! 気づいてくれた? せっかくのデートなんだからメイクしたんだよ」 


「なぁんだ、びっくりした」


「……」


……

…………


 いやいや、そうじゃない。翔太くんは夏の日差しに狂わされた哀れな異邦人なのか? マズイ、俺も混乱している。


 ……どうしよう。俺はどうしよう。

 い、今こそ冷静に考えよう。

 

 翔太は……ビジュアル系だったのか? デートを成功させなければ俺は蝋人形にされてしまうのか? っていうかデートってなんだよ。俺三千円以上は使えない……いや、どっちも男だぞ、なぜ俺が奢るのだ。そりゃ俺はブサメンだ、対する翔太は……女みたいに綺麗な肌で、おめめもパチクリさせて、シトっとした唇で、俺の焦げた明太子みたいなのとは全然――


「もーっ! はやく突っ込んでよ!」


「は!?」


 『青森のみかん』をしろと言っているのか!?この街中で!


「メイクなんてするわけないだろー! 女じゃあるまいし……」


「え? でもお前……」


「ん? ど、どうしたの? 僕本当に化粧してないよ? いつも通りだよね?」


 と言って鞄から手鏡を出して自らの顔を確認する翔太。「女じゃあるまいし」とか言っておきながらコイツは……。


「なんだ普通じゃん。食べ残しでもついてるかと思ったよ」


「は、ははは……引っかかったな……」


「フリが長いよー。じゃ、チケット取りに行こう」


「お、おう……」


 ――男の娘だからホモじゃない――


 こ、これが今日の天啓だ……だ、だからこのテーマでエロ小説書いても大丈夫だ。俺もきっと大丈夫だ……。大丈夫だよな? 

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