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1 そういえば『R18のなろう』があったな

 俺の名前は成宮底作なるみやていさく

 なろう底辺作家……を趣味でやっているブサメン大学生だ。

 

 なぜそんな趣味に嵌ったか。そのために少し近況を説明させてほしい。

 

 俺は大学に近いアパートで一人暮らしをしている。

 入学と共にここに移ってきて約2ヶ月しか経っていないピカピカの1回生という奴だ。

 今までずっと実家暮らしだった俺は、一人の気楽な生活に浮かれていたら、あっという間に金欠になってしまった。

 食費を切り詰めれば、残りの月の生活はなんとかなりそうだが、遊ぶ金の余裕は全くない。

 俺の大好きな仲間内との麻雀なんて以ての外で、ウチのメンツのルールには、「金の賭けない麻雀は麻雀に非ず」、「文無しで負ければガタイのいい吉岡先輩が立て替えて、その後お持ち帰りされる」という闇の不文律があり、それが怖くてとても遊ぶ気にはならなかった。

 そして実際に文無しで負けた斉藤は翌日講義を休んだ。

 暫くして彼に事情を聞きにいくと、亡者のごとき声色で「忘れてくれ」との恐ろしい返事を返してメンバーをゾッとさせた。二度と忘れられそうになかった。

 

 そんなわけで俺は金のかからない娯楽に餓えていたので、パソコンで「趣味 お金かからないの」で検索をかけた。

 読書といった普遍的なものから、なにやら怪しいネットビジネスまで色々と目を引いたが、一番惹かれたのが「小説を書いてサイトに投稿する」というものだった。

 

 その理由はシンプル。

 俺は読書は好きだが書くのは大の苦手で、メチャクチャ時間をかけないと人並みに読めるものが書けない。にも関わらず文脈が支離滅裂で読みにくい、等の批判は教授に腐るほど聞かされた。

 これを趣味にすれば改善できると考えたのだ。

 

 自慢じゃないが俺の遅筆は大したもんで、大学の課題レポート作成も期限ギリギリで完成するか、もしくは教授に頭をヘーコラ下げて「やったけど家に忘れた」と言って後日提出……なんて方法でしか切り抜けたことがない。

 そんな俺が曲がりなりにも「小説」を書こうとすれば、ものすごく時間が掛かるに違いない。

 それを続ければ、俺の遅筆も改善され、理論的な記述も可能になり、時間も潰せるのでは!という趣味と実益を兼ね備えた思い付きだと思った。


 ……その時は。

 


 2週間が経った今、俺は小説投稿サイトに掲示されている自分の書いた文章の閲覧数に呆然としていた。


「一体何が駄目なんだ!……評価がないってことは俺の文章、話がつまらない、ってのはわかる……冷静に見返すと自分でもそう思うが……しかしどこをどう改善すればいいんだ!……感想も、評価もなければ何もわからない……」 


 さっきも書いたが、俺は「なろう底辺作家」で、投稿した文章は計3万文字程になる。そのどれにも評価や、ブックマークはついていなかった。

 文句の一つも言いたくなるってモンだ……自分に。

 

 画面にはこう映されている。


 評価……0 

 感想……0

 ブックマーク……0

 PV……500

 ユニーク……100

 

 サイトに投稿した文章は、「アクセス解析」というサービスを利用してどの程度読まれているか作者にわかるようになっている。


「PV」が閲覧数で「ユニーク」が個人のアクセス……ということは見知らぬ100人が俺の書いた文章に何の魅力も感じなかった、ということになってしまう。そんなぁ……。

 そもそもこんな勝手な思いつきに、他の人を巻き込もうとすること自体間違いだったのかもしれない。と今更ながら思う。

 

「甘い考えだった……こんなに何とも言えない気持ちになるとは……」


 しかしこの結果は当然だと頭の一方では考える。

 なにせ俺個人の趣味の極みみたいなお話を、駄文で纏めているのだ。

 二次創作モノならある程度優しいのでは、という完全に舐めた考えで安易にやりたいこと、書きたいことを吐き出した奇妙な文章群だと思う。

 

「所詮は俺の―――だったってことか……」


 俺はそのサイトを閉じてこう呟くと、ますます空しい気持ちに沈んでいった。

 まぁ時間は潰せたし、よかったか、と自分を慰め―――について思いを馳せた。


 ―――か……そういえば最近ご無沙汰だったな。


 その時ふと、俺の頭に天啓が舞い降りた。


「そういえば『R18のなろう』があったな……」


 その名は「ノクターンノベルズ」悩める男を慰む淫靡な小説の楽園……ようはエロ小説投稿サイトで、当然18歳以下は厳禁だ。お兄さんとの約束だぞ。

 俺は知的好奇心半分、ムラムラ半分で一度このサイトを覗いたことがある。

 その時の衝撃は、大学の構内に灰皿が置いてあるのを発見したような「え、良いのコレ?」と思わず心中で叫んでしまうほどのものだった。

 

 

 ――とってもエッチだった――



 これ以上は書けないが、これが全てでもある。

 中には文学的エロに挑戦した方もいらっしゃるのかも知れないが、俺が探していたのは過激で淫欲を満たせそうなモノだけだったので、その時は目に付かなかった。

 

 いやぁ、エッチだった。

 とある作者様には「息子が大変お世話になりました」との文面と共に、暑中見舞いのビールでも送ってあげたい程だ。

 ここで書いていいラインに抵触するかもしれないが、「お世話」になったのだ。男ならこの意味がわかるだろう。

 文章だけでこんなに興奮できるとは、俺自身考えていなかった。

 そして他の作者様の作品も次々と見回って言ったのだが、まさに玉石混合の様相を呈していて、中にはエッチな行為がすぐ始まってすぐ終わるものもあった。

 しかしどれもコレもポイント、ブックマーク数が妙に多いのが気にかかったが、その時は「そんなものか」ぐらいにしか考えていなかった。

 

 今、俺はその時のことを鮮明に思い返していた。


「あそこで書いたなら……誰かには見てくれるかも知れない」


 俺は決意した。

 せっかく書くからには反応が欲しい、あわよくば感想で自分の文章の分かり難いところや、面白かった部分があれば指摘して欲しい……だから!


「そうだ!ノクターンへいこう!俺はそこで書く!エッチな文章を書いて、ムラムラしている誰かに評価してもらおう!」



 俺は後学の為早速サイトを開き、作者様が書いた作品群をチェックしていき夜は更けていった。

 今夜もお世話になりそうだった。

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