3 ぺ○○が好きならネタにするな
俺はブサメン大学生の成宮低作。
ノクターンノベルズのネタを探して、大学の食堂で河合翔太と差し向かいで飯を食べている。
夏の日差しもこの中には届かず、クーラーが効いて涼しく、心地よい。
「これが『夏のおもひで』?思っていたのと違って、普通だね」
テーブルの上には一見普通の和風定食とカレーライスが並べられている。俺が注文したものと、翔太が頼んだものだ。
「そうなんだよな……見た目は普通なんだ、コレは」
俺は箸をブスッと焼き魚にさして、身を雑多に分けて欠片を口に運ぶ。
「味は?」
カレーを二口ほどもぐもぐ食べた翔太は、口周りを紙ナプキンで拭いてこう尋ねた。俺は冷えた水で喉を潤してからこう答える。
「『夏のおもひで』の味……店長は上手いこと言うよ」
「どんな味なんだよー!」
ぷんぷんと頭から煙でも履きそうに気炎を吐く翔太。
「だいたい他は普通の名前のメニューなのになんで一つだけ、そんなけったいな名前なんだよ、イロモノの臭いがプンプンするじゃないか」
「けったい、て……気になるならお前も頼めばよかったろうに」
お吸い物の貝の身を箸でほじくりかえしながら、俺はどうして?という顔をわざとらしく翔太に向けた。
「僕はご飯に関して冒険はしたくない。成宮くんペ○○の変な味出るたびに頼んで、失敗してるじゃないか。あんな目はごめんだからね」
「失敗じゃない、後でスタッフが全て美味しく頂いた。ペ○○の味は通好みなんだよ!」
ここで俺はフと閃いた。
……は!今までの会話を上手いこと伏字にすれば、ノクターンで笑いを入れられるのでは?
そうだ、あそこは殺伐とした雰囲気で女の子やエルフが酷い目にあっているからな……なかにはイチャラブもあり俺はどちらも大好きだが……ぺ○○か……メモっとくか。
「ん?成宮くんなにメモってるの?」
俺がテーブルの上のスマートフォンのメモ機能を呼び出すと、翔太が聞いてきた。
「小説のネタ、ぺ○○って書くと何か卑猥だろ」
「『なろう』まだ続けてるんだね。でもそのネタは危険だよ、ぺ○○に対する愛がないよ」
「……も、もう一回」
ぺ○○に対する愛、か。なにか閃きそうな……。
「ぺ○○が好きならネタにするなって事」
「ふ……深い!!」
確かに……生殖器に対する敬意を忘れてはいけない。そうだ、生殖行為は人類には必要な行いじゃないか!
ナニは生命の螺旋を紡ぐ為に、長く続く歴史を乗り越えてきた武器なんだ!……だから、だから笑うことはいけないんだ!
ぺ○○を!エッチなことを!!
「お、俺間違ってた!ありがとう翔太きゅん!」
俺は翔太きゅんの手をバッと握りそう叫んだ。
こ、今回の天啓は……これだ!!
――エッチなことなくして人類は増えなかった!!――
コレが俺のノクターンで書くテーマだ!なんて深いんだ!いける、絶対いけるぞ!!!汁男優役はこう発言してヒロインを――
「あ、あの成宮くん……は、放して……僕男だよ?」
「あ……」
翔太くんは頬を赤らめて、モジモジしている。手をふり払おうとはしないのは、俺を気遣ってのことだろう。
そうだった……男同士じゃ増えないぞ……
このテーマはボツにした。